Saturday, July 30, 2016

日銀の政策後退は安倍首相の重荷に【A2面】

日銀が729日に決定した追加金融対策について、翌日のA2で速報した。




日本経済再生のために、日銀が推し進めてきた「国債の買入れ」と「金利引下げ政策」は、これ以上継続できない危険なレベルまできている。既に日銀の政策による効果は出ており、ここからは安倍首相がリーダーシップを取って、政策の中心を「金融緩和」から「財政支出と規制緩和」に移すべきだとしている。

日銀が発表した金融緩和による景気刺激策は予測以上に小規模だったが、これは「何としても実現する。」というこれまでの日銀の政策スタンスからの後退を意味し、政府に財政出動と構造改革をもっと活用する様に迫っている。
日銀は、財政対策と金融対策は同時進行でなされねばならないという政府からの圧力にもかかわらず、金曜日(729)に、既に巨額に膨らんている国債買い入れ額の拡大や既にマイナスになっている金利の更なる引下げ等の手段を取らないことを発表した。
そのことだけでも、多くのエコノミストにとっては、日銀の金融緩和策が上限に達し、これ以上の対策が取れないことを示している。日銀は、その政策の有効性についての包括的な評価を、9月に開催される次回の会議で行うと発表したが、この発表も日銀のそうした状況を追認している。
「私は全てがうまく行ってないとはい言っていません。しかしまた、全てが上手く行ったとも言っていません。」と記者会見で黒田晴彦日銀総裁は述べた。
投資家たちは黒田氏の政策を金融バズーカと名付けたが、こうした(弱気の)発言は、この政策を開始させてから初めてのことだ。この政策開始時に黒田氏は2%のインフレを2年以内に実現する。もし目標達成が危うくなったら、それを回避するためにあらゆる手段を講じると述べていた。
それから3年以上が経過したが、最も楽観的な予測でも、日銀の目標は少なくとも来年までは達成できそうにない。そして、日本経済はここ数四半期にわたって低迷している。黒田氏は中央銀行は弾薬切れではないのかという指摘を否定した。彼は、上場投資信託の買い入れ額を現在の年3.3兆円から年6円にほぼ倍増させることを強調した。国債を追加で購入する余地はまだあるし、既にマイナスになっている金利を更に引き下げることも可能だと述べた。
しかし、日銀の今回の行動(いや今回は行動しなかったことというべきか。)は、いままでにない強いメッセージを送っている。日銀は、量的緩和の柱である国債買い入れについて、市場を混乱させずに現在の年間80兆円の水準から増やすことは極めて難しいとした。日銀は、現在発行されている国債の3分の1保有している。
今後日銀はさらなる国債買付が市場にもたらす影響について、それがもたらす負の効果も含めて、慎重に検討するだろうと黒田総裁は述べた。日銀はまた短期及び長期の金利を低く据え置くことが市中銀行の健全性にどのような影響を及ぼすかについても調査する。
第一生命研究所のチーフエコノミストであるナガハマトシヒロ氏は、今回の日銀の対応と黒田総裁の発言からみて、日銀の量的緩和は限界にきたとみるエコノミストの一人だ。彼は、日銀は、当初予定していたよりも長くかかりそうなデフレとの戦いに備えて、継続的に実行可能な政策を検討し始めるだろうとみている。
SMBC日興証券のチーフ市場エコノミストのマルヤマヨシマサ氏は、国債購入量の縮小に加えて、日銀は銀行や一般の人々に評判の悪いマイナス金利についてもこれ以上の引下げは行わないだろうとみている。
もし、日銀がこれまでの政策方針をずっと変えないとしても、現在の政策はいままでにない金融面からの刺激を市場に与えている。円は一年前からすると上がってはいるが、黒田氏が総裁になってからは円安の状況が続いている。
政府に近いある人物によれば、経済産業相では、安倍内閣が経済再生に必要な財政支出と構造改革を今こそ打ち出すべきだという見方が広まっているという。安倍氏は水曜日に28円の財政支出計画を来週発表すると語った。