Saturday, November 8, 2014

日本は原子炉再開への大きなハードルを取り除く【A6面(国際面)】

九州電力・川内原発の再稼働をめぐり、鹿児島県議会と鹿児島県の伊藤祐一郎知事が、同意を決めたニュースが、国際面に掲載された。

この記事は次の様な書出しで始まる。


この記事は次の様な書出しで始まる。
「金曜日に日本で原子力発電所を再稼動させるための最後のハードルが取り外された。日本の南部の県で、原発再稼動への許可が与えられたのだ。これは、安倍首相の勝利だ。」
「鹿児島県のこの決断は、九州電力が2つの原子炉の運転再開のための道を開いた。現在、日本の48の原子炉全てが稼動停止になっているが、これらの2つの原子炉は2103年9月に48の原子炉の最後として停止した。安倍内閣は原発が経済成長のために不可欠だと主張している。日本は天然ガスや石炭を輸入に頼っているからだ。」

暫く要約する。

世論は原発再稼動に2対1の割合で反対しているため、安倍首相は、この件について表向きは何の反応も示していない。日本は2011年3月の福島第一原発のメルトダウン以来、安全基準を強化したが、薩摩川内原発は10月にこうした基準をクリアした。そして、金曜日に県議会がお墨付きを与えた。県議会での発言は、反対派の怒号で聞き取れなかった。最近実施された世論調査では、60%の国民が再稼動に反対している。

この記事は次の様なコメントで締めくくられている。
「他の電力会社は九州電力に従って、来年に原子炉を再稼動させたいと考えている。しかしながら、多くの日本の原子炉は、大変に古いか、地震に襲われる可能性の高い場所に建設されている。日本がいつ原子力発電から多くの電力を得るのかは不明確だ。」
「原子力発電所の停止は発電所のある市の経済に打撃を与え、輸入原料の価格高騰により日本の電力価格は20%上昇した。」

WSJは、原発問題賛成派だと思う。同紙のこの問題への関心は高い。

北京と東京は関係修復のための一歩を踏み出す【A6面(国際面)】


11月7日に、日中両国が「日中関係の改善に向けた話し合いについて」と題する合意文書を発表したことを、8日の国際面で速報した。


この記事は次の様な書き出しで始まる。
「中国と日本は領土に関する争いから離れ、来週首脳同士が会うことになった。これは未解決の問題についての激しい競合を抑制しようという努力の結果だ。」
「金曜日に北京で中国と日本の役人の間で取り交わされた合意は、東シナ海にある諸島についての緊張について関心を払う必要性について認めた。」

暫く要約する。
この合意で両国は、相互信頼を構築し、時間をかけて外交及び軍事面での連携を回復させていくことをコミットしている。この合意は、安倍首相がAPEC首脳会談のために中国を訪問する前に実現した。この訪問中に、安倍首相は習主席と会うことが期待されている。
米国はこの合意を歓迎している。日中間の緊張緩和は、米国だけでなく、近隣諸国にも安心感を与える。過去2年間、中国が尖閣諸島周辺に飛行機や船を近づける度に、日本の船との危険な接近が見られた。合意によれば、両国は海洋での事故を防止するためのメカニズムを構築する。
安倍氏と習氏が会うか否かはまだ最終決定していない。この数十年日中間の関係は難しかったが、この2年間、これまで以上に強いリーダーが日中間に出現し、関係がより一層難しくなっていた。

この記事は次の様なコメントで締めくくられている。
「金曜日の合意は、中国の楊潔篪(ヤンチエチー)国務委員(副首相級)と日本の谷内正太郎国家安全局長との間で交渉が行われたが、こうした大きな問題については触れなかった。しかし両国が前に向かって一歩を踏み出すことを可能にした。そして、両国の国民を困惑させない様に、合意には解釈の余地を残したと、専門家を分析している。」
「『原則について合意したことは、中日関係を改善させるための窓を開いた。』と中国社会科学アカデミーの日本専門家であるYang Bojiang氏は言う。『しかしながら、中国と日本の間の不協和音は複雑で、長い間存在しており、そう簡単に解決出来るものではない。』」

日中関係に関するWSJの関心は高い。ところで、この合意の交渉にあたった谷内局長は、私の勤務する会社の取締役であった。

Friday, November 7, 2014

東京は珊瑚密猟者に警告する。【A14面(国際面)】

中国漁船による赤珊瑚密漁事件が国際面で報道された。




この記事は、次の様な書き出しで始まる。
「日本のトップの役人が、珊瑚の密猟者に日本の領海に入らないように警告した。6人の中国人が、ここ数週間貴重な赤珊瑚を非合法的に捕獲した疑いで逮捕された後のことだ。」
「岸田外務大臣は報道陣に対し、火曜日に、中国の大きな船団が、日本の海域もしくはその近辺で9月中旬以降発見されたと述べた。岸田氏は北京に適切で有効的な対策を要求した。中国側はことの重大性について認識していると表明した。」

暫く要約する。

中国では赤珊瑚は一グラム当たり18万円と非常に高価で取引されている。この騒動は、日中首脳の会談の可能性が取りざたされている中で起こった。

この記事は、次の様なコメントで締めくくられている。
「横浜沿岸警備事務所によれば、小笠原諸島周辺で、10月に5人の中国人船長が漁業法違反の疑いで逮捕された。」
「他の中国人船員も10月17日に日本の最南端に位置する石垣島の沖で逮捕された。一人を除く全員が、罰金を支払ってもしくは支払うと約束して、釈放された。」

この事件は、中国の反政府分子が、APECのこの時期に、中国体制派のイメージダウンのためにやっているとの噂もある。そうだとすれば、WSJにも取り上げてもらって、反体制派はハッピーだろう。

安倍の側近は日本の増税に抵抗する。【A14面(国際面)】

4日に開始された消費税点検会合の様子が国際面で報道された。




この記事は次の様な書き出しで始まる。
「安倍首相に近いブレインが、日本が消費税税率を再度上げることについて、反対の意思を明らかにした。そうした増税が安倍首相の経済再生計画を、助けることになるのか、それとも殺してしまうことになるのか、という問題について、政府内部で大きな意見の対立があることが明確になった。」
「2回目の消費税増税について決断をする時期が近づく中、安倍首相は経済学者、ビジネス界や労働界の代表を招いて、増税について議論をするパネル設けた。」

暫く要約する。

国債の増加と高齢化社会に備えるため、2012年に日本は、2段階で消費税の税率を5%から10%に上昇させることを決めた。第一弾として、4月に5%から8%へ税率を上げたが、それが経済にもたらす悪影響が予測以上だったので、第二弾の実施については様々な議論が出てきている。こうした状況に対処するため。金曜日に、日本銀行が更なる金融緩和策を発表して、関係者を驚かせた。
安倍首相が設けたパネルのメンバーは8人いるが、火曜日に議論した結果、5人が更なる消費税率引き上げに賛成したが、3人は反対を表明した。反対派の中には、安倍首相の有力なブレインである浜田氏も含まれている。安倍首相は今後2週間で、同様のパネルを4回開催し、延べ45人から意見を聞く。

この記事は次の様なコメントで締めくくられている。
「日本総研の経済学者である湯元健治氏は、消費税率を上げるという計画に好意的な見方をしてきた。しかし、同氏は、今後実施される2回のパネル討議で表明される意見が、安倍首相の決断により大きい影響を与えると述べた。」
「最後2回のパネル討議は、7月~9月期のGDPの伸びが発表された後に行われる。安倍首相は、最終決断時には、7月~9月期のGDPの伸びを考慮すると述べている。」

消費税点検会合は4日から18日まで計5回実施されるが、その内2回が7~9月期のGDP発表の後に実施される。この2回の会合が、その後の様々な経済、政治動向に大きな影響を与える。

サミットは北京と東京の雪解けのチャンスを与える。【A14面(国際面)】

11月10日に日中首脳会談が実現したが、WSJはその3日前の7日に両首脳会談の可能性を国際面で報道した。



この記事は次の様な書出しで始まる。
「アジア太平洋地域のリーダ達が年に一回のサミットのために北京に集まるが、一つの重要な成功の指標はアジアの2大経済大国が、冷え切った関係から脱却し、関係を正常化できるかだ。」
「北京と東京の役人達は、この数週間、11月11~12日に開催されるAPEC会合の傍らで、習近平主席と安倍晋三首相の打合せを設定するためにマラソン協議を続けた。設定されれば、両首脳が2年前にその地位に以来、初めての会談となる。」

長い記事なので暫く要約する。

両首脳の協議が大きな外交的進展をもたらすと考えている関係者はほぼいないが、握手をするだけでもすごいことだと考えている。この2年間、この2国は領土や第二次世界大戦時の歴史認識でもめ、空や海で危険な遭遇がさらに関係を悪化させた。米国も両首脳の会談を良いことだと受け止めている。
こうした関係悪化は、経済にも影響を及ぼしている。日本の2014年1月~8月の中国への直接投資は、前年比で43%も落ち込んだ。安倍首相は、会談で海洋上での有事への対応について討議したいと言っているが、最近の珊瑚密漁事件と考えるとこうした議題は重要だ。
ここ数週間、中国と日本の冷え切った関係に、雪解けの様相が見えていた。それにも係わらず、中国国営放送は、両首脳の会談に冷や水を浴びせて、日本の関係者を困惑させている。
新華社通信は、日本の3人の閣僚と100人を超える国会議員が、先月靖国神社を訪問したことを例にあげ、挑発行為を行ったとして日本を批判した。
安倍首相は、中国と対立している多くの国を訪問して、外交的成功を治めている、中国との関係も改善したいと考えている。

この記事は次の様なコメントで締めくくられている。
「中国外務省の報道官は、木曜日、習氏と安倍氏の会談が実現するかと尋ねられ、日本が誠意を見せ、両国環形を悪化させている政治的な障害を取り去るための具体的な行動をとることが重要だと述べた。」
「特に、北京は、東京が日本で尖閣諸島、中国でDiaoyuと呼ばれている東シナ海の諸島について、争いがあることを認めることを強く求めている。東京は、同諸島の主権を主張し、争いは無いとしている。」

真偽の程は、別として、韓国当局は会談実施まで、両首脳の会談を知らなかったという。それに比べて、WSJは3日前に両首脳会談の可能性を取り上げた。同紙の取材力の高さと、日中関係への関心の高さを感じる。


Monday, November 3, 2014

日銀内部での不協和音は更なるアクションの可能性を低くする【A10面(国際面)】

日銀の追加緩和策についての続報が国際面に掲載された。



この記事は次の様な書き出しで始まる。
「日本銀行の経済にもっと多くのお金を流し込むという予想外の行動は、株式市場の価格を押し上げ、デフレに対して戦うという姿勢を鮮明にした。しかし、この決断の際に、珍しく日銀内でも意見が割れたということは、黒田総裁とって更なるアクションを取ることが難しいことを意味している。」
「日銀が年間の資産購入額を増やすという金曜日の決断は、5対4の投票結果によるものだが、この決断に向けての工作について詳しい関係者は、黒田氏が一年半前に始めた過激とも言えるこの政策について、9名の日銀取締役の間に疑問の念が増幅していることを指摘している。」

暫く要約する。

この政策に懐疑的な人々は、日本の企業は輸入資源に頼っているのだから、円安誘導政策は間違っていると言う。また、そもそも2%のインフレという目標設定が間違っていて、規制緩和をより重視すべきだという人も多い。
日銀内部に詳しい人は、黒田氏と他の日銀取締役会メンバーとの意見の隔たりが大きくなっていて、このことが大きな問題だという。日銀は、80兆円の国債と30兆円の株の購入を目標に掲げた。黒田総裁は、他の取締役メンバーを説得するのが大変だった様だが、市場は好意的に受け止めた。

そして、この記事は、黒田氏の見解について、次のように述べる。
「要するに、市場は、インフレ期待を増幅させるためには極端な政策が必要だという黒田氏の見方を後押ししたのだ。中央銀行の総裁は、日本は実質的な金利を押し下げるために、継続的な価格上昇が必要だと述べた。インフレ考慮後の実質的な借入れコストを押し下げ、よりリスクのある資産に投資しやすくする必要があるという。彼によれば、そうすることにより、支出が増え、賃金が増え、経済が成長するという、有効なサイクルが生まれる。」

また、暫く要約する。

黒田総裁は、取締役の賛成が得られるかどうか分からない中で、大きな賭けに出た。これだけ、取締役の意見が分かれたのは、1998年の日銀法の改正以来だ。今回、反対票を投じた4名の内、2名はエコノミストで、残りの2名は経済界の代表だ。エコノミストは元々黒田総裁の政策に懐疑的だったが、驚くべきことはこれまで黒田氏を支持してきた経済界の代表までが反対票を投じたことだ。経団連は、行過ぎた円安に警鐘を鳴らしている。

この記事は、次の様なコメントで締めくくっている。
「土曜日に野党である民主党の党首は、日銀のこの政策は平均的な日本人に打撃を与えるだろうと述べた。円の価値を損ねるようなことをすべきでは無いと、海江田万里党首は述べた。」

WSJは黒田総裁の政策には好意的だったが、行過ぎた円安には必ずしも賛成していない様だ。民主党党首のコメントが引用されたのは久しぶりだ。

Saturday, November 1, 2014

日本の「イーズ」の魔法使い【A12面(社説)】

10月31日に発表された、日銀の金融緩和策の追加について、11月1日の社説で取り上げた。WSJ日本語版に同じ記事が掲載されていたので、借用させて頂く。


「日本銀行の黒田東彦総裁にショーマンシップがあることは認めよう。10月31日に日銀が追加緩和策を打ち出すと、東京株式市場は即座に7年ぶりの高値を付け、円の価値は対米ドルで6年ぶりの低水準となる112円に下がった。しかし、この緩和政策の魔術の舞台裏はのぞかない方がいい。」
「黒田総裁は、これまでの緩和政策にもかかわらず依然として低迷している経済を救う必要があると感じた。エコノミストは2014年度の成長率を0.2%と予想している。4月の消費増税の影響を除くインフレ率は1%前後で、日銀が目標としている2%に届いていない。個人消費は低下し、雇用市場が軟化しているという兆候もある。」
「マネタリーベースを従来の年間60兆〜70兆円から年間80兆円に増やすために、より多くの日本国債、上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(J-REIT)を購入するというのが日銀の解決策である。救いがたい国家財政、改革が進まない労働市場、甘やかされた国内産業、高齢化する人口といった材料が入っている日本のデフレの大釜から魔法でインフレを引き出そうという勇敢な試みである。」
「黒田総裁と安倍信三首相はいまだに、国際通貨基金(IMF)によって公布された呪文の書を詠唱している。そこには、国家財政の悪化や債務の拡大という犠牲を払って日本政府が20年間取り組んできたようなケインズ主義の過度な財政出動、それを賄うための増税(たとえば、4月に5%から8%に引き上げられた消費税)、その増税が成長に与えるダメージに歯止めをかけるための金融緩和と通貨の切り下げといった秘訣が書かれている。」
「日本が2013年に実施した最初の金融緩和は長期に及んだデフレを断ち切るためにほぼ間違いなく必要だった。ところが今では、安倍首相が約束した経済改革の『3本目の矢』の遂行を回避するための支えになってしまっている。」
「日本により多くの競争をもたらすはずだった自由貿易という課題は行き詰ってしまった。雇用や解雇の柔軟性を高め、生産性の向上を促進する労働市場改革は、人口減少による景気の低迷を防ぐための移民増加と同様、引っ込められてしまった。この話が欧州中央銀行(ECB)を威嚇しながら、改革を全く実施していない欧州の指導者たちのように聞こえたとしたら、それは暗号が解読できた証拠である。」
「金融政策だけで、まずい財政政策や規制政策を克服することはできない。通貨の切り下げは輸出業者の円建ての収益を押し上げるが、投資の増加や効率化を促すような経済改革なしでは、日本企業は世界の市場シェアを他国の競争相手に奪われ続けるだろう。少なくとも外国人株主は量的緩和が生み出す資産価格バブルで大儲けするだろうが。」
「そういうわけで投資家は黒田総裁の最新の手品を歓迎したが、しばらくするとまた次の奇跡を要求することだろう。安倍首相が来年に予定されている消費税の10%への引き上げを実施しなければ、そうした声は特に大きくなるはずだ。安倍首相と黒田総裁の金融政策が尽きるのも、投資家が舞台の煙の後ろには経済成長がないということに気付くのも時間の問題だろう。」

日銀が決めた政策に関して、日本が根本的な経済構造改革を行わずに金融政策に頼り続けることへの懸念を明確に示している。これだけ、明確に黒田総裁の政策を否定してしまうと、狙った効果も半減だ。
市場は31日はひとまず、日銀の政策を好意的に受け止めたが、こうした報道を踏まえて、連休明けの明日以降どの様に反応するのだろうか?