Wednesday, July 27, 2016

刺殺事件は平和な日本を驚愕させた【A7面(国際面)】

726日相模原障害者施設殺傷事件について、WSJは同日の国際面で速報したが、翌日27日の国際面にも続報を写真りで大きく掲載した。


日本で犯罪が少ない理由、今回の事件には兆候があったこと、お年寄りや障害者用施設での労働環境が苛酷であることなどについて、グラフを使用しながら、詳しく報じている。2日連続の掲載であり、この事件についてのの関心の高さがうかがわれる。

***** 以下本文 *****
精神障害者施設での刺殺事件は、暴力事件の少ない国である日本を震撼とさせ、当局は事件の兆候を見落としていたことに思いをめぐらせている。
26歳の元従業員は、今年の2月に身障者に対する辛辣な発言を叱責された後、突然退職していた。彼は事件の後自首し、逮捕された。火曜日の午後現在で、死者は19名、負傷者は20以上となっている。
この事件は、日本の近代史上最悪の事件だ。今年、米国、フランス、アフガニスタンなどで、大量殺人事件が起きているが、日本の人々は、何故、それらの事件と同様の事件が日本で起きたのだろうと自問自答している。
政府関係者は、この事件についてイスラム過激派との関係は無いと言っているが、犠牲者が抵抗できない善良な市民である点、大量殺戮が行われた点など、この事件と今年世界で発生した大量殺人事件との間には類似した点もある。
殺人現場は、東京から約90分のところにあるが、小さな川が流れ、施設の背後に森が広がる典型的な田舎にある。
「本当にびっくりしました。」と殺人現場の近くに住むスズキタカシさん(81歳)は言う。「こんな平穏な場所で、何でこんな恐ろしい事件がおきたのでしょうか?」
シンクタンクである経済平和機構によれば、日本は世界で最も平和で安全な国だ。日本政府によれば、12,700万人が住むこの国で、2015年に発生した殺人事件は363件に過ぎない。人口が270万人しかないシカゴで発生する殺人事件数より少ないのだ。
警視庁によれば、2015年の日本の犯罪数と殺人事件数は、共に戦後最低を記録した。警察や犯罪専門家によれば、日本で犯罪数が少ない理由としては、経済的に豊かであること、社会のセーフティネットがしっかりしていること、そして銃規制が厳しいことなどがあげられる。
日本は1995年以降、過激派による大量殺人事件を経験していない。1995年のオウム真理教事件では、同宗教団体が地下鉄でサリンをまき、13人が死亡、数千人が影響を受けた。2001年と2008年には、今回の様な異常者による殺人事件があったが、死傷者数は一桁だった。
いずれの事件でも、銃器は使われていない。日本では法規制が厳しく、一般の人が銃を保有することのは困難だ。
近畿大学のキヨシマヒデキ教授はソーシャルネットワークが暴力事件とどう関与しているかを研究しているが、日本は伝統的に住民の間の関係が濃いコミュニティを形成しており、そのことが犯罪を少なくすることに貢献したと述べている。
当局は、今回の刺殺事件の容疑者である植松聖が危険な方向に変わりつつあることを察知していた。彼は津久井やまぶき園に何年か雇用されていたが、最初のうちは問題が無かった。しかし、暫くして、入居している障害者にたいして辛辣な言葉を吐くようになったと園長の入倉かおるさんは言う
そのことで譴責されると、2月になって彼は突然仕事を辞めてしまった。辞める前には、彼の中にある思想が芽生えていた。
関係者によれば、同じ月に、植松氏は衆議院議員に手紙を書いている。彼らはその手紙の内容を公開することを拒んでいるが、共同通信によれば、植松氏はその手紙の中で、重度の障害者を安楽死させることにより、世界経済を活性化させ第三次世界大戦を回避することを予告し、幾つかの点で火曜日の殺人と類似する計画について記載していた。
共同通信によれば、その手紙には、夜シフトの間に2つの施設に侵入し、従業員を縛り、260人の居住者を殺害し、自首すると書いてあった。今回の事件においても、入倉氏によれば、従業員は縛り上げられた。
今回の事件は相模原市で発生したが、同市の職員によれば、植松氏が仕事を辞めた直後の219日、警察は同市で彼を拘束した。彼が、興奮状態にあり明らかに精神的な問題があったからだ。同市の職員によれば、相模原市は植松氏を強制入院させた。しかし、暫くすると彼は落ち着いたので、市は32日に彼を解放したと市の職員は語った。
事件発生後の犯罪専門家や政治家の間での議論のポイントの一つに、精神障害者施設で働くことに伴うストレスがある。
お年寄りや障害者のための施設で働く従業員は、肉体的にも精神的にも負担が大きいが、殆どの場合その給与は極めて低い。安倍首相は、こういった施設で働く従業員の給与を上げるべきだと語った。
施設がある県の知事である黒岩裕治「その様な施設で働く従業員は多くのストレスにさらされている。この施設では、そうしたストレスを和らげるために、どの様な対策が取られてきたのか調査する必要がある。」と語った。