Saturday, May 4, 2019

ソフトバンクは1,000億ドルファンドのIPOに重点を置く【A1面】

ソフトバンクがヴィジョンファンドのIPOと第二ファンドの設立を計画しているというスクープが、54日のWSJ1面に掲載された。



 当初4年間かけて使う予定だったソフトバンクヴィジョンファンド1,000億ドルを、投資意欲旺盛な孫氏は2年足らずで使い果たしてしまった。その対策として、ヴィジョンファンド自身のIPOと第2ファンドの設立を検討しているとしている。IPOについては、様々な規制を乗り越えられるか、第2ファンドについては投資元を見つけられるかなど、多くの課題があることを指摘している。

***** 以下本文(WSJ記事全文和訳)*****
関係者によれば、ソフトバンクは、大胆なファンドレイジングを検討している。1,000億ドルの投資ファンドの公開オファリング(IPO)と同様の規模の第2ファンドの創設を含む。急成長が見込めるスタートアップを的確に捉えるのが狙いだ。
もっと早いところでは、ソフトバンクは、既存の1,000億ドルのヴィジョンファンドへの10億ドルの投資について、オマーンと交渉している。ヴィジョンファンドは、ほぼ全ての現金をサウジアラビアやアブダビから調達してきた。
ファンドのスタッフは、ソフトバンクの創設者でCEOの孫正義氏の驚異的なディールのペースについて行くのに四苦八苦している。孫氏はヴィジョンファンドが持ち込んだほぼ全ての資金をわずか2年間で投資に使ってしまったのだ。
新しいファンドの必要性について話そう。孫氏は最近中国を訪問し、数10億ドルの非公式なディールについて交渉した。関係者によれば、このディールに必要な数10億ドルをヴィジョンファンドはまだ調達していない。
ヴィジョンファンドは、その1,000億ドルを4年間で投資にまわす予定だった。しかし、たった2年で使い切ってしまうことになりそうだ。
UberWeWorkなど投資した会社がIPOすることにより、若干の資金は調達可能だ。しかし、孫氏が購入したいもの全てをカバーするにはまだ不足している。孫氏のトップの代理人がロサンゼルスの会議で最近語ったところでは、ファンドは今後18ヶ月間で、スタッフを今の倍の800人にまで増やす予定だ。
関係者によれば、ヴィジョンファンドのIPOは、ファンドが完全に投資されてから行われる模様だ。秋頃までには行われることになるだろう。その意図するところは、ウォーレン・バフェット氏のバークシャイアー・ハザウェイの小型版を創設することだ。但し、投資対象は、電力・ガス、保険、エネルギー会社の様な十分に確立した安定企業ではなく、まだ利益も出ていない若いテクノロジー会社ばかりになる。もし成功すれば、マムアンドパプ(mom and pop)投資という新しい資金プールに入り込むことになる。あまり経験のない投資家をリスクの高い資産から守ることも目的とした規制があるため、こうした小さい投資家は、ベンチャーキャピタルファンドに投資することは、通常あり得なかった。

関係者によれば、ソフトバンクの幹部たちは、こうした規制を乗り越えるために努力しているが、オファー(IPO)は実現しないかもしれない。もう1つの障壁は、ファンドの最もホットな投資先が今年公開上場されるかもしれないことだ。こうなるとオファー(IPO)の魅力が減少してしまう。
「グローバルなアセットマネージャーとして、我々は多くの資金の出資元を評価している。」とヴィジョンファンドの広報官は言う。いかなる決断も行われていないことも付け加えた。
ソフトバンクはまた、第2のファンド創設計画を進めている。これは、孫氏が公の場で、欲しいと表明したものだ。代理人のトップは、ロサンゼルスでの会議で、この案を議論した。
関係者によれば、東京に本社を置くこの会社は、銀行に、これらの資金の1部の調達を手伝ってくれないかと話している。新しいファンドには2つのクラスを設ける予定だ。確定したリターンを保証するリスクの少ないものと、ファンドが最低限の利益を上げた場合にのみ支払いが行われるリスクの高いものだ。
1つ難しいのは、機関投資家を見つけることだ。例えば、年金ファンドや保険会社で、通常彼らが求めるようなガヴァナンスやプロセスがないファンドに積極的に投資するようなところだ。今のところ、ファンドは、通常こうした要求をしない政府系投資ファンド以外からは資金を調達できていない。それに加えて、サウジやアブダビを探し回ることによって、幾つかの企業から少額の投資を得た。こうした企業の中には、アップルやクワルコムがいるが、彼らの運命はソフトバンクと絡み合っている。ソフトバンクは、日本の大手携帯電話キャリアの親会社だし、米国のスプリントの主要オーナーでもある。アブダビはコメントを拒否。サウジの担当者にコメントを求めたが返答が無かった。
資金の大きなプールを利用することは、孫氏が描く様なサイズのファンドには極めて重要だ。ヴェンチャーキャピタリストは、通常、数10億ドルの資金を調達する。昨年は、産業全体で550億ドルが調達された。彼らは、小さなファンドや裕福な家族、設立者や寄付などからお金を調達する。
オマーンから資金を調達するのは難しいことが分かった。同国は経済的な問題に直面しているからだ。オマーンにもコメントを求めたが返答は無かった。
もう1つの課題は、現在のヴィジョンファンドは、幾つかの投資に関して問題を抱えている。事情に詳しい人によれば、リターンを持ち上げるための計画の1は、アームホールディングズの株式をソフトバンクに移管することだったが、現在は見合わせている。アームホールディングズの業績は期待を下回るものだったので、リターンもヴィジョンファンドが投資家に示したい数値を大きく下回った。
ファンドの株主への支払いは60億ドルに達しているが、これまでのところ、2つの投資から支払われている。1つはインドのイーコマース会社フリップカート社の株式のウォールマートへの売却。もう1つは上場されているNvida株取引からの利益だ。
ソフトバンクは、現金とその他の資産で、第2のヴィジョンファンドに500億ドル投資したいと考えている。しかし、同社は、負債の負担が重いことと、スプリント社の業績が悪いことから、財務的には重圧を抱えている。ソフトバンクはスプリントをTモバイルに売却しようとしているが、当局からの抵抗にあっている。