Monday, October 23, 2017

安倍首相が選挙に勝利【A1面】

1022日に行われた衆議院総選挙について、WSJは翌231面で速報した。



日本の選挙結果が1面で扱われるのは極めて珍しく、この選挙に対するWSJの関心の高さを窺わせる。この記事は3だけの小さな記事だが、安倍首相が当選者の名前に薔薇を付けている写真と、自民党の議席数が全体の60%に達したことを示すグラフを付け、目立つ記事になっている。

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日本の安倍首相と彼が率いる自民党は、安倍首相の経済運営や北朝鮮政策への信任投票だとして戦ってきた選挙に勝利し、新たに政権を任せられた。

Saturday, October 21, 2017

安倍首相は北朝鮮の脅威を利用して議席増を狙う【A6面(国際面)】

衆議院選挙での安倍首相の圧勝の背景には、安倍首相が北朝鮮の脅威をうまく利用している側面もあるとする記事が、選挙日前日の21日の国際面に掲載された。



安倍首相にとって拉致被害者問題はライフワークであり、かつてその解決のために北朝鮮と粘り強く交渉し、未帰還拉致被害者の捜索開始について合意に至ったこともある。しかし、その後、その合意を北朝鮮がいとも簡単に、一方的に反故にしてしまった経験から、北朝鮮に対して強い不信感を持っているとしている。そのため、北朝鮮に対しては、強硬姿勢を貫くべきだと信じていて、国民の間に北朝鮮の脅威を煽り、彼への支持を取り付けようとしている。
一方、もともと北朝鮮に対して強硬姿勢を取るトランプ大統領は、この点で安倍首相と息が合っており11月の来日時には拉致被害者の家族と会う予定だとも報じている。
今回の選挙で安倍首相の圧勝が予測されている背景には、北朝鮮脅威をうまく利用した安倍首相の政治ショーが功を奏している側面があると言っている様に読める。

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日本の安倍首相は、日曜日に実施される総選挙で大勝する見通しだ。好調な経済、与党の混乱、そして北朝鮮の核計画の脅威などが、その要因としてあげられる。
トランプ大統領は、北朝鮮の金正恩主席の孤立を目論んでいるが、安倍氏の勝利は、トランプ大統領にとって、対北朝鮮戦略を達成するための信頼出来るなパートナーを維持する結果となる。金正恩の敵対的な態度が、安倍氏の安全保障戦略が信頼性を高めている。
日本の新聞3社が実施した最新の世論調査によれば、安倍首相率いる自民党主体の連立政権が、衆議院で2/3という「超過半数」を維持する見通しだ。2/3に達すれば、安倍首相は、憲法改正に向けた国民投票実施に向けた発議が可能となる。彼の憲法改正案の中には、第二次世界大戦での敗戦以降認められていなかった軍隊を持つ権利を保有するという案が含まれている。
北朝鮮問題は安倍氏の選挙演説の中で主要なテーマとなっている。安倍首相は、北朝鮮に対する強硬姿勢を貫くトランプ氏との密接な連携を前面に押し出しているが、そうした彼の政策が、幅広い指示を得ていることが反映されている。今週、ピューリサーチセンターが公表した世論調査結果によれば、106人の日本人が、北朝鮮の核による脅しに対して制裁を加えることに賛成している。
北朝鮮は、ここ数週間で何回か、日本上空を通過するミサイルを発射した。それ以外にもミサイル実験を繰り返し、更には核弾頭試験もおこなっており、こうした北朝鮮の動きは大きな脅威となっている。
「この選挙は、北朝鮮の脅威から日本を守り、幸せな暮らしを維持出来るかどうか、その選択の選挙なのです。」と安倍氏は今週の演説の中で指摘した。
1970年代、80年代に日本国民が北朝鮮に拉致されたが、安倍氏は前の首相の下で、拉致された国民の帰国について北朝鮮と交渉する役を任された。2002年に5人が帰国したが、日本は少なくとも10人の日本人が北朝鮮に拉致されたままだと主張している。
安倍氏は、2006年に初めて首相になった際に、拉致問題は優先順位の高い課題だと述べた。何回かの話し合いの後、日本と北朝鮮は、2014年に合意に至った。そのなかで、北朝鮮は残った行方不明者について捜索することを約束した。
北朝鮮は、この約束の実施をさんざん引き延ばした挙句に、北朝鮮の核実験に対する国際的な制裁を日本が支持していることを理由に、約束を反故にした。日本の政府関係者は、この問題が解決される可能性は極めて低いとしている。
北朝鮮と対峙することを心配している人々がいることは理解しています。しかし、彼らは20年以上続けてきた話し合いを反故にしてしまったのです。」と安倍首相は今週行われた演説の中で指摘した。
今年になって、核兵器の脅威が高まるにつれ、63才のリーダーはトランプ大統領との緊密な関係を構築した。トランプ大統領は、ハト派の文在寅よりも前に、まず安倍首相に助言を求めている。
トランプ大統領は、11月に日本を訪問する際に、拉致被害者の家族と面会する予定だ。
安倍首相の人気のもう1つの理由は経済だ。日本の経済は6四半期継続して成長しており、アベノミクスがうまく行っていることを示している。彼を批判する人々は、成長は弱く、消費者まで行き届いていないと指摘する。
安倍首相に反対する人達の中には、安倍首相が北朝鮮問題を不当に利用して、国民の間に脅威を煽り、任期完了前に総選挙に打って出たと批判する人もいる。
水曜日に安倍首相が東京駅前で演説を行った際には、安倍首相の辞任を求めるサインを掲げた国民の姿があった。
「安倍首相は、北朝鮮の脅威を誇張して伝え、権力に居座ろうとしている。」と69才のオコチムツミさんは言う。「北朝鮮の標的は米国だ。彼らは日本を攻撃しようとは考えていない。」

Friday, October 13, 2017

日本の総選挙での安倍首相の圧勝が予測される【A7面(国際面)】

「日本の報道機関各社の世論調査によれば、衆議院選挙で安倍首相が圧勝する。」という記事が、10月13日のWSJ国際面に掲載された。


自民党圧勝の予測を受け、株式市場はここ20年での最高値を更新するなど、経済に良い影響が出ているとし、自民党勝利への期待を滲ませている。一方で、こうした世論調査の結果発表は、浮動層の野党への投票を促す可能性があり、自民党にマイナスに働くかもしれないとして、警戒感も示している。

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日本の主要報道機関5社が公表した世論調査によれば、安倍首相は、東京都知事である小池百合子氏の挑戦を退け、10月22日の衆議院議員選挙に圧勝する見通した。
投資家は、5年近く継続した安倍内閣が更に継続することにより、政治的な混乱状態が避けられ、安定が維持されると見て、木曜日のこのニュースを歓迎した。日経平均は、水曜日にここ20年での最高値を付けたが、木曜日は更に0.35%上昇した。
共同通信、日経、読売、朝日、産経の5社が実施した世論調査は、全てが「安倍氏率いる与党である自民党が、衆議院の465議席の過半数を軽く超えるだろう。」と予測した。衆議院は、2院制のもう一つの議会である参議院より力を持っている。また、全ての世論調査が、自民党と公明党の連立政権が300議席近くを確保すると予測した。幾つかの調査は、連立政権が2/3の議席すら確保するとした。2/3は、衆議院で憲法改正の発議を行うのに必要な数だ。
小池氏の新党である希望の党は、衆議院で第2政党となる見通しだが、自民党から大きく離され、自民党に比べ100議席以上少ない議席確保に止まる、全ての調査が予測した。
SMBC日興証券のアナリストは、投資家への説明の中で、「世論調査の結果は、安倍首相が勝利するという市場の期待を確認するもので、金融市場がリスクを取ることへの追い風となるだろう。」と述べた。
しかしながら、アナリストはまた、こうした世論調査の結果は、候補者たちが守りを甘くしてしまい、自民党にマイナスに働く可能性もあり、また、希望の党には、党勢回復の勢いをもたらすかもしれないと注意を促している。世論調査によれば、多くの有権者が投票先を決めていない。自民党圧勝の予測は、こうした投票先を決めていない有権者が、議会のでバランスを確保するために、野党に投票することを促すことになるかもしれない。
もし自民党が議会で過半数を維持し、安倍首相が再選されれば、日銀の超金融緩和策を含むアベノミクスは継続されるだろう。日銀の黒田総裁の任期は来年4月に終わる。
総選挙の前の日本の新聞の伝統により、各世論調査は、数万人の有権者を対象にして行われ、どの程度の誤差の可能性があるかは公表されない。

Thursday, October 12, 2017

米海兵隊のヘリコプターが沖縄で墜落【A11面(国際面)】

10月11日、沖縄で、米軍ヘリコプターが訓練中、機内で火災が起き、緊急着陸のあと炎上したが、WSJはこのニュースを翌12日の国際面で速報した。



この事故が発生したのが、米軍訓練場の外であったことを含め、事実をコンパクトに伝えている。

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米国海兵隊のヘリコプターが、日本の南部の島である沖縄に緊急着陸した後に、炎に包まれた。
米軍の発表によれば、沖縄北部の米軍訓練場の外側で水曜日に起きたこの事故による
怪我人はいない模様。日本の公共放送であるNHKが放送した現場の模様からは、CH-35Eヘリコプターから煙と炎が上がっているのが分かる。
米軍によれば、火は鎮火されたが、事故の原因は調査中とのことだ。


Tuesday, October 10, 2017

衛星打上げ成功により日本は世界の最先端へ【A8面(国際面)】

1010日、日本は準天頂衛星みちびき4号の打上げに成功したが、WSJは同日の国際面でこのニュースを速報した。



日本はこの衛星による、高精度な位置情報を提供する「日本版GPS」の構築をめざしている。日本政府は表向きは「商用利用」だと言っているが、実際には「軍事利用」を視野に入れているとしている。具体的な利用事例として、北朝鮮のミサイル基地を攻撃するためのミサイルへの利用をあげている。

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最近の人工衛星の打上げによって、日本は、新しいテクノロジーの実現へ向けて前進した。例えば、自動運転の車をレーン内に維持したり、出前のドローンを日本のマッチ箱サイズの届け先に着地させたり、将来的には北朝鮮のミサイル基地を破壊するのを手伝ったりするためのテクノロジーだ。
火曜日の打上げは、日本で4回目の衛星測位衛星の打上げとなる。この打上げにより、日本は来年の4月には、米国がコントロールしているGPSの日本版の運用開始が可能になる。この測位ネットワークは、日本とその周辺地域をカバーすることになる。
新システムは、当面は米国のGPSシステムと併用する必要があるが、数年後に独立して機能することが可能になる。現状の測位システムが数メーターまでの正確性を達成しているのに対し、このシステムによりその精度は数センチレベルにまでにアップする
日本は、このサービスは、商用ユーザのために正確な位置情報を提供するものだとしている。新しいシステムでは、衛星測位衛星は日本のすぐ上を飛行する。日本の都市部では建物が密集しているために、現状の測位システムでは、高い建物にシグナルがブロックされてしまうことがあるが、こうした問題が解決される。
衛星測位システムは、配送用トラックの追跡に使われるなど、様々な国々の多くの経済にとってなくてはならないものとなっている。多くの国や地域が、自分たちの測位システムを開発してきた。
新しい欧州のシステムは、昨年末にサービス開始した。インドでは、昨年衛星を打ち上げたが、測位システムは2018に開始となる予定だ。中国では、自国のシステムが2020年に開始すると予測される。日本の衛星は準天頂衛星と呼ばれるもので、全世界のシステムの中で、最も正確なデータを提供可能だ。
日本のシステムは、当初は米国のGPSネットワークと連携して運用されるが、2023年頃に衛星の数が7つになった時に、独立して稼働出来る潜在力を持っている。
最も重要なメリットの1つは、自動運転車の開発にあるだろう、
幾つかの企業がその技術の開発のために努力している。その1つが、トヨタ向けの部品供給ナンバー1企業であるデンソーだ。デンソーは、6月に、日本政府と共同出資で、センチメートルレベルの正確性を持つ衛星測位システムの商用化に向けた新しいベンチャーを立ち上げると発表した。この技術により、農地や工事現場での無人自動車の運用が可能になる。
日本は、増大する北朝鮮からの脅威に直面して、軍備への制限を緩和しつつあるが、そうした中、日本政府はこの技術の軍事使用も検討している。
政府の国家宇宙政策委員会の安全保障分科会のメンバーである鈴木一人氏は、米国のシステムが破壊され使用出来なくなった場合に、日本のシステムはバックアップになるだろうと言う。
しかし、防衛専門家の何人かは、準天頂衛星により、日本は最終的に、自国の武器システムをより効果的にコントロール出来る様になるとみている。
日本は他国に依存せずに軍備を持つ能力を保有することになるだろう。」と東京にある防衛コンサルタント会社であるネクシアル・リサーチのランス・ガトリング氏は指摘する。
既存の衛星測位システムがよく使われている軍事システムとして、ミサイル誘導システムがあげられる。日本は、北朝鮮を攻撃するためのミサイルを保有していない。しかし、北朝鮮から攻撃を受けた場合、北朝鮮のミサイル基地に対して反撃する必要があるという、政治的な議論が高まってきており、日本政府は巡航ミサイルの購入を検討している。
7月北朝鮮は、日本上空に2発のミサイルを打ち上げたが、これにより脅威が高まっている。
攻撃するための軍事能力をもつことには、日本国内では賛否両論がある。日本は、第二次世界大戦後に戦争を放棄し、自国の防衛については日米の安全保障条約に頼ってきた。トランプ大統領になって、米国は、安倍首相が軍備への規制を緩和していることに、歓迎の意を表している。安倍首相になって、日本は、日本の同盟国が攻撃を受けた場合に、防衛国を援護するために参戦することが出来る様になった。
小野寺防衛大臣は、日本が北朝鮮のミサイル基地を攻撃する能力を持つべきだと強く主張している。
宇宙政策担当の日本の防衛相の高官は、防衛相は新衛星測位システムに関する情報を興味を持って収集しているが、それを使用するかどうかについては決定していないと述べた。


反権威主義者が日本のリーダーに挑戦状をつきつける【A8面(国際面)】

衆議院選挙公示日の1010日に、WSJは小池氏の政治スタンスを紹介する記事を掲載した。



小池氏は、2世議員や3世議員がはびこる癒着体質の自民党には任せられないとする一方で、外交政策や安全保障政策については安倍首相と考えが一致していると報じてする。最近の世論調査では、希望の党の支持率は13%伸び悩む一方で、安倍首相への支持率も下落傾向で、どちらも苦しい選挙を強いられているとしている。 

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日本の安倍首相を追い出そうという選挙運動を開始した女性は、微妙なバランスを保とうとしている。変化の顔となろうとする一方で、あまり多くの変化は約束しない。
昨年、初の女性都知事に選ばれた小池百合子氏は、先月安倍首相が解散初選挙を示唆すると、すぐに新党を立ち上げた。選挙戦は火曜日に公示され、投票は1022日に行われる。
希望の党が勝利すれば、日本の頑強な既得権益を打ち砕くことが出来ると小池氏は言う。日本では、多くの国会議員は、政治家の子供や孫だ。こうした状況が、特定の人達を優遇するような体質を生み出している。
「現状維持にこだわるのか、勇気を持って前に進みたいのか、そういうことが問われているでのす。」と月曜日のインタビューで彼女は語った。「企業グループに根差しているのか、国民に根差しているのか、違いはそこです。」
一方で、小池氏は、安倍氏の「北朝鮮に対する強硬政策」や「米国との緊密な連携政策」を維持することを、日本の選挙民に対して再確認しようとしている。数週間前に、北朝鮮は日本上空にテスト打上げ、安倍氏はトランプ大統領と強い連携を確認したばかりだ。
「外交政策と安全保障条約については、何の違いもありません。」と彼女は言う。
希望の党は、厳しい戦いを強いられている。日本経済はここ10程で、最も長い連続成長を続けている。株式市場は、ほぼ20年ぶりの最高値をつけている。
読売新聞が月曜日に行った世論調査によれば、有権者の32%が安倍首相の自民党を指示し、小池氏の党への指示は13%に止まっている。但し。多くの有権者が態度を決めていない。この調査の誤差がどの程度あるかは公表されていない。1ヶ月前によみうり新聞が行った同様の調査では、自民党が40%その時点での最大野党が5%だった。
3ヶ月前に、小池氏の勢力は、東京都議会選挙で、自民党に圧勝した。安倍首相は、政府が安倍首相の友人に便宜を図ったという疑い(安倍氏本人は、何も悪いことはしていないと主張しているが)に対する対応を誤ったことを認めた。
さらにもう一つ、安倍氏が弱くなったことを示す兆しがある。最近の読売新聞のでは、安倍首相への支持が46%、不支持が41%と僅差となった。前回の調査では、支持が50%で、不支持が39%だった。
小池氏の希望の党の紹介ビデオでは、彼女を馬鹿にする男性議員の前を、彼女がさっそうとハイヒールで通り抜けて行く。
彼女は、自身は衆議院選挙に出馬しないと言っている。従って、彼女は選挙に勝ったとしても。首相になることは出来ない。かようにが立候補するかどうかを決める最終期限だ。彼女は、首相として誰を指示するかについては、後で決定すると言っている。
こうした小池氏のスタンスを、安倍首相の側近である菅官房長官は厳しく批判している。「政党の責任は極めて重いということを考慮した時に、政党のリーダーが誰を首相に指名するのかについて発言しないというのは、理解しがたい。」

Tuesday, October 3, 2017

日本の選挙のドラマは、実際には安定をもたらす【A17面(国際面)】

WSJは、103日の国際面で、日本の衆議院選挙について「希望の党の出現など自民党に不利な展開になっている様に見えるが、実際には自民党の一党支配を更に強める結果となる。」とする逆説的な記事を掲載した。



要約すると以下の通り。:日本では、改革を主張する人は実はそれを隠れ蓑にして既存概念の強化を狙っている場合が多い。小池氏は、表向きは改革を主張しているが、実際に強化しようとしているのは、安倍首相が推し進める国家主義的な戦略だ。日本では、政党間の政策やイテオロギー論議が重要な意味も持ったことが無く、自民党内の派閥間の抗争の方がより重要な意味を持ってきた。小池氏の「希望の党」は、この意味で、西洋的な政党では無く、むしろ自民党の派閥がもう一つ出来たと理解すべきだ。従って、希望の党と自民党が幾ら争ったところで、誰が首相になったところで、最終的には自民党の一党支配強化につながる。そして、それは、日本の防衛体制が短期間で強化されることにつながり、地域社会にとっても世界にとっても良いことだ。

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日本は、世界の大国の中で最も過小評価されている国だが、常に最も穏やかな国でもある。自民党は1955年の結党以来、日本の政治を支配してきた。自民党は、連立相手である公明党と共に、衆参両院で2/3以上を支配している。
しかし、日本はいつも以上に、不安定に見える。安倍首相は、回復傾向の人気と野党の混乱に乗じて、先週、衆議院を解散し、1022日に総選挙を行うと発表した。それが、この不安定な状況の始まりだった。安倍首相の発表のすぐ後に、カリスマ性のある東京都知事である小池百合子氏によって、安倍氏の計画は大きく狂うこととなった。彼女は、「希望の党」を立ち上げ、全国的に候補者を擁立すると発表したのだ。小池氏率いる地域政党である「都民ファーストの会」とその連立政党は、どこからともなく突然現れ、東京都議会の127議席の内、2/3に近い議席をあっと言う間に確保してしまった
このドラマは、それだけに止まらなかった。国政レベルの最大野党である民進党が、驚くべき発表をしたのだ。衆議院の民進党は解党し、民進党の現衆議院議員は、次の選挙では希望の党からの公認で出馬することとしたのだ。これらの動きにより、突然、安倍首相の勝利は、もはや確実なものではなくなった。早期に選挙を行うという安倍首相の今回の決定を、イギリスのメイ首相のドタバタ劇に例えるコメンテーターも出てきた。
今の時点では、小池氏の影響が、どの程度まで彼女を押し上げるかは不明だ。自分自身が衆議院議員に立候補するためには、彼女は東京都知事を辞任しなくてはならない。国民の72%は、彼女は都知事の職を継続すべきだと言っている。いずれの道を選んだとしても、彼女は批判を浴びるだろう。枝野幸男氏は、小池氏が保守に偏り過ぎていると感じているリベラル派を取り込むため、新党を立ち上げる。この段階での世論調査は、引き続き安倍氏の勝利を予測している。しかし、また、自民党とその連立与党が、衆議院で2/3以上を維持するのは困難だとも予測している。
これは、大きな問題だ。それは、安倍首相の最大の目的を達成するためには、2/3以上が必要だからだ。安倍首相は、日本の参戦を禁じている1948年の憲法の改正を狙っているのだ。この憲法は、第二次世界大戦の際に米国が押し付けたものだが、それにより日本は、軍備を再構築することや、安倍首相の言う「普通の国」なることを、スピード感を持って行えなくなっている。

しかし、非常に保守的な日本においては、変化というのは、現状を守るための戦略に過ぎないことが多い。確かに、ある観点で言えば、小池氏は革新的な人物だ。前例の無い権力を掌握し、日本の女性に将来への希望を抱かせ、彼女が以前所属していた政党や、彼女の以前の庇護者に対する仕返しも果たした。しかし、外交政策について言えば、彼女は、安倍氏の国家主義的な考え方を共有している。安倍政権の初期段階において、彼女は防衛大臣の職につき、過激な発言や態度で評価を得た。彼女は、様々な議論のある靖国神社に定期的に訪問した。その神社は、第二次世界大戦の戦死者を祀っているが、そこにはA級戦犯も含まれている。彼女は、また、戦時中の日本の残虐行為に関する教科書の記述を修正する運動を支援している。
小池氏の突然の出現は、今までの政治を終わらせることとは程遠く、何十年も日本の政治を支配してきた基本的な政治モデルを強化することになるだろう。過去の60年間の殆どの期間において、日本は実質的に1党支配の国だった。自民党内の派閥間の抗争に比べれば、政党間の明らかな違いはあまり重要ではなかった。これらの派閥は、強大な力を持つ人物や政治的領袖と繋がっていた。派閥を隔てるものは、抽象的な政治の理想の違いでは無く、権益を求める産業界や政界のロビーストたちの違いだった。
小池氏の東京における「革命」は、実は多くの自民党の幹部に密かに指示されてきた。彼女の新党である「希望の党」は、西洋的な意味での野党ではなく、むしろ、伝統的な自民党内の派閥の1つの様に見える。小池氏が率いる候補者と安倍氏が率いる候補者は、選挙戦で戦うだろうが、どちらが勝っても、最終的には自民党を利することになるだろう。存在感のある最後の野党は、解体され、いまや自民党のもう一つの派閥とも言える政党のの1部になってしまったのだから。
確かに安倍氏は、この秋、彼が思っていたよりも厳しい選挙戦を戦うことになるだろう。しかし、彼の最も強力なライバルが、彼の考え方の多くを共有していると言う意味で、彼の成功をもたらずことにもなるだろう。日本は、中国からの激しい競争や、北朝鮮からの脅威に直面している。米国からの安全保障面での庇護も、以前程は確実なものではなくなって来ている。誰が首相になろうとも、世界は、日本の国家戦略や軍事姿勢が、早いスピードで進展していくことを望んでいる。