Sunday, July 31, 2016

*** 7月のまとめ ***

7月にWSJに掲載された日本関係の記事は10件12月が5件、3月が9件、4月が13件、5月が19件、6月が7件だったので、平均的な件数だった。

テーマ別では、政治関係が5件、経済関係が2件、社会関係が3件だった。

政治関係では、7月10日に行われた参議院選挙関連の記事が5件も掲載された。7日には若者の支持を獲得しようとする各政党の的外れな取組を面白おかしく紹介、8日には自民党大勝の予測記事を掲載し、その理由は民進党がだらしないことにあるとした。投票翌日の11日には選挙結果を速報すると共に社説でも取り上げ、自民党圧勝によって改憲勢力が2/3を上回ったが、今の日本には改憲の議論をしている時間は無く、まず経済再生を優先すべきで、それが国民の期待であるとした。12日には、若者が自民党を支持したことを取り上げ、生まれたときから経済不振が続く若者世代は安倍首相の行動力に期待していると分析した。

経済関係では、7月29日に総務省が日本の物価が4ヶ月連続で下落していることを取り上げ、日銀による追加緩和策が必要だと訴えた。その後、日銀は29日午後に追加緩和策を発表したが、今回の緩和策は市場の期待に応える規模ではなく、むしろ日銀が手詰まり状況にあることを露呈したとし、安倍政権による財政支出と規制緩和への期待が高まっているとした。

社会関係では、7月26日に起きた相模原市の障害者用施設での19人射殺事件について、26日に速報記事を、さらに27日にも続報を掲載した。安全な国家である日本で、こうした大量殺人事件が起きたことに驚きを表明している。
7月13日にNHKがスクープし、14日の新聞が一斉に取り上げた天皇陛下の生前退位についても、15日に速報した。


掲載箇所では、1面が1件、2面が1件、社説が1件、国際面7件だった。

Saturday, July 30, 2016

日銀の政策後退は安倍首相の重荷に【A2面】

日銀が729日に決定した追加金融対策について、翌日のA2で速報した。




日本経済再生のために、日銀が推し進めてきた「国債の買入れ」と「金利引下げ政策」は、これ以上継続できない危険なレベルまできている。既に日銀の政策による効果は出ており、ここからは安倍首相がリーダーシップを取って、政策の中心を「金融緩和」から「財政支出と規制緩和」に移すべきだとしている。

日銀が発表した金融緩和による景気刺激策は予測以上に小規模だったが、これは「何としても実現する。」というこれまでの日銀の政策スタンスからの後退を意味し、政府に財政出動と構造改革をもっと活用する様に迫っている。
日銀は、財政対策と金融対策は同時進行でなされねばならないという政府からの圧力にもかかわらず、金曜日(729)に、既に巨額に膨らんている国債買い入れ額の拡大や既にマイナスになっている金利の更なる引下げ等の手段を取らないことを発表した。
そのことだけでも、多くのエコノミストにとっては、日銀の金融緩和策が上限に達し、これ以上の対策が取れないことを示している。日銀は、その政策の有効性についての包括的な評価を、9月に開催される次回の会議で行うと発表したが、この発表も日銀のそうした状況を追認している。
「私は全てがうまく行ってないとはい言っていません。しかしまた、全てが上手く行ったとも言っていません。」と記者会見で黒田晴彦日銀総裁は述べた。
投資家たちは黒田氏の政策を金融バズーカと名付けたが、こうした(弱気の)発言は、この政策を開始させてから初めてのことだ。この政策開始時に黒田氏は2%のインフレを2年以内に実現する。もし目標達成が危うくなったら、それを回避するためにあらゆる手段を講じると述べていた。
それから3年以上が経過したが、最も楽観的な予測でも、日銀の目標は少なくとも来年までは達成できそうにない。そして、日本経済はここ数四半期にわたって低迷している。黒田氏は中央銀行は弾薬切れではないのかという指摘を否定した。彼は、上場投資信託の買い入れ額を現在の年3.3兆円から年6円にほぼ倍増させることを強調した。国債を追加で購入する余地はまだあるし、既にマイナスになっている金利を更に引き下げることも可能だと述べた。
しかし、日銀の今回の行動(いや今回は行動しなかったことというべきか。)は、いままでにない強いメッセージを送っている。日銀は、量的緩和の柱である国債買い入れについて、市場を混乱させずに現在の年間80兆円の水準から増やすことは極めて難しいとした。日銀は、現在発行されている国債の3分の1保有している。
今後日銀はさらなる国債買付が市場にもたらす影響について、それがもたらす負の効果も含めて、慎重に検討するだろうと黒田総裁は述べた。日銀はまた短期及び長期の金利を低く据え置くことが市中銀行の健全性にどのような影響を及ぼすかについても調査する。
第一生命研究所のチーフエコノミストであるナガハマトシヒロ氏は、今回の日銀の対応と黒田総裁の発言からみて、日銀の量的緩和は限界にきたとみるエコノミストの一人だ。彼は、日銀は、当初予定していたよりも長くかかりそうなデフレとの戦いに備えて、継続的に実行可能な政策を検討し始めるだろうとみている。
SMBC日興証券のチーフ市場エコノミストのマルヤマヨシマサ氏は、国債購入量の縮小に加えて、日銀は銀行や一般の人々に評判の悪いマイナス金利についてもこれ以上の引下げは行わないだろうとみている。
もし、日銀がこれまでの政策方針をずっと変えないとしても、現在の政策はいままでにない金融面からの刺激を市場に与えている。円は一年前からすると上がってはいるが、黒田氏が総裁になってからは円安の状況が続いている。
政府に近いある人物によれば、経済産業相では、安倍内閣が経済再生に必要な財政支出と構造改革を今こそ打ち出すべきだという見方が広まっているという。安倍氏は水曜日に28円の財政支出計画を来週発表すると語った。

Friday, July 29, 2016

日本で追加緩和策への期待が高まる【A14面(国際面)】

総務省が729日に発表した6月の全国消費者物価指数について、同日の国際面で速報した。



総務省発表によれば、6月も消費者物価は下落し、4ヶ月連続下落という深刻な状況。政府、日銀双方による緊急の追加景気対策への期待が高まっている。政府は28兆円の緊急追加対策を既に打ち出しており、日銀にも同様の対策が望まれているという主旨。円高と株価下落により、家計の心理は冷え切っており、こうした状況を克服するには思い切った対策は必要だと言っている様に読める。

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金曜日(729日)に発表されたデータによれば6月の日本の物価は、2013年以来最速のペースで下落した。労働市場はここ数十年で最も良い状況にあるにもかかわらず、消費は予測よりも弱かった。こうしたデータは、日銀に更なる追加アクションを迫っている。
政府によれば、生鮮食料品を除く6月の消費者物価は、前年比で0.5%下落した。下落は4ヶ月連続だ。下げ幅はエコノミストの予測である0.4%よりも大きく、インフレ率は日銀目標である2%を大きく下回る。
安倍首相と日銀は、世界第三位の経済大国である日本の経済再生を、インフレを起こすことによって達成しようとしてきた。政治家と日銀は、ここ数年の物価の下落の理由は、(政策の失敗ではなく)経済と賃金の停滞にあるとしてきた。エコノミストは、インフレは先進国で最大となっている日本の国債を減らすことにも貢献すると指摘する。
しかしながら、安倍首相がアベノミクスを開始して3年半経過しているのに未だに物価が下落している。このため、政府と日銀による追加アクションへの期待が高まっている。
安倍首相は既に28兆円(2,700億ドル)相当の追加景気対策を発表し、来週詳細を閣議決定すると述べた。日本経済調査センターがエコノミストを対象に7月に実施した調査によれば、85%のエコノミストが、日銀もまた、金曜日(729)に終わる2日間の会合において、追加緩和策を発表するだろうと予測した。例えば、既に前例のない額に膨らんでいる資産買い取り額を更に増やすことや、既にマイナスとなっている金利を更に下げるなどの対策だ。、

日銀は、物価が想定通り上昇しないことの一因に、世界規模でのエネルギ価格の下落をあげている。黒田日銀総裁は、物価は上昇基調にあるとする立場を崩していない。
エネルギーと食品を除けば、6月の物価は前年比で0.4%の増となっている。しかし、増加のペースは6月の0.6%よりも低い。
国内消費は物価上昇に貢献していない。6月の家計支出は、家、教育、交通機関への家計支出は減少により、前年比で2.2%下落、これで4ヶ月連続の下落だ。エコノミストによれば、ここ数ヶ月の円高と株式市場の下落が、家計に重くのしかかっているようだ。

Wednesday, July 27, 2016

刺殺事件は平和な日本を驚愕させた【A7面(国際面)】

726日相模原障害者施設殺傷事件について、WSJは同日の国際面で速報したが、翌日27日の国際面にも続報を写真りで大きく掲載した。


日本で犯罪が少ない理由、今回の事件には兆候があったこと、お年寄りや障害者用施設での労働環境が苛酷であることなどについて、グラフを使用しながら、詳しく報じている。2日連続の掲載であり、この事件についてのの関心の高さがうかがわれる。

***** 以下本文 *****
精神障害者施設での刺殺事件は、暴力事件の少ない国である日本を震撼とさせ、当局は事件の兆候を見落としていたことに思いをめぐらせている。
26歳の元従業員は、今年の2月に身障者に対する辛辣な発言を叱責された後、突然退職していた。彼は事件の後自首し、逮捕された。火曜日の午後現在で、死者は19名、負傷者は20以上となっている。
この事件は、日本の近代史上最悪の事件だ。今年、米国、フランス、アフガニスタンなどで、大量殺人事件が起きているが、日本の人々は、何故、それらの事件と同様の事件が日本で起きたのだろうと自問自答している。
政府関係者は、この事件についてイスラム過激派との関係は無いと言っているが、犠牲者が抵抗できない善良な市民である点、大量殺戮が行われた点など、この事件と今年世界で発生した大量殺人事件との間には類似した点もある。
殺人現場は、東京から約90分のところにあるが、小さな川が流れ、施設の背後に森が広がる典型的な田舎にある。
「本当にびっくりしました。」と殺人現場の近くに住むスズキタカシさん(81歳)は言う。「こんな平穏な場所で、何でこんな恐ろしい事件がおきたのでしょうか?」
シンクタンクである経済平和機構によれば、日本は世界で最も平和で安全な国だ。日本政府によれば、12,700万人が住むこの国で、2015年に発生した殺人事件は363件に過ぎない。人口が270万人しかないシカゴで発生する殺人事件数より少ないのだ。
警視庁によれば、2015年の日本の犯罪数と殺人事件数は、共に戦後最低を記録した。警察や犯罪専門家によれば、日本で犯罪数が少ない理由としては、経済的に豊かであること、社会のセーフティネットがしっかりしていること、そして銃規制が厳しいことなどがあげられる。
日本は1995年以降、過激派による大量殺人事件を経験していない。1995年のオウム真理教事件では、同宗教団体が地下鉄でサリンをまき、13人が死亡、数千人が影響を受けた。2001年と2008年には、今回の様な異常者による殺人事件があったが、死傷者数は一桁だった。
いずれの事件でも、銃器は使われていない。日本では法規制が厳しく、一般の人が銃を保有することのは困難だ。
近畿大学のキヨシマヒデキ教授はソーシャルネットワークが暴力事件とどう関与しているかを研究しているが、日本は伝統的に住民の間の関係が濃いコミュニティを形成しており、そのことが犯罪を少なくすることに貢献したと述べている。
当局は、今回の刺殺事件の容疑者である植松聖が危険な方向に変わりつつあることを察知していた。彼は津久井やまぶき園に何年か雇用されていたが、最初のうちは問題が無かった。しかし、暫くして、入居している障害者にたいして辛辣な言葉を吐くようになったと園長の入倉かおるさんは言う
そのことで譴責されると、2月になって彼は突然仕事を辞めてしまった。辞める前には、彼の中にある思想が芽生えていた。
関係者によれば、同じ月に、植松氏は衆議院議員に手紙を書いている。彼らはその手紙の内容を公開することを拒んでいるが、共同通信によれば、植松氏はその手紙の中で、重度の障害者を安楽死させることにより、世界経済を活性化させ第三次世界大戦を回避することを予告し、幾つかの点で火曜日の殺人と類似する計画について記載していた。
共同通信によれば、その手紙には、夜シフトの間に2つの施設に侵入し、従業員を縛り、260人の居住者を殺害し、自首すると書いてあった。今回の事件においても、入倉氏によれば、従業員は縛り上げられた。
今回の事件は相模原市で発生したが、同市の職員によれば、植松氏が仕事を辞めた直後の219日、警察は同市で彼を拘束した。彼が、興奮状態にあり明らかに精神的な問題があったからだ。同市の職員によれば、相模原市は植松氏を強制入院させた。しかし、暫くすると彼は落ち着いたので、市は32日に彼を解放したと市の職員は語った。
事件発生後の犯罪専門家や政治家の間での議論のポイントの一つに、精神障害者施設で働くことに伴うストレスがある。
お年寄りや障害者のための施設で働く従業員は、肉体的にも精神的にも負担が大きいが、殆どの場合その給与は極めて低い。安倍首相は、こういった施設で働く従業員の給与を上げるべきだと語った。
施設がある県の知事である黒岩裕治「その様な施設で働く従業員は多くのストレスにさらされている。この施設では、そうしたストレスを和らげるために、どの様な対策が取られてきたのか調査する必要がある。」と語った。











Tuesday, July 26, 2016

日本で19人が刃物で殺害される【A8面(国際面)】

26日未明に相模原市の障害者施設で起きた19人殺人事件について、同日の国際面で写真入りで大きく報じた。



事件の詳細について報じた後、犯罪の少ない日本では考えられない事件だとしている。国連の「日本は世界で最も犯罪率の低い国であり、その主な理由は厳しい銃規制にある。」というレポートを引用し、銃による大量殺人が多発している米国社会に警鐘を送っている様に読める。

***** 以下本文 *****
当局によれば、火曜日の朝早くに一人の男が東京郊外にある障害者施設に侵入し、19人を刃物で刺して殺傷した。犯罪率が少ない日本で、最悪の殺人事件となった。
地元の警察官によれば、事件は午前2時半頃、相模原市で発生した。ナイフを持った男が津久井やまゆり園と呼ばれる施設に侵入した。事件が発生した神奈川県の職員によれば、20人以上が負傷した。
NHKによれば、容疑者は事件後すぐに自首し、その施設の元職員だと警察に話した。
容疑者は26歳の植松聖で、ハンマーを使って窓を割って施設に侵入した。逮捕された時には、バッグの中に複数のナイフを所持していたとNHKは報じた。
共同通信によれば、植松氏は施設で職員として働いていたが、今年の2月に個人的な理由で退職していた。
施設は小さな集落の端に位置し、山あいにある。午前中には、救急車は引上げ、警察が施設を立ち入り禁止とした。施設は静かで人の気配も見られなかった。100人以上のレポーターと沢山のヘリコプターが現場へ急行した。
施設のウェブサイトによれば、この施設は県によって設立され、敷地の広さは7エーカー以上ある。施設から徒歩で30分程の所に住むスズキタカシさん(81歳)によれば施設には知的障害や身体障害を持つ成人が住んでいた。
彼は、時々職員が住人の手を持って、グループで散歩するのを見かけたと言う。
この事件は、近年日本で起きた事件としては最悪だ。1995年には、カルト集団が神経ガスを地下鉄にまき、13人が死亡、6,300人が負傷した。
死傷者が増えた原因は、事件発生が深夜であったことと、犠牲者が障害者だったので逃げることが出来なかったことにある。
銃規制が厳しい日本では、一般の人が銃を所持するのは難しい。しかし、他の手段による事件はこれまでも起きてきた。
2008年には、男がトラックで歩道につっこみ3人を殺害、さらに車から降りて4人を短剣で刺して殺害した。
戦前には、19385月に最悪の殺人事件が起きている。都井睦雄という若者が、田舎の村で、斧、短銃、刀を使って30を殺害し、その後自殺した。
国連のデータによれば、殺人事件が発生する率は、日本が世界で最も低い。
警視庁によれば、殺人事件は2015年には933件で、戦後最低を記録した。同時に犯罪も史上最少となった。
日本では、レストランで鞄を人が見ていない所に平気で置いたりしている。それほど、盗難の心配が無いのだ。日本の人気インスタグラムサイトでは、日本人が、酩酊して、東京の電車や広場で、様々な恰好で回りに邪魔されずに寝ている姿を見ることが出来る。
2013年の国連レポートは「日本で犯罪で逮捕されることの汚名」について言及し、銃の所有者が少ないことが犯罪率が低い理由だとしている。2015年に発生した955件の殺人事件のうち、銃によるものは5件にすぎない。


Friday, July 15, 2016

天皇の退位がより現実的に【A12面(国際面)】

13日のNHKニュース7でスクープされた天皇生前退位のニュースは、14日の新聞各紙が一面トップで大きく伝えたが、WSJも翌日15日の国際面で速報した。

14日の定例記者会見の中での風岡宮内庁長官の「活動の中でいろいろなお考えをお持ちになることは自然なこと」を取り上げ、天皇が生前退位の意向を示されていることを側近がある程度認めたとしている。

***** 以下本文 *****
「82歳になる明仁天皇の側近は、即位後27年になる天皇が生前退位を希望しているという報道を完全否定したが、その後そのニュアンスを少し和らげた。」
「宮内庁のトップである風岡宮内庁長官は、木曜日の報道を否定したが、前日の山本信一郎次長によって出された完全否定から少しニュアンスを和らげた。風岡長官は天皇はその年齢から考えてその将来について考えるのは自然なことだと述べた。」
「仮に天皇が退位した場合、皇太子である徳仁が即位する。彼は、前後生まれの最初の天皇となる。」

Tuesday, July 12, 2016

アベノミクスは若者の指示を獲得【A7面(国際面)】

10日の参議院選挙での若者の投票行動について、12日の国際面で速報した。


若者の自民党支持者が増えていることを伝え、その原因が日本の経済不振にあるとしている。

***** 以下本文 *****
出口調査によれば、日本の10代と20代は、日曜日に実施された参議院選挙で、安倍首相が率いる連立政権を支持した。安倍首相が推進するアベノミクスと右寄りの安全保障政策がS支持された様に見える。
2015年に法律が改定され、今回の選挙で初めて18歳と19歳に選挙権が与えられた。安倍氏の率いる自民党とその連立党は上院の改選議席の121のうち、70議席を獲得した。
選挙日の調査によれば、18歳、19歳の40%が保守政党である自民党に投票し、20代、30代ではその数が40%以上になる。
エコノミストや政治学者によれば、日本の若者は、何年も続く経済不振の中で成長したため、高齢者に比べて、より保守的になっている。

Monday, July 11, 2016

日本の有権者は安倍首相に大きな勝利をもたらした【A6面(国際面)】

10日に投開票が行われた参議院選挙について、翌11日の国際面で速報した。安倍首相が今井絵理子と握手をして勝利を喜ぶ姿を、カラー写真で大きく掲載している。


安倍首相は参議院選の勝利により、憲法改正に必要な3分の2以上の議席を確保したが、憲法改正の議論は、日本国内の政治状況を混乱させるだけでなく、中韓両国との外交関係も悪化させ、膨大な時間を費やすことになる。日本は25年間も経済不振に苦しんでおり、これに終止符を打つことこそが安倍首相がすべきことであり、それこそが国民がこの選挙で自民党に期待したことではないかと言っている様に読める。

***** 以下本文 *****
日本の連立与党は日曜日に行われた参議院選挙で素晴らしい成果を示した。これにより、安倍首相は、軍隊に平和的な制限を課している現憲法の改正という長年の目標を達成するための議席数を確保した。
安倍首相率いる自民党とその連立相手である公明党は、242議席ある参議院において、改選議席121議席のうちの70議席を獲得した。
連立与党と憲法改正に賛成している一部の野党と無所属議員を合せると、上院の3分の2をわずかに上回る。憲法改正のためには、衆参両議院の3分の2以上の賛成が必要で、その後の国民投票で過半数の賛成を得る必要がある。今回選挙の無かった衆議院では、既に3分の2以上の議席を確保しており、これにより安倍首相は憲法改正のプロセスを開始することが出来る様になった。
自民党は軍事力の行使を制限している憲法第9条を削除することを長年にわたって支持してきた。この憲法は、日本が第二次世界大戦に負けた後の1947年に制定された。その憲法を改正すれば、戦争時の侵略による中韓両国への影響について、日本は全て認めていないとする中韓両国を怒らせることになるだろう。
選挙後の記者会見での安倍首相のこの問題についての発言は慎重で、まずは憲法審査会がよく検討すべきで、安倍首相本人が何を改正したいかについて発言するには時期尚早だと述べた。「ただ単に憲法改正に賛成か反対かといったことが問題なのではない。憲法改正に対する国民の理解がなければ、いかなる改正も国民投票で承認されない。」と彼は言った。
安倍首相が憲法改正の動きをとれば、それは国民を2分する激しい議論になるだろうし、国会内の様々な勢力の間で、やっかいな議論が繰り広げられることになるだろう。昨年、安倍内閣は、自衛隊が同盟国と共に海外で戦える法律を成立させた。この時でさえ、何か月にもわたる抗議行動が起こり、幾つかの抗議行動では数万人規模の国民が集結した。
今回の選挙は、安倍氏が首相について3回目の選挙だった。彼は、その全ての選挙で明確な勝利を成し遂げた。2009年~2012年の民主党政権時代の混乱により、国民は民主党幻滅していたが、その幻滅をうまく利用した。選挙において、安倍首相は2012年以降実現している安定を強調した。
「我々が行わねばならないのは、この道を確実に前進していくことだ。」と選挙運動中に安倍首相は語った。
世論調査によれば、アベノミクスについて反対している国民が賛成している国民より大いにもかかわらず、国民は安倍首相と自民党にリーダーシップと能力があるとみている。
ハヤマエイイチロウ氏(60歳)も、安倍首相の成果に満足していないにもかかわらず自民党に票を投じた一人だ。「経済が良くなったとは思わないが、自民党は他の政党よりはましだ。」と彼は言う。
安倍首相は2018年までは首相の座にとどまることになるだろう。沢山の経済問題があるにも関わらず。日本の人口は減少している。経済成長は止まっている。そして、かつてない程多くの人々が低賃金の非正規雇用にとどまっている。
アベノミクスは、過激ともいえる金融緩和や社外取締役の採用等を含むビジネス慣行の変更等を行ってきたが、日本の成長軌道に戻すまでの衝撃を与えることはなかった。輝かしい成果はあまりないのだが、円安(最近は逆戻りして円高傾向だが)のおかげで、たまたま株式市場や企業収益は改善した。安倍首相はこうした数値を成果として強調した。
不幸なリーダーが何代も続いた後なので、国民の多くが、安倍首相の経済政策の凡庸な成果を、高く評価してしまう。国民が不満を感じている経済不振は日本では新しいことではないのだ。この国は25年前に経済大国であることを止め、1990年以降金利とインフレ率はゼロのままなのだ。


安倍首相は3度目のチャンスを得た。【A14面(社説)】

10日に投開票された参議院選挙について、11日の社説で取り上げた。
 
安倍首相は、1990年から試みてきたのと同じ財政支出と金融緩和を続けているだけで、規制緩和への取り組みはこれまでのところ不十分だった。2014年には、労働市場改革に取り組もうとしたが、労働組合の反対で腰砕けになった。労働市場改革には、多方面化からの反対があるだろうが、今回の有権者から与えられたチャンスを政治力に転換し、何としても成し遂げて欲しいという内容。
(ウォールストリートジャーナル日本語版に同じ記事が掲載されていたので、下記に引用させて頂きました。)
***** 以下本文 *****
10日に投開票された参院選で、与党の自民党と公明党は改選過半数の獲得を達成した。この勝利はむしろ野党の弱さを反映したものだが、安倍晋三首相は国政選挙3連勝となった今回の結果をアベノミクスの再生に活用するだろう。
 安倍氏は約束した経済改革を進める代わりに、日本が1990年代から試みてきたのと同じ財政支出と金融緩和を続けている。経済はリセッション(景気後退)への突入と脱却を繰り返し、5月の全国消費者物価指数が前年比0.4%下落するなど3月からデフレに舞い戻っている。本人が適任かどうかはさておき、今回の選挙は安倍氏に日本経済の衰退を阻止するチャンスがもう一度与えられた格好だ。安倍氏にとって最善の策は、労働市場改革に立ち向かうことだ
 2014年、安倍氏は正社員の解雇を難しくしている規制を緩和する構えであるように見えた。だが労組からの反発の中でそれは腰折れとなった。代わりに、米国との軍事協力強化を可能にする憲法解釈の変更に軸足を置いた。それ自体は立派な試みだったが、あまりに不人気な政策だったため、安倍氏は経済改革を実現させる政治的資本に欠くことになった。
 今こそ再びトライする時だ。日本の労働法の下では、明らかに能力のない従業員でさえ何年にもわたる不当解雇訴訟を起こすことができる。日本経済新聞によると、日本には推定600万人の企業内失業者が存在している。
 日本の終身雇用制度は、戦後の高度成長期には機能していた。だが経済成長が鈍化し、高齢化が進むなかで、企業は解雇が容易な非正規従業員に雇用をシフトした。それによって雇用の2層構造が生まれ、特に若者に痛みを強いている。
 失業率が3.2%の低水準にあっても賃金が上昇しない理由は、非正規雇用の増加で説明がつく。企業は従業員を解雇する代わりに、非正規従業員の労働時間を減らしている。日本を圧迫しているのは失業よりもむしろ、大量の不完全雇用だ。
 政府は規制によって非製造業を競争から守ってもいる。マッキンゼーによると、日本の労働生産性の伸びが過去20年にわたり2%を下回っている原因はこれだ。この問題はサービス業界で特に顕著で、そこでは日本の生産性は米国の半分程度だ。
 東京大学公共政策大学院特任准教授の宮本弘曉氏は、日本の年功序列型賃金制度にも安倍政権は切り込むべきだと指摘している。成功報酬型の賃金は労働者の転職ないし起業に向けた柔軟性を高めるだろう。企業側には、さまざまな分野で経験を積んだ労働者を維持できるよう、退職年齢を引き上げる自由を与えられるべきだ。
 労働改革は、民進党だけでなく連立与党内からも激しい抵抗を受けるだろう。だが有権者から安倍氏への負託はこれで3度連続なのだ。日本経済の再生に最も重要な改革を断行するのであれば、安倍氏が選挙の勝利を使えるのは今回が最後だろう。

Friday, July 8, 2016

アベノミクスの不人気にもかかわらず、日本の安倍首相は人気を維持【A18面(国際面)】

 710日の参議院選挙で、自民党が圧勝する見通しだとする記事を8日の国際面に掲載した。



アベノミクスはうまく言っておらず、国民はその政策を必ずしも支持していない。それにもかかわらず、安倍政権や自民党への支持率は高いことは一見理解に苦しむが、その原因は民進党のふがいなさにあるとしている。民進党は、自民党の政策と鮮明に異なる政策を打ち出す能力が無く、安倍首相に比べてリーダーシップも弱い。保育園児童数の様な細かい点では無く、もっと大きな政策課題で、自民党との差を明確に打ち出さないと、自民党への不満を抱える国民の受け皿になり得ないと言っている様に読める。

***** 以下本文 *****
日本の有権者は安倍首相の経済再建に向けた取組みに満足していないが、日曜日(710日)に予定されている参議院選挙では安倍首相にもう一度勝利を与えるだろうと予測されている。
投票対象となるのは、衆議院に比べると力の弱い参議院の242席の半分だ。参議院では、安倍首相率いる自民党を中心とした連立政権が既に過半数を占めているが、世論調査によれば、更に議員数を増やす見通しだ。連立政権は、衆議院でも3分の2を占めている。
アベノミクスは、経済成長を促すことによりデフレを克服するための安倍首相の主要政策だが、国民の間では不人気だ。それにもかかわらず、安倍首相への支持率が高いのは、国民の間に広がる安定を求める気持ちや野党である民進党の不人気が反映されたものだろう。
民主党政権の末期は内輪もめやリーダーシップの混乱があった。2012年に安倍氏が首相の座に就くまでの数年の間に、日本では7回もの首相が交代した。
それから3年半が経過し、安倍首相の首相在位期間は、過去30間では2番目の長さとなった。
「我々の政策はまだまだ不十分であることを認めねばなりません。しかし、今この政策を止めてしまったら、(民主党が政権を持っていた)あの暗黒の時代へと戻ってしまうのです。我々は、この道をしっかりと前へ進んでいく必要があるのです。」と安倍首相は火曜日に松本市中心部で行われた選挙演説で述べた。
安倍首相はまた外交政策の継続性も強調する。安倍首相は、(自公連立政権は継続して)日米同盟を強化していくが、共産党は日米同盟を破棄しようとしていること、しかも、民進党はその共産党と連携して候補者を立てていることを指摘する
安倍首相は、経済を活性化させるという約束を果たしていない。成長は散発的だ。国民の殆どはアベノミクスによって生活が良くなったとは思っていないが、かといってものすごく悪くなったとも思っていない。日経新聞による最新世論調査によれば、56の人々が安倍政権を支持しているが、アベノミクスを支持する人は38%に過ぎない。ほぼ半数の人々はアベノミクスを支持していない。
水曜日に発表された共同通信による世論調査によれば、日曜日に行われる選挙で自民党は60議席を獲得する見通しだ。公明党と自民党の連立政権は、参議院の3分の2を確保することになる。
それだけ多くの議席を安倍政権に与えてしまうと、安倍首相が平和憲法を改正することが容易になってしまうと民進党は指摘する。
多くの国民は民進党を支持する理由を見いだせない。民進党の政策は自民党の政策と大差は無いし、リーダーシップも弱い。5月末に行われた日経新聞による最新世論調査では、民進党を支持する国民は8%しかいない。一方で、44%もの国民が自民党を支持している。

民進党の幹部は、自民党の政策は民進党の政策のマネだと指摘する。牧山弘恵参院議員は火曜日に松本市での選挙演説で最低賃金の引上げや保育園受入数の増加は、民進党が最初に提案した政策だと述べた。

Thursday, July 7, 2016

若者の意識を高めるため日本はおしゃべりするコメを起用【A1面】

77日の1面で、参議院選挙に向けて、若者の心を掴もうと的外れな取組みを行う、各政党の様子を面白おかしく伝える記事が掲載された。



民進党は「ファッション誌のモデルと議員の討論会」を開催、公明党は「進め!コメ助」というキャラクターを作成。自民党は「女子高生をモデルにした漫画」を配布。(この漫画は、女性と若者を馬鹿にしたものだとして批判を浴びたそうだ。)東京都は「りゅうちぇるとペコを起用した『投票都』なるビデオ」を作成し(このビデオは好評だった様だ。)、「輪入道らのラッパーを起用した集会」を開催。いずれの取組みも若者の心には響かなかったようだ。
こうしたバカバカしい記事が1面に取り上げられるのが、WSJユニークなところだ。

***** 以下本文 *****
今週末の参議院選挙で、今回初めて選挙権が与えられた18歳、19歳の若者に投票所へ足を運んでもらうために、選挙関係者はあの手この手のマーケティングキャンペーンを始めた。そこでは、若者の中に芽生えたばかりの民主主義的な考え方に訴えることの出来るであろう多くの外交官的キャラクターが起用されている。
例えば、金髪の男性モデルとその恋人、恋愛漫画の主人公、そして話をする米などだ。
野党の民進党は、若者の投票率をあげるために、10代のモデルに議員との対話集会に参加してもらおうとを考えている。そこでは、最新のスマホアプリや議員同士の恋愛といったゴシップについて語られる。最近のイベントでは、政府が取り入れるべき政策として、アイスクリームの無償化や捨てられたペット用シェルターの増設等が提案された。
「対話集会に参加するこうしたモデルは、多くのファンを持っている。こうしたイベントは、ファンたちに政治は彼らの生活の一部であり、従って投票すべきだと考えるきっかけになるかもしれない。」と民進党の初鹿明博議員は言う。
日本は、地球上でもっとも年老いた人口の多い国なので、若い世代になんとしても政治に関与してもらいたい。2014年の衆議院選挙では、投票率は過去最低を記録、高齢者の殆どが投票所に足を運ぶ一方で、20代は3人に1人しか投票しなかった。
選挙年齢を引き下げる法案は昨年成立した。6月に朝日新聞が実施した調査によれば、18歳、19歳の3分の2近くが、2大政党のいずれも支持していない。
進めコメ助は、しゃべる米粒だ。このキャラクターは、自民党と連立与党を組む、公明党が生み出したもので、その名前は公明党と米をかけている。コメ助は、議員にインタビューしたり、政策ビデオに登場したりして、有権者を教育する。
最新のビデオでコメ助は「公明党は若い世代が社会に参加出来る様にあらゆる手段を取ります。」と発言している。
コメ助はインスタグラムのアカウントも持っており、「僕、コメ助。東京出身です。米が大好きです。みんなと友達になりたいな。」と言っている。コメ助は様々なバージョンがある。ある時はストリートに出ているし、ある時はアイスクリームのお皿に中にいるし、またある時は赤いワゴンに乗っている。
公明党の職員でコメ助のインスタグラム用の写真撮影を担当しているオカモトワカナ(25歳)によれば、その人気は上がっていて、ハンドメイドのコメ助を作ってポストする人が出てきたり、コメ助のパロディ版であるムギ助も出てきたりしている。
東京都は、公民としての責任を浸透させるために、モデルのりゅうちぇるとそのガールフレンドであるぺこを起用した
インターネット上のビデオで、二人はアニメーションのネオン輝く不思議の国「投票都」を飛び回る。その都市は、ダンサー、花々、相撲取り、そして目や口のついた投票箱などで溢れかえっている。
東京都選挙管理委員会のインタビューで「選挙は公式のものでとても固いものと思われがちですが、選挙がお祭りの様なものだったら、若者は参加しやすいし楽しいだろうと思います。」とりゅーちぇるは語った。
この件について、東京都はコメントを拒否。りゅーちぇるとぺこの事務所にもコメントを求めたが、返答が無かった。月曜日にぺこはツイッターで投票に行ったことを公表した。(選挙は710日だが期日前投票が認められている。)
自民党は漫画本を12万冊配布して物議を呼んだ。漫画の中では、女子高生が好きな人の気を引くために投票する。
その漫画は5月に配布されて以来、若者と女性を馬鹿にしたものだとして批判を浴びた。
漫画の中で、主人公の女子高生は、片思いの男性である朝倉が友人と政治、経済や選挙の話をしているのと見る。朝倉に近づくために、彼女は朝倉の友人に一緒に投票に行かないかと尋ねる。
朝倉は投票に行くために女子高生を迎えに行く。かれはからかい半分で、「誰に投票するか決めた?」と尋ねる。「貴方と関係無いことでしょ。」と彼女が答える。「そりゃあ、関係ないさ。でも、僕は政治家の信条と目標について勉強したよ。
「批判があることは確かです。でも、こうしたやり方が若い人に投票の意味を知ってもらうためのベストな方法だと思います。」と自民党の広報担当者は言う。彼によれば、若者にアピールする配布物を作ったことのなかったベテランの議員から、個々の有権者にこうした漫画を配る様に要請があったという。
日本人の若者は、こうした様々な取組についてどう感じているのだろうか?

「若者はこうした対応について知らないのではないでしょうか。」と大学生のコヤマアイナ(19歳)は言う。「私は18歳に対しては、コマーシャルや雑誌や大学掲示板で宣伝する方が良いと思います。
選挙に行ってもらうためのこうした諸々の取組の効果は、投票結果が出るまでは分からない。一方で、無関心との戦いは続く。
先月、暖かい日の午後、東京の最も大きな駅の駅前で行われた2間のイベントに、東京都はラッパーを起用した。ラッパーの輪入道(26歳)は、黒いジーンズとTシャツに身を包み、集まった聴衆に対して、参加型民主主義の重要性を訴えた。
「俺でさえ、過去の全ての選挙で、投票したわけじゃない。」と彼はラップで伝えた。「つらいよ。でも、君たちは18歳で投票権を得たんだ。投票所に行くことに価値があるとは思わないか?」