ゴーン氏は21日、特別背任容疑で再逮捕されたが、WSJは翌日の意見欄に同社コラムニストの意見を掲載した。
ゴーン氏の逮捕は、衰退していく日本が、何としてもグローバルな舞台に戻りたいと考えて、グローバル企業である日産への支配力回復を目的に、なりふり構わずに行っているクーデターだとしている。本当は恩人であるゴーン氏に対して感謝の意を表すべきなのに、反民主的・策略的な手法でゴーン氏を追い込むやり方は、まるでプーチン大統領のやり方の様だと言っているように読めるがどうだろう。こうしたプーチン的な強引なやり方は、日本だけでなく、トランプ大統領も含め、世界全体に広がっているとの懸念で締めくくっている。
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カルロスゴーン氏は、11月19日以降、複数の容疑で、日本で収監されたままだ。こうした容疑により、会長職を追われた日産のリーダーは、起訴されたり、有罪判決を受けたりしたわけでもないのに、保釈の機会を与えられないまま、日本の司法制度のもとで、収監されている。
彼の元々の収監の理由は、日産・ルノーのアライアンスのトップとして得た未払報酬が、日本で公表される必要があったかどうかという、テクニカルな問題にかかわるものだった。その後、日産が、ゴーン氏が使用するために維持していた家の問題が浮上した。今度は、ウォールストリートジャーナルが、「個人的で付随的な契約」と報道している点について疑問が上がってきた。
まず覚えおいてもらいたいのは、日産が解雇したゴーン氏は、100万台の車を生産するグローバル企業を経営する幹部の標準的報酬から見て、報酬を貰いすぎてはいないということだ。2016年に三菱自動車が日産・ルノー連合に参加したが、ゴーン氏が3社を経営してなかったとしたら、3社がそれぞれ支払わねばならなかった金額はもっと大きかったかもしれない。
しかし、日本やフランスの国内のCEO の標準からすると、彼は貰いすぎだった。彼の報酬は、両国のメデイアをいらつかせる問題だった。さらに、日産とルノーを再生し浮上させるためには、当然、解雇が必要だったのだが、日本とフランスの両国では、統合と解雇が反社会的だとみなされている。
2010年以降、ゴーン氏の報酬の多くの部分を後払いにしたことは、明らかに、フランスや日本の政治家へのプレシャーを和らげつつ、ゴーン氏がリーダーシップを維持するためのゴーン氏のギリギリの策略だった。ゴーン氏が育ったベイルートの家や、ゴーン氏が生まれたブラジルの家に、ゴーン氏が住んでいたことには、彼が常にスケジュールが一杯で、出張で忙しかったことを考慮しても疑問が残る。しかし、これらの家屋は日産の資産なので、ゴーン氏の退任によって、これらの資産は市場で取引され、その相当額が日産の元に戻ってくるだろう。
有効な議論がある。マスコミや取締役会室、民事訴訟などでは、もみ消されてしまう類のものだ。ゴーン氏とその片腕のケリー氏が日本に気に入られるためには何が必要かとか、軽い罪での逮捕に止めるためには何が必要かといった議論は、今回の問題の真髄に迫ることにはならない。ウォールストリートジャーナルには、毎日新しい発見が掲載さているのでみてみよう。
・ゴーン氏が日産・ルノー連合を安定的で永続的なものにし、最終的にはフランスの株主に有利な形で、両者を統合させようと計画していた。
・ゴーン氏は、日産の片腕である西川宏人氏への信頼を失っていた。彼は、合併に反対で、ゴーン氏の逮捕を仕組んでいたと見られる。
・2人は、特に、停滞する日本市場よりも成長する米国市場にもっと投資したいというゴーン氏の計画について言い争っていた。
こうした事実を見ていると、ゴーン氏の逮捕が「プーチン主義」、つまり、ゴーン氏の逮捕が、日産がルノーの1部門になることを避けるためのクーデターということにならないか。我々はそこにもっと注目すべきだった。日本は、米国が見守る中、1980年代以降勢いを失いつつある。1980年代には、日本の投資家たちは、ロックフェラーセンターを買い、パブルビーチの名門ゴルフ場を買った。その頃、東京の皇居の土地の価格は、カリフォルニア州全体の土地の価格よりも高いと言われた。
日本は未だに製造大国としてグローバルに活躍しているが、グローバルなシーンでの文化的影響力は低下してしまった。人口は減少し、高齢化は急速に進んでいる。昨年の新生児の数は949,060人にまで減少し、1899年の統計開始以来、最低を記録した。国民全体が魔法をかけてでも維持したいと考えているのは、日本円と日本国債の価値を維持のようにも見える。日本の一人当たりの国債の額は、断トツトップで、一人当たり9万ドルにもなる。人口に占める子供の数(日本では子供は珍しい存在になってしまった。)は、2060年には1/3まで縮小する見通しだ。
フランスの株主が、日産の回復から、大きな利益を得ていることは事実だ。ルノーは、日産が1999年に倒産しかかっている時に、日産株を買ってくれた救世主だ。フランス政府がルノー株を保有していて、間接的に日産株を保有していることに、日本の株主が懸念を持っていることは理解できる。しかし、ゴーン氏の決断がフランスの国内の権益を守るために歪められていたというのは、事実とは明らかに異なる。日産の成功は、米国市場と中国市場への投資に舵を切ったゴーン氏の功績によるところが大きい。
我々は、企業を擬人化しないので、日産の経営陣や日本のリーダーたちが、救世主であるルノーに感謝を示していないことをとやかくいわない。しかし、ゴーン氏が水の上を歩いたとしても、彼らはゴーン氏に対して犯罪となる容疑を仕立てあげていただろう。衰退する日本は、今蘇った日本のチャンピョンである日産に対する支配を取り戻したいのだ。
でも、日本人は本当にそんなことをしてしまうのだろうか。日本の法制度は、多分、我々の多くが、何となく考えていたものとは異なるようだ。それは、もっと「プーチン主義」に近い。(この点について、私が間違っているなら、ツイートやメールを送って欲しい。米国を含む、世界全体がプーチン主義に向かっている。)
ゴーン氏とケリー氏は、日本の刑務所の中では、幸せなクリスマスを楽しむことはできないだろう。
(かなり難解な文章が多く、一部意訳してあります。誤訳も含まれるかもしれません。)