アベノミクスに失速の兆しがあるという記事が、国際面に掲載された。
個人消費や企業投資が弱いことが問題としている。
(WSJ日本語版に同じ記事が掲載されていたので、下記に引用させて頂きました。)
(WSJ日本語版に同じ記事が掲載されていたので、下記に引用させて頂きました。)
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日本政府は景気活性化に向けた次の一手を打つための準備を進めているが、最新動向からは安倍晋三首相が主導する経済戦略(アベノミクス)の失速がうかがえる。
スタンダード&プアーズ(S&P)は16日、経済成長の弱さを理由に日本のソブリン格付けを引き下げた。「デフレ脱却や経済成長を目指した日本政府の経済政策は当初奏功する兆しがみられたものの、(アベノミクスが)この低下傾向を今後2〜3年で好転させる可能性は低い」と説明した。主要格付け会社では、S&Pに先立ちムーディーズ・インベスターズ・サービスとフィッチ・レーティングスも日本の格下げを発表済みだ。
また日本銀行は16日に公表した9月の金融経済月報で、中国および新興国経済の減速で輸出が抑制される結果、鉱工業生産が「横ばい圏内の動きを続ける」もようだとし、見通しを下方修正した。
3本の「矢」からなるアベノミクスは導入から3年近くが経過したが、エコノミストの間では最近、その実効性を疑問視する見方が広がっている。
調査会社ジャパンマクロアドバイザーズのチーフエコノミスト、大久保琢史氏は「アベノミクスの失敗を宣言するのは時期尚早だが、それ(失敗)に向かっていると言わざるを得ない」と述べた。同氏はこれまで安倍首相を支持してきた。
事態の緊急性を浮き彫りにする2つの指標がある。日本の国内総生産(GDP)は4-6月期に前期比年率1.2%減となったが、7-9月期のマイナス成長回避は難しいと、エコノミストらは考えている。日銀による前例のない金融緩和にもかかわらず、主要インフレ指標は物価の横ばい推移を示しており、安倍首相のデフレ克服に向けた努力における失点を浮き彫りにした。日銀幹部からは、日本のような主要エネルギー輸入国にとってプラスに働く傾向があるエネルギー価格の下落も、今回はインフレ押し上げの取り組みへの障害になっている、との指摘がある。
一部の指標は過去3年の間に大きく改善した。日経平均株価は、最近の世界的な株価急落後でさえ、安倍首相就任前の水準を80%上回っている。企業利益の大幅な伸びも株価上昇に寄与した。労働需要は、日本経済の長期間にわたる停滞が始まった1990年代初頭以来の高水準にある。また、原油安の一時的な物価押し下げ効果があるため、主要物価指数は、安倍首相のデフレ克服努力の効果を実際より少なく見せている可能性がある。
安倍首相は自民党総裁に再選した今月8日、「アベノミクスもまだ道半ばだ」とし、全国に「景気回復の好循環」を届けたいと話した。
日本銀行の黒田東彦総裁は15日、中国の景気減速は日本にやや影響するものの、同国指導部が近く景気てこ入れと安定した成長の再開に向け施策を打ち出すとみていることを明らかにした。
ただ、アベノミクスの「三本の矢」にはいずれも、消費支出や設備投資を阻む障壁を突き破る力が備わっていないようだ。
第一の矢である金融政策は、2014年10月以降放たれていない。日銀は当時「量的・質的金融緩和」の拡大を発表して市場を大きく動かした。
第二の矢である財政政策は、成長を促す力を失っている。政府は第2次安倍政権の1年目に景気対策支出を大幅に拡大したが、本年度は補正予算で追加されない限り、政府支出全般の縮小が見込まれる。
第三の矢である構造改革には、コーポレート・ガバナンス(企業統治)の改善や女性登用の推進が含まれている。これらの改革は海外投資家から評価されているが、安倍首相は最近この課題に主だった提案を加えていない。外国人に対する労働市場開放などの大幅な改革が進んでいる兆しはない。
双日総合研究所の副所長でチーフエコノミストの吉崎達彦氏は「中長期の見通しが暗いままで、家計が消費を増やしたり、企業が投資を決断したりすることは考えにくい」と指摘した。
一部のエコノミストは、安倍首相は高水準の政府債務への取り組みを強化することで信頼を高められると主張している。一方、首相に近い関係者は、そうした痛みを伴う施策について、安倍首相の就任前から15年にわたり続くデフレを完全に脱するまで待つべきだと指摘している。
政府は企業に投資の拡大や賃上げを直接促し続ける方針だ。 甘利明経済再生担当相は「秋の陣ではしっかり背中を押していきたい」と述べた。