Thursday, April 7, 2016

安倍は不安定な労働市場に焦点を移す【A8面(国際面)】

安倍首相が、同一労働同一賃金の実現に向けて動き出したという記事が、4月7日の国際面に掲載された。



安倍首相はこれまで、企業の賃上げを重視してきたが、労働市場の2極分化にはあまり注意を払ってこなかったので、これは大きな政策転換だとしている。

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マツシタ・ケイさん(32)の苦労は、安倍晋三首相が労働市場に目を向ける理由だけでなく、労働市場が日本経済の足かせになっている状況を浮き彫りにしている。

  マツシタさんは同世代の多くの人と同じように結婚して、子どもをもうけようと思っている。つまり、安倍氏が推進する「一億総活躍社会」の市民の1人になろうと考えているのだ。ただ、マツシタさんはまだ両親と一緒に住んでいる。

  2007年に経済学の学位を取得したマツシタさんは、卒業以来、一度も正社員の職に就いたことがない。いまや有望な正社員候補ではなく、一生賃金の低い非正規社員のままかもしれないという未来に直面している。

  安倍氏の経済政策「アベノミクス」が打ち出されてから3年。ただ、成長率と物価上昇率がともにゼロ近辺にとどまるなど、アベノミクスは行き詰まり感を示している。この主な原因となっているのが労働市場だ。ここを起点に一連の本質的な問題―賃金上昇率の鈍さ、生産性と投資の低さ、そして未婚率の高さと出生率の低さ―が生まれている。

  安倍氏は今週、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)とのインタビューで「働き方の改革は次の3年の最大のチャレンジになると思う」とし、「(労働市場の改革が)日本が持続的に成長していく鍵になるだろうと思っている」と語った。

  安倍氏は非正規で働く労働者の賃上げ幅を拡大させ、「同一労働同一賃金」の実現を目指すと述べた。同氏は仕事と子育て・介護を両立させなければならない、女性を中心とした労働者の支援を積極化させている。こうしたイニシアチブには保育所や介護施設の数を増やし、育児休業を取得しやすくするといった対策が含まれる。

  1990年代のバブル崩壊以降、企業はより柔軟に雇用や解雇ができる方法を模索し、これが非正規社員への依存を強めるようになった。過剰な生産能力と負債を抱えた「日本株式会社」は人員をカットするか賃金をカットするかという選択に直面し、後者を選んだ。ここに映し出されているのは、日本の大企業は雇用を保障する責任を持つ「公共機関」だという見方だ。

正社員を保護することで非正規社員が拡大した。事業環境が悪化した時に解雇しやすい労働者の雇用を企業が増やしたためだ。

  現在も正社員には実質的な終身雇用が保障されている。いまや非管理職従業員の38%を占める非正規労働者は、正社員と同じ仕事をしていても、正社員よりはるかに低い賃金しかもらえない。非正規社員は正式な訓練をほとんど受けず、労働組合の保護をあまり受けられず、配属が頻繁に変わり、正社員によって昇進の道がふさがれている。

  「オリエンタル・エコノミスト・リポート」のリチャード・カッツ編集長は、「非正規の仕事にしか就けなければ、30代になるころには魅力的な従業員ではなくなる」と話した。

  これはマツシタさんが置かれている状況だ。同氏は「日本では新卒カードが強い。そこで失敗すると非正規に甘んじることになる」と話した。

  経済協力開発機構(OECD)経済局の日本・韓国課長で、チーフエコノミストのランダル・ジョーンズ氏は、労働市場の二極化を改革することが、日本にとって最も重要な課題のひとつだと指摘。これは労働生産性にとっての大きな障害で、現在の日本の潜在成長率を非常に低くしている主因だと述べた。OECD加盟国の中で、日本の労働生産性は下位に位置している。

  ジョーンズ氏によると、正社員を手厚く保護することで有望企業への人材や資金の流れが制限されている。そして、必要な人材確保ができないため、革新的な新興企業はベンチャー資金を呼び込むのに苦戦しているという。

  安倍氏はかねてから賃上げの重要性を強調してきたが、当初は労働市場の二極化にあまり注意を払ってこなかった。むしろ、企業の利益を押し上げて賃上げを促す金融緩和などの政策に重点を置いていた。ただ今年は、日本銀行によるマイナス金利導入にかかわらず景気低迷が続くなか、安倍氏は政策の方向を転換させた。

  安倍氏の指示で招集された専門家による検討会が3月にスタートした。ここでは労働市場が賃金に与える影響が審議されるほか、必要な労働法の改正についての進言がまとめられる。安倍内閣は5月にも同一賃金の実現に向けたガイドラインを明らかにする見通しだ。

  一方、多くの人が抜本改革の実現に懐疑的だ。かねてからビジネス界の幹部らは正社員を解雇しやすくするべきだと主張してきたが、安倍氏の同一賃金へのこだわりには警戒感を示す。同一賃金は現在の法律ですでに求められているが、実施されることはまれだ。

  経済同友会の雇用・労働市場委員会を率いる橘・フクシマ・咲江氏は、「正社員が最も良くて企業は決して誰も解雇すべきではない」など、日本は労働と労使関係について心の持ち方を変える必要があると指摘した。

アメリカの東アジアでの安い買い物【A14面(社説)】

WSJは日米同盟がアメリカ国民に大きな利益をもたらしているという主張を、47日の社説で掲げた。



トランプ氏が、日米同盟によって米国は日本の面倒をみているが、米国民はその見返りとして何も得ていないとして、日米安全保障条約の破棄を訴えているが、日本は、多額の金銭と政治的犠牲(安倍首相が、国民の反対を押し切って、安全保障関連法を成立させ、施行された。)を払っており、米国民は十分な見返りを得ていると主張している。また、日韓同盟についても同様だとしている。
(WSJ日本語版に同じ記事が掲載されていたので、以下に掲載させて頂きました。)

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日本で先週、集団自衛権の限定行使などを可能にする安全保障関連法が施行された。これにより、たとえ日本が標的とされていない場合でも、米軍が攻撃を受ければ日本の自衛隊が防衛で協力することができるようになった。これは、共和党の大統領候補指名争いでトップを走るドナルド・トランプ氏が米国の同盟諸国を非難し、西太平洋からの米軍撤退を提案する際に見落としている重要な事実のひとつである。

 トランプ氏は先月、米国は日本と韓国の「面倒をみているが、(その見返りとして)何も得ていない」と発言した。同氏は米国が日韓両国とそれぞれに締結している安全保障に関する条約の再交渉もしくは破棄を訴えている。これらの条約は5万人規模の在日米軍と28000人規模の在韓米軍を配備する根拠となっている。

 だが、これらの条約は一方的なわけでも、米国が負担しきれない取り決めでもない。日本と韓国は現在、駐留米軍経費の半分近くを負担している。年間で日本は約20億ドル、韓国は約9億ドルだ。仮に日韓から駐留米軍が撤退すれば、米国の納税者の負担は増えるだろう。しかも、壊滅的な戦争が起きてきた地域の平和と繁栄を数十年間にわたって持続させてきた価値を抜きにしてだ。

太平洋における米軍の4大建設プロジェクトは日韓両国が300億ドル超を負担しているため、米国の納税者の負担はわずか70億ドルに過ぎない。トランプ氏は建設に関わる人間として、そのことを知れば関心を持つかもしれない。米太平洋軍の20154月の記録によると、韓国のキャンプ・ハンフリーズ(韓国平澤市)では2017年までに在韓米軍のほぼすべてを集約させるために拡張工事が進められているが、110億ドル近くに上る建設費用の93%を韓国側が負担している。 

 日本は岩国の米海兵隊航空基地の必要経費約50億ドルのうち94%を負担しているほか、普天間基地の移転にかかる約120億ドルを全額負担している。日本はさらに、米領グアム島の新基地に必要な経費30億ドルの36%をあらたに負担している。

 韓国は国内総生産(GDP)の約2.5%を防衛費に充てている。米国の3.5%を下回るものの、GDP比で世界トップ10に入る。徴兵制を採用している韓国軍は北朝鮮の核兵器や長距離ミサイルを阻止するための最前線に立っている。冷戦時代、日本は西側諸国にとって、太平洋を潜航するソ連の潜水艦に対する防衛の要だった。今日では、東アジアにおける中国の台頭に対抗するうえで重要な砦(とりで)となっている。

 GDP1%という防衛費はあまりに少ないが、日本は4年連続で防衛予算を増やしている。改革論者の安倍晋三首相は米国、東南アジア、オーストラリア、インドとの関係を築いてきた。これがなければ中国は地域の覇権を楽に掌握することになろう。

 多大な政治的犠牲を払ったうえで、安倍政権は憲法解釈を変更し、集団的自衛権の限定行使を可能にする新たな法律の施行に道を開いた。日本は今や、北朝鮮のミサイルから米国を守ることができる。南シナ海で米軍の艦船がパトロールを行っている際には、中国の政策立案者らは常に日本の海上自衛隊のことも念頭に置かなければならなくなった。

 安倍首相とシンガポールのリー・シェンロン首相はここ数日の間に、アジアにおける米国の役割を称賛し、近視眼的な撤退がもたらすダメージについて警告した。米国民はこれらの国がフリーライダー(ただ乗りする人)ではないことと、アジアでの前方展開が米国の安全保障にとって重要であることを理解しなくてはならない。



Wednesday, April 6, 2016

安倍は米日軍事同盟を擁護【A16面(国際面)】

WSJ45日に行った安倍首相への単独インタビューの記事が、翌6日の国際面に掲載された。



米大統領選で、トランプ氏が在日米軍撤退の可能性に言及し、共和・民主両党の有力候補がTPPを批判する中、安倍首相は日米同盟を強く擁護し、TPPを推進する方針を示したとしている。記事の最後には、アベノミクスの効果に疑問を示し、伊勢志摩サミットにおいて新たな財政支出を提案するのではないかと予測している。
(WSJ日本語版に同じ記事が掲載されていたので、以下に掲載させて頂きました。)

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 安倍晋三首相は5日、米大統領選で日米安全保障条約に対して疑問が呈される中、日米同盟を強く擁護し、「ナショナリズムをあらわにした行動」をけん制した。

 安倍首相はウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)との1時間のインタビューに応じ、米国をはじめとする先進国は既存の貿易協定を支持すべきだとし、環太平洋経済連携協定(TPP)を推進する方針を表明した。TPPをめぐっては、米大統領選で民主・共和両党の候補が米国にとって不利益な協定だと批判している。

 共和党候補指名争いでトップを走るドナルド・トランプ氏が在日米軍撤退の可能性に言及したが、安倍首相は米軍が撤退し日本を自衛に委ねることができるかとの問いに、「今、予見しうるなかにおいて、米国のプレゼンスが必要ではないという状況は考えられない」と明言した。

 さらに、日本が米国と共に海外で武力行使することを容易にする安全保障関連法について、「日米同盟が強化されることで抑止力が強化され、それは日本のみならず地域の平和と安定に貢献」すると語った。

 米国のアジア地域における軍事政策の根幹を成してきた日米同盟をトランプ氏が疑問視していることなどから、今年の大統領選では日本などアジア諸国が異例の注目を集めている。共和党の各候補に加え、民主党候補のヒラリー・クリントン前国務長官とバーニー・サンダース上院議員もTPPを批判している。同協定は昨秋合意に至ったが、米議会ではまだ批准されていない。

 安倍首相は「TPPによって、世界のGDP(=国内総生産)の4割の経済圏が生まれ、自由で公正なルールによって守られた経済圏ができる」とし、「それによって米国、日本、TPPに参加した国々は大きな利益を得て、成長の可能性を得ることができる」と前向きな見方を示した。

首相は各米大統領候補の発言についてコメントすることは控えた。ただ、米国の国益を最優先する必要があると主張するトランプ氏の見方には幾度か間接的に触れる場面があった。トランプ氏は北大西洋条約機構(NATO)などの同盟の米国一般市民に対する恩恵を疑問視しており、最近の遊説では、米国は同盟国に「食い物にされている」と非難。「それに米国がどう対処しているのかといえば、何もしていない」と発言した。日本については「自国のことは自国で対応させなければならない」と述べていた。

米国は日本に約5万人の米軍を駐留させている。目下、米軍が抑止力の対象としているのは拡大を続ける中国の軍事力だ。周辺諸国が領有権を主張する南シナ海で中国は人工島を建設するなど実効支配を強めているが、安倍首相は中国政府が建設を中止すべきであるとあらためて表明した。

 日本は5月下旬に主要7カ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)で議長国を務める。安倍首相はこのサミットが「ナショナリズムをあらわにした行動」を抑制するリーダーシップを発揮する機会となると述べた。また、各国はインフラ投資を拡大することで経済面の懸念に対応できるとの見方も示した。

 米国では賃金上昇の鈍さや、大統領選候補者が超富裕層に恩恵が偏っていると指摘するなど経済に対する有権者の怒りが強まっているが、安倍首相は日本国内でもこれに似た状況に直面していると述べた。首相に就任した201212月には、成長の後押しを図る経済政策「アベノミクス」を打ち出し、日本を過去20年の景気停滞から脱却させ力強い成長を促すと公約した。

 だが日本経済は過去3四半期のうち2四半期でマイナス成長となり、2015年の実質国内総生産(GDP)は0.5%増にとどまった。実質賃金は4年連続で減少した。日銀は今年、マイナス金利を導入したが効果は上がっていない。

5日の外国為替市場では円がドルに対し1410月以来の高値に上昇。これを受けて日経平均株価は前日比2.4%安となった。最近まで、企業利益が過去最高に拡大する一助となった円安はアベノミクスの数少ない実績の一つと見られていた。

 さらに、安倍首相はデフレからの脱却を約束しているが、最近の全国消費者物価指数(CPI)は生鮮食品を除く総合指数が前年比ゼロ近辺で推移しており、その達成が依然として遠いことを示唆している。

 安倍首相はアベノミクスを擁護し、成功の途上にあると述べた。トヨタ自動車のベースアップ(ベア)水準が低くなったことを認めつつも、雇用市場の力強さに加え、今春は中小企業の賃金が伸びたと指摘した。

 また、このところの国内景気の低迷は海外動向に起因するとの見方を示し、米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを開始したことにも言及した。

 「中国経済、景気減速への懸念、原油価格の下落や米国の利上げ動向など」により、「市場が大きく動いていて、日本の市場も大きく変動している」と説明し、こうした中で「日本の経済のファンダメンタルズはしっかりしている」と評価した。

 ただ、エコノミストの間では今年、日銀の追加緩和と安倍政権による景気刺激策の強化が広く予想されている。安倍首相は、「先進国でも古いインフラのリハビリや、あるいは環境重視型の投資やインフラ導入が求められている」として、G7首脳会議で日本が新たな財政出動を提案し、他の先進国にも同様の措置を促す可能性を示唆した。


Monday, April 4, 2016

日本の弁護士は嘆く。十分な訴訟が無い。【A6面(国際面)】

日本で弁護士が余っていて、貧困にあえぐ弁護士も出ているという記事が、44日の国際面に掲載された。


  
日本は法科大学院制度導入によって、弁護士を大幅に増やした。バブル崩壊時の教訓から、企業の不正行為等の社会問題の解決にもっと司法制度を利用してもらうためには、弁護士の数を増やす必要があるということだった。しかし、日本人が元来訴訟嫌いのため、思った通りに訴訟が増えない。さらに、社会問題の解決には長い年月と巨額の費用がかかるにも関わらず弁護士報酬が安いこと、ディスカバリーの無い裁判制度が企業と戦うには不利であること等、司法が社会問題の解決に活躍するための裁判制度が出来ていないことも、訴訟が増えない原因だとしている。

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「日本はちょっとあり得ない問題に苦労している。その問題とは、国民が十分に訴訟好きではないということだ。」
15年前、日本は弁護士の数を倍にする計画を開始した。役人たちは、西洋の司法制度をまねることにより、社会にダイナミズムを吹き込もうとした。西洋の司法制度では、裁判所は消費者の安全や企業の不正行為の解決に、日本より多く関与している。」
「しかし、日本の新しい弁護士は、何故彼らが必要とされているかという議論に勝つことに、成功していない。通常の民事裁判の数は、この10年全く変化が見られないのだ。犯罪がほぼ史上最低で、倒産も減少し、多くの弁護士は貧困にあえいでいる。」
「生活はどんどん苦しくなっています。それは間違いありません。」大阪でパートナーと共に弁護士事務所を営むサカノシンイチは言う。」
「弁護士協会のデータによれば、個人弁護士の平均収入は、2006年の1,750万円から、2104年には9百万円(約80,000ドル)へ減少した。」
「法科大学院への志願者はピークの7分の1に減少した。日本の新学期は月曜日に開始したが、法科大学院は、現在のシステムが2004年に開始して以来、最低の新入生を受け入れることになる。」
「『法律関係の仕事をする人は少なくなっている。特に優秀な人が少なくなっている。』と広島高等裁判所の元所長のフジタコウゾウは言う。『これは深刻な問題だ。』」
「日本の司法システムの再構築の動きは、1990年初期に株式市場や不動産のバブルが崩壊した時に遡る。バブルの崩壊の原因の一部は、曖昧な規制や、うさんくない企業活動にあるとされた。これを受けて日本は、市場に根差したアプローチ、ルールに基づいたアプローチを指向しようとした。」
2001年に政府の委員会は、米国スタイルのロースクールの確立を進言した。委員会は、司法関係の職業、つまり、弁護士、判事、裁判官の数を、当時の20,000人から、2018年までに50,000人に増やすことを要求した。」
「この計画は実行に移され、3年プログラムを提供する多くの法科大学院が誕生した。毎年新たに誕生する個人弁護士の数は、それまでの倍の2,000人となり、弁護士の数は2000年の17,000人から37,000人に増加した。」
「こうして新しい弁護士が誕生したものの、国民一人当たりの弁護士の数は、米国や欧州主要国に比べて少ない。」
「サカノ氏は、制度の変革は、法科大学院のモデルとなったアメリカとの文化の違いを無視して行われたと言う。」
「『米国の様な多民族国家で機能するシステムが日本に合っているとは限らない。』と彼は言う。『日本人は、もっと非公式なやり方での紛争の解決を好む。例えば、当事者間での個人的な交渉などだ。』」
「日本人が裁判所へ行きたいと考えたとしても、裁判制度が障害となる。日本では、勝訴したとしても、原告や弁護士に支払われる金額は米国に比べて少ない。日本には成功報酬とかクラスアクション(集団訴訟)の制度が無い。今年導入される予定ではあるが。」
「サカノ氏は、団子の中に認可されていない薬品を入れて日本全国で販売していた企業の幹部に対する訴訟で勝訴した。しかし、8年にもわたる訴訟に対して支払われた弁護士費用は$700,000に過ぎない。その報酬は10人もの弁護士でシェアしなければならない。」
「更に、勝訴するためには、更に高いハードルを越えねばならない。日本の法律はディスカバリーの概念(訴訟相手に文書や情報を開示させること。)を持っていない。従って訴訟した人にとっては、犯罪の証拠を見つけることがより難しい。」
「増加している訴訟は、離婚、子供の養育、相続などの家族に関する民事訴訟だ。増加ししている訴訟のもう一つの例は、痴呆に侵された高齢者の看護に関する訴訟だ。日本では、4人に1人が65才以上だ。」
「困難な状況は、特に新しい弁護士の間で顕著だとカワナカヒロシは言う。彼は、日本弁護士協会の副会長として2002年に弁護士を増やすキャンペーンを主導した。彼は、弁護士を増やすスピードが多分早すぎたと言う。」
「大阪の弁護士であるサカノ氏は、楽観視していないと言う。日本は高齢化社会に向かっているが、高齢者は訴訟が嫌いだからだ。」


Saturday, April 2, 2016

日本と米国がウラニウムについての合意を発表【A9面(国際面)】

日本とアメリカは4月1日アメリカ・ワシントンで行われた核安全保障サミットの傍らで、日本の研究用濃縮ウランの日本国外搬送について発表したが、WSJはこの発表について翌日の国際面で速報した。


既に一部の核燃料が日本から搬出されたこと、サウスカロライナ州知事がその受け入れを拒否していること、こうした搬出が核燃料がテロ組織に渡ることを防ぐために必要であることなどを簡潔に報じている。

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「アメリカと日本は核兵器に転用可能な核物質を日本の研究機関から米国へ輸送する計画を明らかにした。これは、悪意を持った国やテロリスト集団がそういった物質を入手することを防ぐ努力の一環だ。」
「既に日米両国は、高濃縮ウラニウムと分離されたプルトニウムについて、2つの施設のうちの1つから除去する作業を完了した。米国エネルギー省の発表によれば数百キロの物資を積んだ船が米国に向けて出港した。同省によれば、これだけ大量の核兵器に転用可能な物資が国を越えて輸送された例は無いという。」
「日本は、安全保障上の理由から、この荷物の行き先を明かさなかった。サウスカロライナ州のニッキヘイリー知事は、先月、日本から彼女の州に向う物資のルート変更をエネルギー省に強く求めた。」
「この2国間プロジェクトは、オバマ大統領と安倍晋三首相によって、金曜日に核セキュリティーサミットの席で明らかにされた。これは、核兵器転用可能な物資の保有を最小化させようとする米国政府の努力を示すものだ。」
「多くの国々が核兵器転用可能な物資の保有量を縮小してきた。これは米国の努力によるものでもある。しかし一方で、北朝鮮、イラン、その他の核兵器保有に意欲を示す国々がそのような物資を蓄積させることについての懸念も高まっている。米国当局は、その様な危険物資がイスラム国の様なテロ集団に渡ることについての懸念を強めている。」

サミットは核の危険を指摘【A9面(国際面)】

41日に閉幕した核安全保障サミットの結果について、翌12日の国際面で速報した。その中で、オバマ大統領が、「日本に蓄積されていた核物質の安全な場所への移送完了について強調したこと」、「日本が核武装化すべきというトランプ氏の発言を批判したこと」について報道している。


核安全保障サミットでオバマ大統領の隣に安倍首相が座っている写真も大きく掲載しており、今回のサミットで日本に関する話題が多かったことを物語っている。記事の後半では、イランへの経済経済制裁解除についても取り上げている。

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「オバマ大統領は彼にとって最後となる国際核安全保障サミットを終えた。彼は大統領就任直後から、テロリストや極悪国家が核兵器や核物質を入手しない様に精力的に取り組んできたが、この問題についての彼の評価は分かれることになるだろう。」
50名以上の世界の首脳が集まったこの会議の締めくくりにおいて、オバマ大統領は、アメリカ、日本、ロシアなどの国々が大量の核物質を集めて、安全な場所に移送することに成功したと述べた。」
「サミットの最後にオバマ大統領は記者団に対し『テロリストや犯罪者や武器商人が核装置の材料を求めて走り回っている。彼らは、世界の多くの地域に入れなくなっており、これは大きな成果だ。』と述べた。」
「彼は更に『しかし、この仕事はいかなる意味においてもまだ完了していない。』と付け加えた。」
「また、オバマ氏は、彼の政府が数日内に実施を予定しているイランでのドル取引の容認についても擁護する立場を明確にしたと、金曜日に米国政府高官は語った。そうした動きが、イランの国際取引再開に向けた障害を取り除くことになるだろう。」
「オバマ氏によれば、数人のリーダーが、今週、共和党の大統領有力候補であるドナルドトランプ氏が行った発言について、質問した。彼は、日本、韓国といった友好国は核兵器を保有すべきだとした。この発言は、アメリカが50年以上にわたって守り続けてきた核政策と相いれないものである。」
「トランプ氏はまた、欧州での核兵器の使用を禁止することについても反対している。」
「トランプ氏の発言は、オバマ大統領から攻撃的な発言を引き出した。オバマ氏は『こんなことを言う人物は外交や核政策、朝鮮半島や世界全体の情勢がよく分かっていない。』と述べた。」
「彼は、長期にわたる米国の核政策が、第二次世界大戦以降、歴史的にも大きな紛争を経験したこの地域で、核開発競争が起きるのを防いできたと述べた。」
「オバマ氏は『どうか混乱しないで欲しい。この重要性も理解できない者は、ホワイトハウスの執務室で働いて欲しくない。』と述べた。」
「今回のサミットはテロリスト集団への脅威が高まる中で行われた。イスラム国の様なテロ集団は核物質を探しており、そうした物質を人口が密集している都市部における大惨事を引き起こすために使おうとしている。」
「オバマ大統領は2009年の大統領就任時に、核不拡散の取組について、その概要を述べたが、その時には北朝鮮とイラクが最も大きい二つの課題だった。」
「オバマ氏はイランとの核に関する合意に成功したが、この合意が今後10年間どのように進展していくのかについては、よく見えていない。」
「更に、北朝鮮については、大統領就任後、むしろその核能力が増強した。北朝鮮は金曜日に再びミサイルテストを実施した。これは、オバマ大統領が、日中韓首脳と北朝鮮の核武装について議論をした数時間後に行われたものだ。」
「中国は北朝鮮に影響力を持っているとみられている限られた国の一つだが、アメリカが中国による北朝鮮に対する強い圧力について、中国政府から確約を得たのはつい最近のことだ。中国は、今年初めの北朝鮮の核兵器試験への対抗措置としての、新たな国際制裁について同意した。」
「オバマ大統領は昨年、経済制裁の緩和と引き換えにイランの核武装の野望を取り除くという取組みを行った。この取組については賛否両論があり、彼は新たな攻撃に直面している。」
「オバマ政府はイランのドル取引再開を支援しているが、反対派はオバマ氏はイランに対して弱腰だとして批判している。共和党員は、ホワイトハウスに対し、イランにドルにアクセスさせない様に求めている。また、民主党員の一部でさえ、新たな譲歩を引き出せない限り、この政策は間違いだと言っている。」
「一方でイラン高官は、約束された経済緩和では、契約合意事項を十分に実施したことにならないと不満を表明している。」
「オバマ氏は、金曜日の演説の中で、イランがその核プログラムを縮小させるという義務を果たすために、実のある前進を続けていると述べた。」
「『イランが彼らの義務を果たしているわけだから、世界の国々も協約におけるそれぞれの義務を果たすことが重要だ。』と、オバマ氏は演説の後で述べた。」
「オバマ氏はイランがテストを行えばそれは核合意の精神に触れることになるだろうと述べた。」

「一方、ロシアはこのサミットをボイコットした。イランの核合意についてのミーティングにのみ担当者を出席させた。」

Friday, April 1, 2016

アメリカの同盟国は北朝鮮の脅威に焦点を合わす【A6面(国際面)】

331日に米ワシントンで開幕した核安全保障サミットに先立って、日米韓首脳会談などが行われたことを、翌日の国際面で速報した。




共和党大統領候補であるトランプ氏が日韓の核武装を認める発言をしているが、日米韓会談においては、その点については触れられなかったとしている。また、オバマ大統領は早い段階から核不拡散に取り組んできたが、ここにきて北朝鮮が核武装の動きを強めていることから、彼の政策の成否については意見が分かれることになるだろうとしている。米中、米仏の会談が行われたことにも、言及している。

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「オバマ大統領はアメリカとその同盟国に北朝鮮の核の恐怖に一緒に立ち向かおうと呼びかけた。50 ヶ国を越える国々のリーダーがここワシントンに集まって、核の拡散を防ぐための2日間のサミットに参加している。」
「オバマ大統領は、木曜日に、サミットの開始に当たって、中国の習近平主席と会談し、米中両国は朝鮮半島の非核化にコミットしていると述べた。」
「北朝鮮からの挑発行為の増加は、この核安全保障会議でのメインのテーマとなっている。この会議のもう一つのメインテーマは、イスラム国等のテロ集団が核兵器や放射性物質を狙っていることだ。」
「オバマ大統領は、韓国の朴槿恵大統領、日本の安倍晋三首相とも会い、地域の平和と安定を守り、北朝鮮の行為による核の拡散を防ぐためには安全保障面での協力が不可欠だと述べた。」
2016年の大統領選挙でも核の拡散がテーマになっている。共和党の有力候補であるドナルドトランプは、韓国、日本などのアメリカの同盟国は自由に核兵器を持っても良いと述べた。こうした立場は、長い間のアメリカの政策とは相いれないものだ。」
「共和党におけるトランプ氏の有力な対抗馬であるテッドクルーズテキサス州知事はこの発言に異を唱える。木曜日にクルーズ氏は『核拡散は、仮に我々の同盟国においてであっても、好ましい政策ではない。』と述べた。」
「ホワイトハウス高官によれば、トランプ氏の提案は、オバマ大統領と日韓首脳のミーティングの中では取り上げられられなかった。国家安全副顧問のベンロードは、トランプ氏の発言は、何十年にもおよぶ超党派での安全保障ドクトリンに真っ向から対立するものだと述べた。」
「核の拡散を縮小させることは、オバマ大統領が外交政策の中で早い段階から取り組んできたことだ。しかしながら、彼のこうした努力は、最近大きな試練に直面しており、このままでは彼がこの問題で良い仕事をしたかどうかについては意見が分かれることになるだろう。」
「彼は昨年イランとの間で、経済的制裁の解除と交換に核プログラムを縮小することを目指す、歴史的な合意にこぎつけた。しかし、その合意については様々な意見があり、将来共和党政府が出来たらひっくり返されることもあり得る。」
「一方で、北朝鮮の脅威は最近の数発のミサイルテストによって増加した。さらに、かつては、世界レベルで核兵器の削減を行うための重要なパートナーと見られていたロシアが、ここ数年のアメリカとの関係悪化により、このサミットをボイコットしている。」
「ホワイトハウスの高官はオバマ大統領の習主席との会談は、北朝鮮に対峙するために重要だと述べた。中国は北朝鮮のリーダへもっとも影響力を及ぼすことが出来るからだ。」
「会談に先立ち、12月にパリで190ヶ国により合意に至った気候協定(パリ協定)に米中両国が422日にサインすると発表した。オバマ政府の高官はこの動きは他の国々にも、正式にこの協定に参加し二酸化炭素削減のために前進することを促すことになるだろうと述べた。」
「今回の核安全保障サミットは来年1月に大統領任期が完了するオバマ大統領にとっては最後のものになるが、核拡散問題を主要議題とする一方で、金曜日の議論はテロの脅威に大きく影響を受けそうだ。」
「オバマ氏は、世界の国々のリーダーとの打合せの冒頭で、イスラム国の軍隊が核兵器またはいわゆるダーティボム(使用後に周辺への放射能汚染をともなう爆弾)を作るための放射性物質を入手して、それらを攻撃に使用することへの懸念を表明することを計画している。」
「イスラム国のテロによりブリュッセルで32人が死亡し、300人以上が負傷してから数週間が経過したばかりだ。また、11月にはパリでも悲惨なテロが起きている。」

「オバマ大統領は、フランスのフランソワオランド大統領とも面会した。その席で、オランド大統領が欧州でのとのテロ組織との戦いにおいて、EUを奮い立たせたことを称賛した。」