Saturday, March 15, 2014

幹細胞の論文は重大な誤りを含んでいると研究所は言う【A14面(国際面)】

理研の中間報告の記者会見について、国際面の小さな囲み記事で報じている。

この事件へのあまりの感心の高さに困惑する理研の姿を淡々と報じている。「記者会見での理研のトーンは『自分達は被害者で、悪いのは小保方氏。』と言っている様に感じた。」と暗に言っている様に思うがどうだろうか。短い記事なので全文を掲載する。

「ある日本の研究機関は、非常に注目を浴びている幹細胞に関する2つの論文についての論争に巻き込まれて混乱しているが、その研究に『重大な誤り』があったとして、謝罪した。」
「理化学研究所の野依良治理事長は、東京で行われた満員の記者会見の冒頭で、深く
頭を下げた。その上で、同研究所は論文を取り下げるか否か調査中であると述べた。その論文は、幹細胞の生成に関する新しい方法を提示したかにみえた。」
「野依博士は、30才の筆頭著作者である小保方晴子氏について、『未熟』で『ずさん』と指摘した。」

同じ経済紙である日本経済新聞でも、この記事は、ここ数日一面で扱われている。

ところで、ウォールストリートジャーナルでは、マレーシア航空機失踪事件が、発生以来連日、一面で扱われている。北京から「中国人搭乗者の家族の様子」について、クアラルンプルから「機長の人物像」について、ニューデリーから「インド洋での捜索状況の詳細」について等、同紙の取材に基づく各地からの詳細な状況を連日多くのスペースを割いて掲載している。
海外で起きた惨事に関する米国紙の丁寧な報道と、米国当局の対応の早さ(偵察機やFBIを派遣して、捜査に協力している。)そして募金活動等自分で出来る支援活動に迅速に動く米国民暖かい対応にはいつも感心させられる。
日本では、マスコミも政府当局も、そして私を含む国民も、海外で起きた悲惨な事故への感心が、米国に比べると低い様に感じる。


Thursday, March 13, 2014

日本企業は賃上げを誓う【A8面(国際面)】

国際面で日本の大手企業がベア実施に動いていることを報じている。

まず、大手企業が、安倍首相の要求に応えて、ベア実施に踏み切ったことを報じる。
「手元に豊富なキャッシュを抱える自動車メーカーが先陣を切り、日本の多くの主要企業が12日、相次いでベースアップ(ベア)実施を発表した。ベア実施は世界的な金融危機以来初めてで、安倍晋三首相が掲げるデフレ脱却のための政策を支えることになろう。」

しかし、中小企業には、安倍首相の要求に応える余裕は無い。
「だが安倍首相にはまだ口説かなければならない相手がいる。茨城県日立で操業する関プレスの関正克社長のような経営者だ。トヨタ自動車や日立製作所などがベア実施を発表した一方で、従業員85人のこの精密プレス専門メーカーは賃上げを行わない予定だという。」
「関社長は『賃金は大事だ。よくわかっている。』としたうえで、『だけど、実際に売り上げや利益、収益が伸びたときにしか上げることができない。』と話す。」

大手企業、中小企業の対応を説明した後、もう一度安倍首相及びそれを支える大手企業の見解をまとめる。
「安倍首相は昨年、下がり続ける物価と上がらない給料に悩み、企業経営者に賃金の引き上げを訴えた。これは企業寄りの政策で知られる自民党の政治家として驚くべき行動だった。」
「トヨタ自動車で総務・人事を担当する宮崎直樹専務役員は12日、4月から始まる新年度の賃金がベアと定期昇給で2.9%増える賃上げを発表した際、『経済の好循環に向けて果たすべき役割がある。』としたうえで、『賃金引き上げの流れが各方面に及んでいくことを期待している。』と述べた。」
 
そして、中小企業の厳しい実態を日立市の例を幾つかあげて説明する。
「それを実現するための課題は、日立製作所の社名の由来となったことで知られるこの工業都市で歴然としている。日立の従業員は月額2000円のベアと気前の良い一時金がもらえることになったが、日立市で働く他企業の労働者の多くが同じような待遇を受けるにはまだ時間がかかりそうだ。」
「日立向けにネジやボルトなどの留め具を供給している赤津工業所の赤津浩志常務取締役(33)は、日立と同じ水準のベア実施はできないと話す。同社の6人の従業員がもらえるのは多くともその半分くらいだという。」
「この地域は過去数年間、こうした待遇の不均衡に苦しんできた。日立の工場は原子力発電を含む発電設備の製造に特化している。だがこの事業は2011年3月の東日本大震災以降、大部分が干上がってしまった。大震災では関プレスの工場の車寄せに深い亀裂が生じたほか、震災で発生した津波は、日立から北へ160キロも離れていない福島第1原発を壊滅させた。」

ウォールストリートジャーナルは、安倍首相の経済政策が、円安に頼りすぎていることを再三批判しているが、この記事では、円安は大手企業を潤しているが、中小企業にはむしろマイナスとしている。
「アベノミクスの『3本の矢』の1本――円安につながった金融緩和――は自動車メーカーをはじめとする輸出企業の利益を押し上げた。だが円安は実際、大手製造業の多くのサプライヤーを痛めつけてきた。原材料の輸入費用が高くつくからだ。こうした企業は顧客からの値下げ圧力にも常にさらされている。」
「さらに懸念されるのは、消費税率が4月から8%に引き上げられることだ。」

そして、日立市の例をもう一つ加える。
「日立市の中心部で女性用衣料店を営む前澤邦夫さん(72)は近くにある日立の工場の従業員の賃上げで受ける恩恵はあまりないと見ている。」
「前澤さんは『私が思うに、(消費に)変化はないだろう。』と話し、『銀行にお金を持っている人はいる。でも将来への不安から使わない』と続けた。」
 
更に、2008年以降ベアが無かったが、定期昇給があったため、一般社員の給与はそれ程悪くは無かったことを説明する。これは、ベアを企業に要求する安倍首相の政策の誤りを指摘しているのだろうか?
「日本の雇用主は基本給の引き上げに特に二の足を踏んできた。正規社員の解雇が難しいことや、労働組合に加入する従業員はすでに年功序列による自動昇給を得ていることもその一因だ。トヨタではこの定期昇給にあたる『賃金制度維持分』を組合員1人平均月7300円とし、ベアは平均月2700円と回答した。定昇とベアで2.9%の賃上げだ。」
「ほとんどの企業の場合、最後にベアを実施したのは08年かそれ以前にさかのぼる。雇用主はこれまで、業績が厳しいときはより容易に撤回できる一時金の引き上げを実施する傾向があった。」
「ただ、この定期昇給があったために、多くの一般社員の給料は、基本給が示唆する水準よりは良かった。」
「経団連の調査によると、一般社員の給料は一時金を除き、この10年間は年率約2%ずつ上昇してきた。一方、この10年のほとんどの期間で物価は横ばいか、もしくは下落した。」

最後は、安倍首相は企業の基本給引上げに対応して、法人税率引下げ等で応えているが、多くの経営者が来年以降について不安を感じていることを示唆して、記事を締めくくっている。
「安倍首相は企業の基本給の引き上げを後押しするため、復興特別法人税の1年前倒しの撤廃を決定し、法人税の負担軽減に動いた。法人税率は4月に38.01%から35.64%に下がる。」
「甘利明経済再生担当相は記者団に対し『雪だるまの最初の一押しができつつある」と述べ、「期待以上に企業側に応えていただいた。』と発言した。」
「だが、安倍首相の賃上げ要請に応じた経営者の中にさえ、来年以降について不安を感じている人はいる。」
「ローソンの新浪剛史社長は『今年はベースアップ、ボーナスアップはできる。問題はこれがサステイナブルかどうか。』だと語った。

結論として、安倍首相の賃上げにより景気高揚策に対して、懐疑的な目を向けているように感じた。

Wednesday, March 12, 2014

日本と米国は輸出のギャップを埋めるために努力している【A14面(国際面)】


TPP日米実務者協議に関する記事が国際面に掲載された。TPPは米国にとって非常に重要であり、日本に妥協をしてでも合意に向け一歩踏み出すべきだと言っていると読めるがどうだろうか?全文を掲載する。

この記事は、まず、日米合意が、TPP合意にとって極めて重要である点を強調する。
「日米両国は11日、ワシントンで、米国の農家とデトロイトの自動車メーカーが日本市場に全面的に入れないという数十年来の問題を解決するため、再び実務者協議を始めた。」
「両国の合意は、12カ国が参加する環太平洋連携協定(TPP)交渉をまとめ、米議会のいら立ちを抑える上でカギとなる。」
「米国と日本が長年の市場アクセス問題―昨年12月にバイデン副大統領と安倍晋三首相が東京で会談して以来行き詰まっている―を乗り越えられれば、12カ国が知的財産や環境規則などもっと複雑な問題での相違点を解決する道が開ける可能性がある。」
その上で、日米合意には農産物での妥協が必須だが、この点に関するオバマ政権の取組みに懐疑的な目を向ける。
「オバマ政権の通商担当者や議員は、米農産物の対日輸出を拡大できるように合意できれば、農業に依存する一連の州の支持を得られ、TPPも議会に受け入れられやすくなるとみている。下院と上院の民主党指導者は最近、政府に通商権を一任する大統領貿易促進権限(TPA)法案への反対を表明した。」
「民主党のサンダー・レビン下院議員(ミシガン州)は『市場アクセスで日本との間の極めて基本的な点で突破口が開かれない限りTPPが成功するとは思えない。』と語った。同議員はオバマ政権の通商政策に懐疑的だ。」

さらに、TPP合意に向け、既に日本はかなり妥協しているのに、オバマ政権が何もしないのは、臆病だとも言っている様だ。
「日本は昨年、TPP交渉に参加する前、米国産牛肉の輸入を増やし、米金融業界の主たる目標である保険市場へのアクセス拡大という若干の譲歩をした。しかし、両国の交渉はそれ以降、ほとんど進展をみせていない。」
「クリントン政権下で米通商代表部(USTR)代表を務めたミッキー・カンター氏は『これは臆病者のための交渉ではない。』と語った。同氏は1990年代に、米国の自動車、農産物、ガラスを日本が輸入する際の規則を緩和させるのに努力した。」

そして、TPPはアメリカにとっても重要なのだから、妥結に向けて努力すべきという、オバマ政権に対する期待を表明。
「地政学的な要素もある。日本はTPP交渉に参加していない中国との間に緊張関係を持ち、一方で米国は戦略的、経済的重心をアジアに移そうとしている。米当局者は、環太平洋諸国の関係強化は同時に中国を孤立させ、その結果同国が市場を開く可能性があるとみている。」
「また、現在日本と経済連携協定(EPA)交渉をしている欧州連合(EU)が先に合意すれば、米国の企業は不利益を被ると警告している。

最後に両国の首脳が、TPPの重要性を強調するコメントを掲載している。
「バイデン副大統領は2月、民主党議員グループに対して、米国製自動車の市場アクセスを拡大するため、いかに安倍首相に強く働きかけたかを語り、TPPの戦略的重要性を強調した。」
「甘利明TPP担当相は11日、今週の協議から『大きな進展』」を期待していると述べた。この協議は4月のオバマ大統領の訪日を前に突破口を開くチャンスとみられている。」

TPPに関するニュースは、米国ではあまり目にしないが、この記事はその重要性と、米国の妥協の必要性を強調していて、好感が持てる。


 

Tuesday, March 11, 2014

日本の関税へのサポートは衰退している【A12面(国際面)】

国際面で、日本の農業保護政策について、日米双方からその方針転換を迫る動きがある一方で、その固持を求める勢力もあることを報じている。

まず、この記事は、日本政府が長年固持している農業保護政策について、農業セクターの内部からすら批判が出ていることを紹介する。
「秋田県大潟村で農業を営む小林肇氏(46)は日本政府が長年続けてきた農業セクターの過度な保護をやめるべきだと考えている。」
「こうした小林氏の姿勢はちょっと異例だ。同氏は大潟村農業協同組合(JA大潟村)の組合長を務めている。JAは大きな影響力を持ち、日本の農業における価格競争を長年阻止してきた。」
「しかし今、小林氏のような農業セクター内部の人を含め、輸入価格の約9倍に上る関税や生産調整(減反)、複雑に入り組んだ補助金をはじめとする保護政策の妥当性に疑問を持ち始める人が増えている。」

そして、日本の農業が抱える問題を羅列し、その内の一つが農家を甘やかしてきたことだとする。
「日本の農業は問題が山積している。農業従事者の3分の2は60歳を超えている上、若者は都市で働きたがるため、多くの土地が未耕作のまま放置されている。農家を甘やかしてきたことで、日本の農業が価格や品質で国際的に競争できなくなっているとの批判もある。」

そして、農協がその甘やかしの一翼を担ってきたことを紹介し、その改革が必要だとする。
「JAは品質にかかわらず農産物を買い取ったり、農家への補助金や生産枠を取りまとめたりするなど日本の農業で中心的な役割を果たしている。また、農家に金融サービスを提供する国内最大規模の金融機関の1つでもあり、農業機械・用品の販売も行っている。」
「15ヘクタールの土地でコメを栽培する小林氏はJAが変化に疎く、改革に後ろ向きな年配者が多く、若い人がなかなか上に立てない組織になっていると指摘する。」
「『企業的感覚を持っている農家は、農協の資材が高かったり、農協から融資がもらえなかったりということがあって農協から離れざるを得なくなってきた。』と小林氏。米コロラド州の牛牧場で働いた経験もある同氏は、政府は生産調整をやめて農産物価格の下落を容認し、世界最大のコメ市場である中国で日本が競争するチャンスを与えるべきだと主張する。」

一方で、日本国内で農業政策に対する批判がある様に、米国でも日本政府の方針転換を求める声が大きい。
「米国も日本の農業の開放を求め、コメ農家がもっと日本に農産物を輸出できるようにしたいと考えている。現在のところ日本政府は方針を変えていない。環太平洋経済連携協定(TPP)交渉行き詰まりの一因も、日本が農業関税を撤廃しようとしないとの声も多い。」

安倍首相は、方針転換に積極的である。
「安倍晋三首相は補助金や生産調整を段階的に廃止し、今後数年で日本の農業を改革する方針を表明している。」

しかし、日本では零細農家、米国では民主党のベテラン議員など、方針転換に反対する勢力も根強く残っている。
「しかし、零細農家をはじめ日本では依然多くの関係者が改革に反対しており、政府は慎重に事を進めざるを得ない状況だ。甘利明経済再生担当相は米国のTPP交渉担当官に対し、日本には交渉継続の一環として関税を撤廃する気はないと語った。」
「4月のオバマ米大統領訪日を前に、日米は今週ワシントンでTPP交渉打開に向けた協議を行う。米国では、民主党のベテラン議員による抵抗がやはりTPP交渉を難航させている。」
 
日本の農業政策の転換を強く望みながらも、その困難さも併せて強調している。


幹細胞の研究に新たな打撃【A3面(国内面)】

「理化学研究所は11日、新万能細胞『STAP(スタップ)細胞』」の作製に関する論文を取り下げるかどうか検討中であることを明らかにした。」という記事が、国内面に掲載された。ハーバード大学のバカンディ教授へのインタビューが中心なので、国内記事扱いなのか?

この事件は、多分、日本では大きな話題になっているのだろう。

論文の共同執筆者の1人である山梨大学の若山照彦教授が、「論文に掲載された画像の不自然さ」と、「他の研究者が研究結果を再生出来なかったこと」の2つの理由により、雑誌ネイチャーに掲載されたの論文の撤回を主張。

一方で、「別の共同執筆者であるチャールズ・バカンティ米ハーバード大教授は研究を擁護している。バカンティ氏は10日、インタビューの中で『(論文には)いくらか誤りもあったが、結論には影響がない』」とし、『私が持っている情報に基づけば、これらの論文は取り下げなければならない理由は見当たらない。』と述べた。」
「バカンティ氏は共同執筆者の1人が撤回を求めたと聞いて驚いたと話した。」

「バカンティ氏は10日、小保方氏と話したことを明らかにし、小保方氏も自身の研究内容を固守していると述べた。」
 
皆さんは、若山教授とバカンディ教授の主張のどちらを支持されますか?

Monday, March 10, 2014

日本のデータは、経済の痛みを示している【A18面(国際面)】

2013年度第四四半期GDPの下方修正や1月の経常収支の赤字は、日本経済が不安定な時期に入ったことを示しているという、大変に暗い記事が国際面に掲載された。

「2013年第四四半期の日本経済は、当初予測されていたよりも、かなりゆっくりした成長だった。また、1月の経常収支も赤字を計上した。こうした悪い数値は、日本経済が不安的な時期に入ったことを示している。」

2013年第四四半期のGDPの年率換算の成長率は予測の1% を下回って0.7%、経常収支も1,540億ドルの赤字だそうだ。

「これらの数値は、安部首相のアベノミクスに新しい問題を突きつける。エコノミストは、つい最近まで、消費税が5%から8%に変更され経済が落ち込む前の数ヶ月は、堅実な成長が期待出来るとしてきた。」

GDPの不振は、企業投資と個人消費という2つの要因の不振によるところが大きい。

「エコノミストはこれらの2つのセクターの当面の回復は望めないと言う。エコノミストによれば、個人消費と企業投資が強いとした最近のデータは、消費税導入前に価格がより高くなる前に、車や電化製品といった高額商品を購入しておこうという駆け込み需要にすぎない。」

記事の最後は暗い事実で締めくくる。
「経常収支の赤字は4ヶ月連続で、これは最長記録だ。」

WSJは、円安頼りの安倍政権の経済運営に不満で、抜本的対策の必要性を一貫して訴えている。

津波は日本で多くの精神疾患者をもたらす【A18面(国際面)】

国際面で、東北大震災から3年を迎えたが、未だに精神疾患に悩む被害者が多数いることを伝えている。本当にやるせない記事だ。

「岩手県陸前高田市では2011年3月の東日本大震災で起きた津波で市民の10人に1人が亡くなった。岡本啓子さん(50)は肉親とともに生き延びた。」
「経理の仕事に就き、今は住まいもある岡本さんだが、多くの市民と同様に絶望感と不安感に苛(さいな)まれている。昨年の息子とのけんかをきっかけに絶望的になり自殺を考え始めたという。」
「家を流された岡本さんは現在、市内の親戚の家で暮らしている。津波で親友を亡くし、『夫や母には心配をかけてしまう』と悩みを相談できなかった。『発作的に絶望的になってしまうことがあった。でも頑張らなくては(多くを失った方たちに)申し訳ない』」と語った。」

岡本さんの例にある様に、被災地には、精神疾患に悩む人々が多数いる。この記事は、この問題について、3つの課題を挙げている。

第一に、東北人特有の我慢強さが、カウンセリングを拒んでしまうために、精神疾患を悪化させている点である。
「医療専門家によると、精神疾患につきまとう悪いイメージ加えて、地域とのつながりがなくなったことや、生き残ったことに対する罪悪感が、最も助けを必要としている人々の足を遠ざけてしまうことが多いという。」
「地元の医師の鵜浦(うのうら)章さんは『震災から約1年半後に、ストレスによるとみられる腹痛や不眠、目まいの訴えを受けるようになった。』と言う。しかし忍耐強く、精神的な訴えを人にしゃべることを恥ずかしいとする風土がある陸前高田では、『カウンセリングを勧めている患者の約半数は拒む。』と話した。」


第二に、避難生活の厳しさが、精神疾患を悪化させている点である。
「震災から逃れた陸前高田市の市民約2万人の4分の1は今も仮設住宅で生活している。高齢者には不自由の多い古い家では生活しにくく、仮設住宅に戻った岡本さんの母親(78)もその1人だ。平均面積が約30平方メートルという狭い仮設住宅に住む人々は、プレハブ暮らしのストレス対処のために頼れる場所はほとんどないと話す。」
「津波で母親と52人の同僚を亡くした消防団員の菊池一男さん(54)は『壁が薄くて隣の人のいびきまで聞こえる。』と話した。仮設住宅の住人の多くは高齢で、食品や日用品の買い物は移動販売車に頼っている。菊池さんは主にコンビニの既製品を食べているという。」

第三に、行政の対応の悪さが、精神疾患を悪化させている点である。
「陸前高田市の2014年度(14年4月〜15年3月)予算は約1300億円。約18メートルに達した津波で中心部が壊滅的な被害を受けたため、同市は沿岸地区の300ヘクタールの標高を最大12メートル高くする計画を立てている」
「予算には、カウンセラーの雇用など精神面のケアの費用として約2600万円が計上されている。」
「同市の久保田崇・副市長は『適切な措置を講じている。』と述べた。市の職員たちは、これほどの大災害への対応は生涯にわたるもので、市ができることには限りがあると話す。」
「米国で臨床心理学博士を取得した佐藤文子さんは、市の努力は決して十分とは言えないとし、『被災者は出入りの激しいカウンセラーを相手に、自分の悲惨な体験を何度も話したがらない。』と述べた。佐藤さんは12年に市に採用されてから、仮設住宅で100人余りの患者の一部と共に暮らしている。」

行政の対応不足を指摘しながらも、行政に携わる人々もまた犠牲者であるという、やるせない現実にも目を向ける。
「職員の3分の1を津波で失った陸前高田市は、国内各地から派遣された公務員に大きく依存している。地元メディアによると、12年には、その中の1人の応援派遣技師が、復興にあまり貢献できなかったことをわびる遺書を残して自殺した。」

「津波で妻を亡くした戸羽太市長は『ほとんどの職員自身が被災者となっており、家族を亡くし自宅を流されている。多くの市民が悲しみち将来への不安、あるいは後悔が人々の心から離れない現状』と語った。」

東北人特有の粘り強さも、避難生活の厳しさも、行政の対応の悪さも、すぐに解決する課題では無い。精神疾患を克服するためには、厳しい様だが、被害者に、精神的な強さを持ってもらうしかないのだろうか?そんなメッセージで、記事は締めくくられている。

「2000人近くの小中学生を管轄する同市教育委員会の山田市雄教育長は『負の部分ばかりに目をやると絶望的になる。』と述べた。」


「同市の小中学生のうち171人が震災で片方の親、または両親を亡くした。山田教育長は『われわれは、生徒たちに悲しみを乗り越えるための強さと自信を持たせなければ。』と話した。」

何ともやるせなくなる記事である。