Saturday, March 11, 2017

福島の真実が分からないことが原発産業に影を落とす【A8面(国際面)】

WSJは、3月11日に東日本大震災による福島第一原発事故について取り上げた。



原発事故から6年が経過したが、未だに、炉内の損傷状況すら分からない状況が続いている。炉内は放射線量が多すぎて人間は入れないので、ロボットに調査作業をさせようと試みているが、ロボットですら炉内では故障してしまう。このため、メルトダウンの原因すら未だに分からず、他の原子力発電所の再稼働に対して国民は大きな不安を抱いている。
また、炉内の状況が分からないので、廃炉に向けてどういったアクションが必要かも分からない。従って、廃炉に向けたロードマップすら作成出来ない。一度、事故を起こしてしまうと廃炉すら出来ないという現実。そして、一旦汚染してしまった地区は、避難勧告が解除されても、住民が戻ってこないという現実。考えさせられる記事だ。

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日本の原発の惨事から6年が経過したが、かつて世界最大規模を誇った原発産業の再建は困難を極めている。原発事故について分からないことが多すぎて、原発再稼働に対する国民の反対が根強いからだ。
2011年3月11日の地震と津波は、福島第一原発を機能不全に陥れ、それにより、何万にもの人々が避難生活を強いられ、汚染除去と補償費用は1,800億ドルにのぼる。しかし、政府は、3月11日の後、何が起きたのか正確に把握していない。
最近では、カメラ付きで、炉内をはい回ることが出来る「サソリ型の2足歩行ロボット」を使って、損傷状況を調査しようとしたが失敗に終わった。原子炉の中のどこに放射性の強い溶融燃料があるのかを示す写真を写すことができなかったのだ。その答え無しには、廃炉作業は開始出来ない。また、原子炉の損傷に地震が果たした役割や、メルトダウンが始まった原因などについても分かっていない。
「原発事故の真実はよく分からないままだ。」と、福島第一原発の建設に携わった技術者であるタナカミツヒコさんは、最近の記者会見の中で述べた。
原発事故の後、日本にある16の原子力発電所にある40基の原子炉は、全て停止していた。安全に対する懸念から、そのうち3つを除いた全ての原子炉が今でも停止したままだが、原発事故の後、何が起きなか正確に分からないため、こうした安全に対する懸念が増すばかりだ。原発反対を掲げて当選した新潟県知事は、福島で起きたことに関して更なる情報が提示されない限り、県内にある日本最大の原発の再稼働を目指したいかなる試みにも反対するとしている。
日本における脱原発の動きは、多くの国で起きている大きな潮流の一部だ。日米両国において、安価な天然ガスの供給により、原発の重要性は急速に弱まっている。
しかし、日本はエネルギーは輸入に依存しているため、原発を再開すべきか否かの議論は継続するだろう。従って、福島の問題をきちんと解決することが、原子力をエネルギー源として受け入れてもらうのには重要だ。
福島の事故は、4つの内3つの原子炉で核燃料棒のメルトダウンを起こし、燃料が漏れて原子炉の床で燃え尽きた。原子炉内部の放射能は、人間を数分で死亡させるのに十分な量だ。
東京電力は、今年の夏に、廃炉に向けての新しいロードマップを作成することを目指している。しかし、何を洗浄しなければならないかもはっきりしない。廃炉までのプロセスは、完了するまでに30~40年かかると推測される。
東電のサソリ型のロボットは、放射性物質の上を登っているときに、転倒して動作不能となった。サソリ型のロボットが進む道を作るもう一台のロボットも、作業開始から2時間で戻って来なければならなかった。放射性物質の被ばく量が1,000シーベルトに達した際に、2台のカメラが真っ暗になってしまったからだ。1,000シーベルトは、人間を死亡に至らしめる被ばく量の数十倍の量だ。
「我々が出来るのは、せいぜい内部を少し覗き見ることくらいだ。」と昨年の7月にマヒ状態の原発の所長となったウチダシュンジ氏は言う。廃棄物が見つかって除去された場合、その廃棄物を東電がどこに運んでいけば良いのかもはっきりしていない。福島の人々は、核廃棄物を発電所にそのまま残すことに強く反対している。他の地域に移動させることによって、地域についた汚名をはらそうとしている。近郊の都市で、放射能が下がったことにより、政府は非難区域を縮小している。しかし、地域を再建するのは難しいことが分かってきている。
原発から12マイルの所にある楢葉町では、2015年2月に避難命令が解除されたが、ふるさとに戻ってきた住民は10%にすぎない。発電所に続く道は、6,000人の従業員の通勤のため、朝晩は混雑する。しかし、多くのビルは空き家のままだ。
東電の従業員は、最近楢葉町を訪問して、今年4月に開校予定の楢葉小学校と楢葉中学校で、本や設備を整理するのを手伝った。この学校は、他の3つの学校を統合したものだが、115人しか生徒がいない。原発事故の前には、全部の学校をあわせて600人の生徒がいたにもかかわらず。
「ここで生活するのは大変です。多くの生徒が、完全に復旧するのを待っているので、帰ってきません。」と教頭のホリウチヒロシさんは言う。原発の近くにあるホリウチさんの家はいまだに立入禁止だ。

学校の野球場の隣では、大きな線量計が放射能レベルを計測している。そして、その数マイル先には、汚染した土を詰めた数百もの黒いバッグが横たわっているのだ。

Thursday, March 9, 2017

北朝鮮のミサイル計画により、日本が敵基地先制攻撃能力を保有すべきだとの主張は新しい段階へ【A8面(国際面)】

北朝鮮の度重なる軍事挑発に直面し、日本の有力政治家達は、核武装を進める迷惑な隣国に対する、先制攻撃能力の開発・保持を、強く推し進めようとしているという記事が、9日の国際面に掲載された。



自民党が議会で圧倒的多数を得ており、しかも野党の民主党も賛成、これまで反対に回ってきたアメリカも、トランプ政権になって賛成に回る可能性があるとしており、日本の敵基地攻撃を目的として先制攻撃能力保有の可能性が現実味を帯びてきたとしてる。但し、こうした動きに韓国・中国は反対しており、それが地域の不安定化につながるのではないかという懸念も示している。

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北朝鮮が核ミサイルプログラムを推進しているが、こうした北朝鮮の動きが、タカ派の日本の議員を勢いづけている。彼らは、日本が北朝鮮のミサイルによる喫緊の脅威に晒された場合、日本が、北朝鮮のミサイル発射場を先制攻撃出来る様にすべきだと主張している。
自民党の今津寛・安全保障調査会長は、ウォールストリートジャーナルのインタビューに答えて、海外の敵軍事基地を攻撃するためのガイドラインを含む提言を、今年夏前までに作成する計画だと述べた。
こうした考え方は、過去に何回も提案されては消えたが、北朝鮮は月曜日の複数のミサイル発射は、在日米軍基地への攻撃を想定した訓練だったと述べており、こうした北朝鮮の主張が日本に敵基地先制攻撃を目的とした軍事力を持つべきだという見方を強めている。
「我々は、現実に立ち向かわねばならない。もし何もしなければ、北朝鮮が我々を攻撃することを黙ってみていることになる。それではあまりに無責任だ。」と元防衛副大臣で、野党の民進党の議員である長島昭久氏は言う。
こうした動きは、北朝鮮の先端核兵器装備プログラムが北東アジアの安全保障環境に如何に暗い影を投げかけているかの1つの例だ。北朝鮮は、アメリカ本土を長距離核兵器で脅かす能力を保有しようとしており、多くの専門家が、既に近隣諸国に対して同様の攻撃が可能な能力を保有しているとしている。
火曜日に、韓国は、北朝鮮の攻撃に対する新しいミサイル防衛システムのバッテリー部分の最初の部品を受け取った。THAADと呼ばれるこの防衛システムの展開は、中国からの報復の可能性を孕んでいる。中国は、THAADは中国の安全保障上の権益を脅かすと主張している。
日本が、北朝鮮を攻撃する能力を保有すれば、同じように中国の怒りを買うことになるだろう。日本が中国の軍事施設の一部も攻撃可能になるからだ。
そうした日本の動きは、韓国が日本に対して持っている不信感を更に助長することになるだろう。韓国は、20世紀の初頭に日本に植民地化されたが、それ以来韓国には日本の再軍備化に対する恐怖が存在する。
アメリカは、これまでは、日本が敵基地先制攻撃能力を持つことによって、地域の安定が損なわれることに対して、懸念を表明してきた。しかし、トランプ政権が、日本のそうした動きに対して、どの様な考えを持っているのかは不明だ。
在日アメリカ大使館は、トランプ政権に問合せをした。マティス国防長官は、最近日本を訪問したが、その際に日本とアメリカは、防衛能力を強化する必要があると述べた。
安倍首相率いる自民党の上級幹部の数名は、ここ数年、北朝鮮のミサイルテストが実施されるたびに、日本が敵基地先制攻撃能力をもつべきだと提案してきた。

自民党は、議会で圧倒的な過半数を得ている。60%という高い支持率を得ている安倍首相は、2018年の終わりまで総選挙を行う必要が無い。民進党の幹部は注意深くはあるが敵基地に対する先制攻撃能力の保有について反対はしていない。

Tuesday, March 7, 2017

北朝鮮のミサイル実験が大陸間弾道ミサイルの脅威をかきたてる【A7面(国際面)】

北朝鮮は、3月6日、日本に向かって4基の弾道ミサイルを発射したが、WSJはこのニュースを翌7日の国際面で速報した。



このミサイル発射は、在日米軍への攻撃を念頭に置いていること、日本には主に沖縄を中心に54,000人の米兵が駐留していること、北朝鮮は日本もアメリカと共謀して北朝鮮への侵攻を目論んでいるとして非難していること、安倍首相とトランプ大統領が電話会議で両国が協力して対応することを確認したこと、稲田朋美防衛大臣がグアムでサードの視察をしたこと、日米韓が国際安保理に緊急会議の開催を求めたことなどを伝えている。緊迫した雰囲気が伝わってくる。

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北朝鮮による日本を狙った中距離ミサイルの発射は、北朝鮮がアメリカにとっての喫緊の脅威であることを示している。北朝鮮は、アメリカ西海岸を攻撃可能な大陸間弾道ミサイルを今年中に発射すると約束しているが、それを更に推し進める可能性があるからだ。
ミサイルの専門家は、月曜日に朝鮮半島の東の海洋上、北朝鮮北西部の発射地点から620マイルの地点に落下した4基の中距離ミサイルを確認していない。米軍の高官は、5つ目のミサイルの発射には失敗したと述べた。
北朝鮮の国営メディアは、火曜日に、ミサイルは日本の米軍基地を狙ったものだと伝えた。これは、北朝鮮の米軍への脅威は、アメリカ本国を攻撃可能な大陸間弾道ミサイルにのみ依存したものではないということを思い知らせるものだとも伝えた。
4基の弾道ミサイルの発射は金正恩主席の命令によるものだと、朝鮮中央テレビは伝えた。また、北朝鮮が、複数のミサイルを目標に向けて同時に発射する能力を持っていることも強調した。
また、発射は朝鮮人民軍の武器部隊によって行われたと、朝鮮中央テレビは伝えた。
アメリカは約54,000人の兵士を日本に駐留させている。85ヶ所の施設に分散しているが、その殆どは、南部の島である沖縄に集中している。韓国にも28,500人の米軍兵がいる。
北朝鮮は、米軍を駐留させているとして、韓国と日本を継続して非難してきた。北朝鮮がこの2国を非難するのはいるも春だ。この時期に、米軍と韓国軍が朝鮮半島で合同演習を行うからだ。
今回は、米韓合同演習の6日目にミサイルが発射された。北朝鮮は、演習は、北朝鮮への侵攻のリハーサルだとして非難してきた。アメリカは、演習は防衛が目的だとしている。
北朝鮮のミサイル実験の殆どは、日本方面の海洋を目標に行われている。1998年と2009年の実験では、ミサイルは本州を越えて太平洋に落下した。
北朝鮮は、韓国同様に、日本も、アメリカと共謀して、北朝鮮に侵攻して、攻撃により脅すつもりだとして非難する。
最新のミサイルのうち3基は、日本の北西岸から200マイルの地点に着水した。8月には、北朝鮮は同じ地域に着水するミサイルを発射、9月には更に3基のミサイルを発射した。稲田朋美防衛大臣は、グアムのアンダーソン空軍基地を訪れ、サード防衛システムを視察した。
韓国は、アメリカの支援のもと、サード防衛システムの展開を進めているが、火曜日にはオサンの米軍基地で最初の部品を受け取った。最初のサードの電池は、年内に実装される予定だ。北朝鮮と中国は、サードに強く反対している。
日本の安倍首相は、月曜日の夜にトランプ大統領と電話会談を行ったと語った。両首脳が、韓国と共に、この発射について、緊密に連携して対応していくことで一致したと安倍首相は述べた。
米国議会は、発射を強く非難し、議員はより強い制裁を検討している。国連のレポートが、北朝鮮は、企業や政府のネットワークの助けを借りて、国際制裁をすり抜けていると結論付けたが、ミサイルの発射はそれと時期をいつにして行われた。日本と韓国とアメリカは、月曜日に、このミサイル問題について、国連安保理事会が緊急会議を開催する様に要求した。

日本の喫煙への取組はうまくいっていない【A7面(国際面)】

WSJは、厚生労働省が、今国会に提出を予定している「禁煙法案」を巡るドタバタ劇について、7日の国際面で報道した。



日本の受動喫煙に対する対応が先進国の中で最も遅れていること、2020年のオリンピック開催決定を契機に日本政府がようやく重い腰をあげてこの問題に取り組もうとしていること、飲食業界などが禁煙スペースの設置費用負担が重いことを理由に反対していること、政府も日本たばこの株主であるため、またたばこ税が税収全体の1%を占めることから、本腰が入らないことなどを伝えている。

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日本政府は、日本初の全国を対象にして喫煙規制を導入しようとしているが、日本に深く根付く喫煙文化のせいで、この計画がトラブルに見舞われている。
日本では、食事をする際には、バーでもカフェでもレストランでも、自由に喫煙できる場合が殆どだ。与党自民党のロビーにすら喫煙ブースがある。なんと、健康を司る厚生労働省にすら、外に喫煙者のためのスペースを設けているのだ。
一方、民間企業や地方自治体では、最近、厳しい規制が導入されつつある。しかし、2020年のオリンピックが東京で開催されることが決定し、日本政府は初めて、レストランや病院や学校で、喫煙を禁止する法律の導入を真剣に考える様になった。
法案では、「病院」「ジム」「大学より下のレベルの学校」などについて、敷地内での喫煙を禁止している。
また、「劇場」「デパート」「大型レストラン」「コンサートも開催されるプロ野球スタジアム」等には、喫煙室を設けることを認めている。この規則を守らない喫煙者などには、罰金が科せられる。
カフェやレストランやバーのオーナーからこの法案に対する大きな反対の声が上がっている。彼らは、密封された喫煙室を作るお金など無いと言う。
「人々の生活がこれにかかっているのです。」と東京のゴールデン街で小さなバーを経営しているモリタヨシエさんは言う。
「多くの人が、日本では、受動喫煙を避ける方策が遅れていると考えていて、そのためにこの法案を作ることを決めました。」と与党健康部のトカシキナオミさんは言う。
「この調子では、この案を法律にすることは出来ません。」とトカシキさんは言う。「私はとても心配しています。」
禁煙法案を通すのが難しいのは、政府と日本たばこ株式会社との関係にもある。日本たばこは以前は国が100%保有する独占企業だったが、今でも財務省が1/3の株式を保有している。
日本政府は、今年度、たばこ税から9,230億円(81億ドル)の税収を見込んでいる。これは、国の税収の1%に当たる。
日本たばこは、喫煙規制は人々の選択の自由を尊重するべきだと主張し、厚生労働省の案は、バランスを欠いていて、不合理で行き過ぎだとしている。
厚生労働省は、サービス業や与党議員の批判をかわすために、先週水曜日に、法律ガイドラインの最新版を公表した。関係者によれば、320平方スクエアフィート以下のバーにはこの法律は適用されない方向だ。
日本は、世界の裕福な国々の中で、反喫煙の最後の戦場だ。アメリカでは、国の法律でも地方の法律でも、幾つかの州で例外はあるものの、一般的には公の場での喫煙が禁止されている。

政治家は、安倍首相にとって喫煙制限を実現させる時間は足りなくなってきているとする。3月10日が6月に会期末を迎える今国会で法案を成立させるための、提出期限だ。一部の厚生労働省の役人は、期限を無視してでも提出するとしている。

Friday, March 3, 2017

原油価格の高騰によりインフレが戻る【A8面(国際面)】

総務省が3日発表した1月の全国消費者物価指数は、コアCPIが前年比0.1%上昇したが、WSJはこのニュースを同日の国際面で速報した。


価格上昇は2015年12月以来1年1ヶ月ぶりだが、上昇幅は小さく、日銀目標の2%に遠く及ばないとしている。

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日本の1月の消費者物価は、1年以上ぶりに上昇に転じた。世界的な原油価格の高騰が、安倍首相と日銀が進めるデフレ脱却の政策に助け舟を出した形だ。
金曜日に総務省が発表したデータによれば、コアCPIは、12月に前年比で0.2%下落した後、1月には前年比で上昇に転じた。
価格上昇は、2015年12月以来だ。コアCPIは、生鮮食料品を除いているが、エネルギー製品を含んでいる。結果は、エコノミストの予測と合致している。
日本における価格上昇への回帰は、高い燃料と商品の高騰によって消費者物価が上昇し、世界的にインフレの兆しが見られることと一致する。こうした動きは、中央銀行にのしかかる価格上昇へのプレッシャーを緩和している。連邦中央銀行を含む幾つかの中央銀行は、既にインフレ目標が過剰に達成されない様に、金融引締政策を導入している。
しかし、1月に日本の価格が少し上昇したと言っても、日銀が目標とする2%の上昇からは程遠い。失業率は減少しているが、インフレを継続させるためには、国内消費がもっと強さを示す必要がある。

Tuesday, February 28, 2017

*** 2月のまとめ ***

2月にWSJに掲載された日本関係の記事は15件。2016年の1月当りの平均が9.6件、2017年1月が12件だったので、かなり多かった。
テーマ別では、政治関係が10件、経済関係が3件、社会関係が2件だった。

政治関係では、2月3日のマティス国務長官の来日が2件、2月10-11日の安倍首相の訪米が実に8件だった。マティス国防長官の来日は、4日に速報した後、7日の社説で取り上げた。安倍首相の訪米については、4日、7日、10日に計4件もの事前記事を掲載、10日には香港のジャーナリストによる事前の論評を掲載、11日には2件の会談速報記事を、更に13日には社説を掲載した。異例ともいえる力の入れようだ。

経済関係では、1日に日米欧でデフレ脱却の兆しがあるという楽観的な記事を出しておきながら、27日には日銀の金融緩和政策は失敗に終わり日本はデフレから脱却出来ないという悲観的な記事を掲載した。9日には、社説で、円の上げ下げに一喜一憂するのはおかしいとの主張を展開した。

社会関係では、4日に、1月22日に亡くなられたナムコ創設者中村雅哉氏について取り上げ、25日には、24日に初めて行われたプレミアムフライデーについて取り上げた。

掲載箇所では、1面が2件、社説が3件、専門家投稿欄が1件、死亡記事面が1件、国際面が8件だった。

Monday, February 27, 2017

日本の過激な金融緩和の失敗【A1面】

WSJは、2月28日の国際面で、日銀の金融政策は失敗に終わったというショッキングなニュースを1面に掲載した。



この記事によれば、日銀は国民の消費を増やすことを目的に金融緩和策を続けてきたが、バブル崩壊後に生まれた世代はデフレしか知らないので将来に悲観的でやる気も無く、彼らに対して幾ら金融緩和を行っても、消費を増やさない。たまに、やる気のある若者が一念発起して起業しても、マイナス金利で利益を確保出来ない銀行は、担保を持たない若者には貸し渋るので、やる気があっても若者は起業すら出来ない。日銀の金融緩和政策のもう一つの目的は、銀行の貸出額を増やすことにもあったはずなので、皮肉な話だ。

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日本の行け行けの1980年代に、シバタヒロミさんは一月分の給与を全て投じてカシミアのコートを購入し、数回着ただけで、後は着ないといったことをやっていた。今日、彼女の娘さんにとっての楽しい買い物とは、県庁所在地である静岡にある母親のクロゼットを漁ることだ。
「私の持っている服の1/3が母親からのおさがりです。」と東京に住む26歳のシバタナオコさんは言う。112マイルの里帰り費用を節約するために、彼女はかつて日本の繁栄の象徴であった新幹線ではなく、バスに乗る。」
世界では、中央銀行が、「低金利やマイナス金利」と「成長を加速させ価格下落を防ぐための刺激策」に依存する時代が長く続いてきたが、アメリカはそうした時代から世界に先駆けて抜け出そうとしている。連邦準備銀行はアメリカの金利を上昇させ、欧州中央銀行は刺激策の緩和を検討している。一方で、日本は完全に行き詰まっている。超低金利による過激な実験を長期間にわたって行ったにもかかわらずだ。バブル崩壊から四半世紀が経過し、「経済不振」「低迷する賃金」「価格上昇ではなく価格低下が継続するデフレ」しか知らない、節約世代が成人を迎えた。
デフレは継続するという考えが非常に強く浸透してしまい、それが金融政策に対する大きな障害となってしまっている。これは、同様の道を進む他の国々にとっての教訓でもある。
「デフレマインドを変えるのは、過激な政策をもってしても、難しい。」とHSBCのアジア経済の共同代表であるフレデリックニューマン氏は言う。「日本は落ち込んだ状態にとどまり、それは今後何年も続くだろう。」
日本で中央銀行による景気刺激策が開始されてからほぼ4年が経過した。この政策では、何兆円もの紙幣が印刷され、金利はマイナスとなった。今世界で行われている政策の中で最も過激なものだろう。日銀の黒田晴彦総裁による、ショックとサプライズの景気刺激策は、2013年4月に開始されたが、暫くの間成長と価格上昇が見られた後、萎んでしまった。日本は昨年はデフレ状態に陥った。最近では、インフレ率は、ほぼ0%に低迷している。
11月には黒田氏は2%のインフレ達成時期を遅らせた。これは、彼がアイデアが尽きたことを認めたのと同じだ。彼は、昨年、幾つかのスピーチの中で、非常に強く刻まれたデフレマインドによって、価格や賃金が上昇するという希望尾が萎み、その結果金融政策の効果が限定的なものとなったと述べた。黒田氏にコメントを求めたが、スポークスマンを通じて拒否してきた。
日本のインフレ率はここ数ヶ月ゼロを超えているが、エコノミストによれば、これはドナルトトランプ氏が大統領に選出されたことや、ドル高、原油高が影響しているもので、日本の経済ファンダメンタルが強くなったことによるものではない。日本が強い成長と価格上昇に戻るとみている人は殆どいない。
デフレは、経済成長を阻害するという意味で、経済にとて悪い影響を与える。企業の収益がは下がるので、彼らは、投資を控え、賃金をカットし、採用を止めてしまう。経済の先行きが不透明な中で、消費者は支出を止めてしまうので、負のスパイラルが更に推進される。
超低金利を導入した背景には、インフレを起こすことにより、消費者や企業に支出を促そうとう考えがある。しかし、デフレマインドが非常に強いので、消費者や企業は、どんなに中央銀行が金利を下げても、支出を控えたままだ。実際のところ、金利を下げたことが、逆に消費者の不安を煽り、「支出する」のではなく、「経済状況が悪化した際に備えて貯蓄する」という現象を招いた。
中央銀行が即効性のある対応をする時代にあっても、ここまで過激なことをやった国は日本以外にいない。日銀は、1999年に金利をほぼゼロまで引き下げたが、これは欧州やイギリス、米国が2008年の経済危機に対応するために導入するよりずっと前だった。2001年には日本は金融市場にキャッシュを投入し、インフレと成長を喚起しようとしたが、これは量的緩和と呼ばれ、のちに西側諸国でも導入された。
黒田氏は、2013年に大量のキャッシュを金融市場に投入し始めた。その額は年間7,000億ドルに及んだ。多くの投資家が、ハイパーインフレが起き、資産バブルが起きることを懸念した。しかし、それは起きなかった。昨年、日銀は欧州中央銀行に追随してマイナス金利を導入した。銀行がお金を借りないと損する様にして、銀行にもっとお金を借りさせようとする過激な試みだ。
日本の今日の苦境は、1980年のバブル期には考えられなかった。その頃、日本の大企業はニューヨークのロックフェラーセンターの様な有名不動産を買いあさり、東京の不動産価格は世界で最も高かった。日本は金利を上昇させていったが、それが不動産と株式市場のバブル崩壊へとつながった。
それ以降、年間成長率は1%以下となり、周期的にリセッションを経験した。1990年代後半には価格下落も始まった。経済規模では、中国が日本を抜いて第2となり、日本は第3位に下落した。日経株式市場の平均は、1989年のピーク時の半分だ。不動産価格は広い範囲で、ここ4半世紀下落を続けている。
冷凍デザートメーカである赤城乳業は、昨年25年ぶりに9セントの値上げを行い、謝罪広告を出した。日本の企業には、約2兆ドルのキャッシュが眠っている。こうしたお金は投資にまわるべきだと政府要人は考えている。
デフレの世界は、価格下落が始まってから成長した20歳から34歳までの2,000万人に頭に深く刻まれている。賃金が上昇することや、株価があがることや、銀行が預金に対して魅力的な金利を支払ったりすることは、彼らにとっては単なる仮説にすぎない。彼らは、今日買ったものが、明日にはもっと安くなっている世界に生きてきた。彼らは本能的に安全な行動を取るし、節約家だ。
彼らは親の世代の消費主義を否定する。ルームメイトとグループホームに住む者もいる。日本では新しい現象だ。そして、3ドルの牛丼をたべる。何かにお金を使うとすれば、旅行だ。買ったものの価値は下がって行くが、経験の価値は下がらない。
戦後の貧困の時代を経験した高齢者世代にとっては、今の若者世代のやる気のなさが心配だ。日本には「ニート」という言葉があるが、これは学校にも行かず、働きもせず、職業訓練もしない若者のことを表現する言葉だ。また、「フリーター」というのは、パートや契約社員の様な、安定しない職についている若者のことを言う。「パラサイトシングル」は親元を離れない若者のことだし、「草食男子」とは女性に興味を示さない若い男性のことだ。
「彼らの問題は、彼らの暮らしがあまりにも快適なことにある。」と元経済財政担当大臣の竹中平蔵は言う。「彼らの期待は低い。我々は格好良い車を持ちたいと思ったものだが、彼らはそうしたものには興味がない。」
多くのエコノミストが、日銀の2013年の景気刺激策は、低成長と価格下落のダウンスパイラルから日本を脱出させるために十分な対策だと考えた。黒田氏と安倍内閣の官僚たちは、刺激策実施直後のインフレ傾向や成長が、この刺激策が最終的には機能することを示していると考えた。金融政策は、2014年の消費税増税によって邪魔されるまでは機能していたと言う人もいる。
10月の日銀の世論調査によれば、来年に支出を増やすとした回答者は全体の5%に過ぎず、実に48%が支出を削減すると回答した。
香川県の公務員であるカメヤマケイタさんは、ここ数年間40,000ドルの給与の約25%を貯蓄し、遂に長い間交際してきたガールフレンドと結婚した。かれは、母親と一緒に住み、古いホンダ車を運転し、殆ど買い物はしない。中央銀行の経済刺激策は、カメヤマさんの消費行動に殆ど影響を与えない。彼は、未だに彼のお金を普通預金に塩漬けにしている。彼は、日本の長期にわたる経済不振により年金を受け取れないのではないかと恐れているし、彼の母親の面倒を見るために十分なお金がないのではないかと心配している。20歳から34歳の人口に比べて、60歳以上の人口が倍になっている日本では、こうした心配が増大している。
彼は、マイナス金利の中で、殆ど利子のつかない、銀行口座が唯一の貯蓄方法だと考えている。香川県最大の銀行である百十四銀行の金利は0,05%で、1995年以降ずっと1%以下のままだ。
「香川県の人々は貯蓄をするのが好きです。」とカメヤマさんは言う。「日銀が人々にお金を使わせようと必死になっているのは知っています。でも、私は財布を開かないだろうと思います。」
多くの日本の若者が節約しているのは、お金が無いからだ。低賃金で福利厚生の無い非正規従業員の数が増えている。
「多くの企業は成長していないし、解雇出来ない多くの高齢者を抱えている。」とエコノミストでリサーチ会社ジャパンマクロアドバイザーズ創設者の大久保豚史氏は言う。「従って、若者を雇う余裕は無い。」
「自動車、ビール、化粧品の会社は、若者向けの広告を減らし、代わりに退職者向けの広告を増やしている。」と博報堂の若者向けマーケティングを担当するハラダヨウヘイ氏は言う。「親と子供の役割が反対になっている。バブル世代の親たちは未だに子供の様に暮らし、格好良い車を買いたがる。バブル後に生まれた子供たちは親たちの無駄遣いを心配している。」と彼は言う。
サイトウタカシさん(23歳)は未婚の起業家だ。2015年に彼が起業を決断した時、彼は東京のグループアパートに住んでいた。彼のアイデアは、沢山の服を着たいけど、服を買うお金のない女性をターゲットにしたオンラインでの服のレンタル会社だ。45ドル払えば、月に3着の服がレンタル出来る。
サイトウさんは、日銀は銀行の貸出増を誘導するために低金利政策を取っているのだから、小さいビジネスでも簡単にお金が借りられると思っていた。ところが、そうではなかった。
彼は、小さなビジネス向けのローンを行うために国が設立した日本政策金融公庫に行き、$200,000のローンを要求した。沢山のお願いをさせられた割には、彼が得られたのは$50,000以下だった。1年後、ビジネスが大きくなったので、ローンの増額を依頼したが、断られた。この件について、日本政策金融公庫にコメントを求めたが断られた。
銀行アナリストは、日本の銀行はより保守的になっていると言う。低金利のせいで利益が減少しているので、担保を持たないスタートアップ企業に対しては及び腰にならざるを得ない。マイナス金利になった後の11ヶ月間、日本政策金融公庫のローンポートフォリオは縮小した。
斉藤さんは貯金を取り崩し、家族からお金を借り、今はベンチャーキャピタルに望みをかけている。
日本の衣料ブランドであるユニクロは、デフレの時代にあって、ヒットを飛ばしている。低価格の衣料が、節約家に受けているからだ。しかし、2015年にユニクロが値上げをした際には、お客がユニクロの購入を止めた。ユニクロは仕方がなく、再び価格を下げて、売上を戻した。
ユニクロの創設者である柳井正氏は、マイナス金利や量的緩和などの政策は、消費者を心配させるだけだと言う。「それは、未来に対する不安を抱かせる。」と彼はインタビューの中で発言した。「彼らはマイナス金利を止めるべきだ。ばかげている。」
JPモルガンチェースのエコノミストであるカンノマサアキ氏は、デフレマインドが深く刻まれているのは当然のことだと言う。25年間も賃金が変わらないのだから、若者は将来収入が増えるということを信じていない。
エコノミストの中には、政府は更なる財政政策と金融緩和を行うべきだと主張する人もいる。一方で、景気刺激策の結果、日本はGDPの230%という大きな国債を抱えており、このままでは経済崩壊につながるという人たちもいる。
東京に住むシバタさんは、母のクロゼットを漁っているが、最近、職業斡旋の仕事を週3回に縮小した。そのために、彼女は以前の半分の賃貸料で済むアパートに引っ越し、買い物も止めた。彼女は、自分のキャリアのために時間を使うことに意味を見いだせなくなったのだ。代わりに、彼女はモダンダンスを楽しんでいる。
「企業に自分の時間を吸い取られてしまうのは、割に合わないと思います。」とシバタさんは言う。「だって、幾ら働いても、昇給は期待できないのだから。」