Tuesday, November 18, 2014

日本は経済を救うために動く。【A1面】

日本のGDPが2半期マイナス成長を記録したことを受け、安倍首相が更なる景気対策と総選挙を考えているという記事が1面に掲載された。これで、3日連続して日本の記事が一面を飾った。



この記事は次の様な書き出しで始まる。
「世界第三位の経済大国である日本が不況に陥ったことが明らかになっている。こうした状況を受けて、安倍首相は再度の大きな経済活性化プランを計画すると同時に、彼が推進するアベノミクスへといわれる改革案が正しいかどうかについての議論が大きくなる中、急遽選挙を実施する準備に入った。」
「月曜日に経済が2四半期連続で縮小したという驚きの発表があったが、これによって対策を行うことが『絶対に必要』になったと、安倍首相の経済ブレインである本田悦郎氏WSJのインタビューの中で述べた。彼は、新たに250億ドルの現金拠出と減税を要求した。」

以下、ウォールストリートジャーナル日本語版から引用させて頂く。
 新たな経済対策は、GDPの2倍超にまで膨張した政府債務の拡大を抑えつつ、長期的な景気低迷からの脱却を目指す政府の取り組みが、一進一退の状況にあることを浮き彫りにした。安倍首相はつい先月まで、財政再建策の一環として2015年10月に消費税を再度引き上げる計画を実行するとみられていた。
 日本がリセッション(景気後退)入りしたことで、暗雲の垂れ込める世界経済の見通しは一段と暗くなったと言える。国際通貨基金(IMF)は約1年前、日本の2014年の経済成長率を1.2%と予想し、世界経済の回復が鈍い中での明るい材料として日本の景気対策を挙げていた。
 だが、足元ではIMF高官が、日本も世界の経済成長の足を引っ張る可能性を指摘している。
 欧州は既に、過去3年で3回目のリセッション入りが視野に入っている。世界第2位の経済大国である中国は、08年の金融危機以降、世界の経済成長をけん引してきたが、いまは景気が減速している。そのため、オーストラリアやブラジルといった商品(コモディティー)輸出国の景気が停滞している。
 米連邦準備制度理事会(FRB)内では、米国の景気回復はようやく加速の兆しが見られるものの、海外の弱さが障害になると懸念する声が広がっている。実際にそうなれば、市場が2015年半ばと見込む利上げの先送りを検討する可能性もあるとFRB幹部らは指摘している。
 安倍首相は18日、消費再増税の先送りを発表する見通しだ。また、全力でデフレ退治に取り組む使命について新たに国民の信任を得るため、衆議院を解散し、12月14日に総選挙を実施することも決めるとみられる。近年の日本経済は、賃金が下落し、需要が低迷するというデフレの悪循環により停滞している
安倍首相は17日夕、連立を組む公明党の会合で、「長く続いたデフレから脱却するチャンスをやっとつかんだ。私たちはこのチャンスを手放すわけにはいかない」と述べた。
 首相の発言からは、2年間の任期中の経済面での成果を訴えていくという選挙戦略が垣間見えた。現政権下で100万人の雇用が生まれ、賃金が上昇した上、観光業は好調で、日本経済に1兆円を超える観光収入をもたらしたとし、「経済の好循環が今まさに生まれようとしている」と語った。
 総選挙となれば、アベノミクスが機能しているかを問う国民投票の様相となるが、野党が選挙戦でこうした主張に反論してくるのは確実だ。
 デフレ脱却と景気回復を公約に掲げ、2年前の総選挙で地滑り的勝利を収めた安倍首相は、衆議院での任期を2年残して解散総選挙に踏み切るという賭けに出ようとしている。安倍首相が総裁を務める自民党は、衆議院の480議席のうち295席を占めているが、首相の側近でさえ、現有議席の確保が難しいことを認めている。
 政府関係者はこの数カ月、景気が回復軌道に乗っているのは確かだと繰り返してきた。だが、4月に消費税率が5%から8%に引き上げられたことで消費者は大きな打撃を受け、4-6月期と7-9月期のGDP成長率はマイナスへと押し下げられた。17日発表の7-9月期GDPは予想外に悪い内容だったため、安倍首相が来年に消費再増税に踏み切ることが不可能になった。
 7-9月期のGDPは前期比年率1.6%減と、4-6月期の7.3%減に続くマイナス成長となり、日本経済はリセッション入りした。
 エコノミストは一般に、年率ベースでみたGDPのマイナス成長が2四半期ないしそれ以上連続した場合をリセッションと定義している。
 消費増税後の成長鈍化と言えば、1997年の記憶がよみがえる。この年は4月の消費税率引き上げをきっかけにリセッションに陥り、日本は借り入れと支出の拡大を余儀なくされた。
 安倍政権の関係者は今年初め、2回目の消費増税の影響を相殺し、経済を下支えする方法の一つとして、景気対策を実施することを示唆していた。
 エコノミストらは今年の経済成長率予測を下方修正し、2%の物価上昇率というアベノミクスの主要目標の一つは達成が難しいとの見方を強めるようになった。
 RBS証券チーフエコノミストの西岡純子氏は「物価に関する弊社のこれまでの強気見通しを慎重方向に変えざるを得ない」と述べた。西岡氏はインフレ動向を特に楽観視していた民間エコノミストの1人。
 エコノミストの間では、日本銀行は10月31日に追加緩和に踏み切ったが、4-6月期にマイナス成長に陥ってから行動に出るまで時間がかかりすぎたと批判的な声も聞かれる。
 しかし、景気浮揚に向けて日銀にできることはもうほとんどないと指摘するエコノミストもいる。その理由として、日銀がインフレ押し上げを狙い、主に国債買い入れを通じて金融システムに大量の資金を供給したにもかかわらず、日本経済が大幅なマイナス成長に陥ったことを挙げる。
 明治安田生命保険チーフエコノミストの小玉祐一氏は「日銀はもう一度追加緩和を実施する可能性が高いが、量的・質的緩和の景気押し上げ効果の弱さはすでに明らかになりつつある」と述べた。
 消費増税が先送りされれば、日銀幹部は追加緩和にもっと慎重になる可能性がある。日銀は先月の金融政策決定会合で、追加緩和を賛成5、反対4の僅差で決めた。反対票を投じた政策委員の一部は、日銀の国債買い入れが、安倍首相の財政再建意欲をそぐ恐れがあると懸念している。
 首相のもう1人の経済政策ブレーンである浜田宏一内閣官房参与(米エール大学名誉教授)はインタビューで、景気の弱さが今後数カ月続いた場合、日銀は「なりふりかまわず」行動すべきだと述べた。浜田氏は、消費増税や円安で「困っている人にだけに」現金給付を行うことに支持を表明した。
【記事は以上】
書き出しのインタビューに出てくる本田悦郎内閣官房参与は、FNNの取材に対して、「最初聞いた時は、何かの間違いじゃないかと思いました。増税を実施するという状況にはないと、私は確信しております」と述べたという。安倍首相のブレイン中のブレインですら、今回の2四半期連続マイナス成長は驚愕の内容だったのだろう。
「1997年4月の消費税率引き上げをきっかけにリセッションに陥り、日本は借り入れと支出の拡大を余儀なくされた。」とある。今回はそうならないことを望むが、不安でならない。

Monday, November 17, 2014

日本経済は不況に陥る。【A1面】

日本の第二四半期のGDP成長率がマイナスだったいうセンセーショナルなニュースを1面で速報した。


この記事は次のような書き出しで始まる。
「日本経済は、消費税増税以降、二期連続でマイナス成長となり、安倍首相の日本経済を再生の世界的な見本としようとする取り組みに、冷や水を浴びせることになった。」
「安倍首相は、世界第三位の経済大国を20年間にわたる不況から脱却させるために尽力したが、今週、来年に予定されている消費税増税の延期と12月の総選挙を発表するだろう。」

長い記事なので、暫く要約する。

第二四半期のGDPは、前期のマイナス7.3%に続いてマイナスで、実にマイナス1.6%だった。これは、日本が不況に陥ったことを意味し、安倍首相が取組まねばならない課題の大きさを物語っている。WSJの18人のエコノミストへの調査では、マイナス成長を予測した者はおらず、平均はプラス2.25%だった。民主党の枝野幹事長は、「アベノミクスは限界に来たと自信を持って言える。」と語った。

このマイナス成長は、消費税を4月1日に5%から8%に上げたことにより、消費者心理が冷え切ったことによる。例えば、個人住宅投資は、第二四半期に年換算で24%縮小した。安倍首相の側近は、第二四半期の成長率が良くない場合、消費増税を18ヶ月延長することを先週示唆。また、日本のメディアは総選挙が12月14日に実施されると語った。

選挙になれば、自民党の圧勝が予測されていたが、日曜日の沖縄選での惨敗に加えて、第二四半期のGDP数値が予想以上に悪かったことは、野党を活気付かせている。

米国、欧州、日本は、いずれも、緊縮財政重視が成長戦略重視かという、厳しい戦略を迫られている。消費税増税時期を遅らせたことにより、安倍首相は、成長戦略重視の戦略を選択したことになる。米国政府関係者は、このことを歓迎している。

この記事は次の様なコメントで締めくくられている。
「多くのエコノミストはこの先は明るいだろうと見ている。7~9月期には企業が在庫を圧縮しており、最悪の時期が過ぎたとみているのだ。『我々は、経済は緩やかに回復に向かっているとみています。』と野村證券のエコノミストのキノシタトモ氏は語る。『この先の経済について悲観的になる理由は全くありません。』」

第二四半期の数値は、予想をはるかに越えて悪かったが、そう悲観的にならなくて良いと言っている様に思う。

Saturday, November 15, 2014

より多くの魚が養殖所から食卓へと跳ねる。【1面】

「近大マグロ」に関する記事が、一面に掲載された。ウォールストリートジャーナル日本語版でも、ほぼ同一の記事が掲載されていたので、そちらを拝借させて頂く。


ある朝、ボートに乗っていた岡田貴彦氏の携帯電話が鳴った。東京のデパートからの緊急注文の電話だった。高級食材売り場の刺身が足りないので、マグロを一匹、至急追加で送ってほしいというのだ。
 近畿大学の研究者で水産養殖種苗センター大島事業場長の岡田氏は喜んでその注文に応じた。同氏には釣竿も網もいらなかった。岡田氏からその注文を伝えられたダイバーは、丸い生簀に飛び込むと、養殖場で生まれ育った約40キロのクロマグロを捕獲して引き上げた。その魚はボートの上で即処理された。
 少し前まで、マグロの完全養殖は不可能だと考えられてきた。だがその事業は今、世界の食糧供給を劇的に変えつつある水産養殖のより広範な革命の一環として軌道に乗り始めている。
 学者であり、ビジネスにもかかわっている日焼けした57歳の岡田氏は「最近では注文がどんどん来るので、大きくなる前にとってしまっている」と言う。「あと1年おいておけば、60キロくらいに、ずっと大きくなるのだけれど」
数十年に及ぶ消費ブームであらゆる魚の自然個体群が激減したことで、需要は次第に養殖場育ちのシーフードで満たされるようになっている。世界の魚の生産量に占める養殖魚の割合は2012年に過去最高の42.2%に達した。1990年は13.4%、2000年は25.7%だった。今や世界のエビ消費量の実に56%が養殖もので、そのほとんどは東南アジア・中国産だ。カキの場合は孵化場で発生した幼生が海中で育苗される。1980年代半ばにようやく本格的に始まったタイセイヨウサケの養殖は、今や世界の生産量の99%を占めており、地元の水系の汚染や天然魚への病気の蔓延で批判を招くほどとなっている。
 最近まで、クロマグロはこうした飼育を拒んできた。クロマグロは大きいものだと400キロにもなり、海中を最高時速48キロで泳ぐ。太平洋を回遊する距離は1カ月間で数千キロに達することもある。この大きな生き物は気難しくもあり、光や音、水温の微妙な変化によっても簡単に動揺してしまう。また、常に前に泳いでいなければならないので衝突死もしやすい。
 日本人はクロマグロを「本マグロ」と呼ぶほど、その脂の乗った身を珍重している。海のポルシェと呼ぶ人もいる。築地の初競りでは、222キロのクロマグロに1億5540万円(1キロ当たり70万円)の値が付いたこともある。
 こうしたこともあり、天然のクロマグロは危機的状況にある。太平洋のマグロ漁を監視している国際科学委員会(ISC)の見積もりによると、今日の資源量は、冷凍機能を持った日本の漁船が操業を始めた頃にあたる1960年代初めピーク時から5分の1以下。現在の自然個体群は4万4848トン、約900万匹と推定されており、その数はこの10年間でほぼ半減している。
 減少を加速させたのは、皮肉なことに、マグロの養殖業だ。漁師たちは天然の幼魚を捕らえ、生簀で成魚に育てることが多かった。次世代の多くを海から取り除くことになるこのやり方は繁殖の大きな妨げになってきた。
 近畿大学の専門家たちは異なるアプローチを取ってきた。彼らは食料不足を緩和するために第2次世界大戦後すぐに養殖を研究し始めた。研究者たちは「海を耕す」というモットーの下、カレイやカンパチといった日本人の食事で人気の魚を養殖するための専門知識を蓄積していった。
 世界の食卓がトロの刺身を求め始めるずっと以前の1969年、近畿大学はクロマグロを飼いならすという壮大な挑戦に着手した。クロマグロの卵、仔魚、稚魚、成魚という生殖周期のすべてを養殖システムのなかで完成させることを目指したのだ。
近畿大学の2人の研究者が、飼育するための稚魚を捕獲するために地元の漁師と海に出た。現在78歳の熊井英水名誉教授は「われわれ研究者はとにかくマグロをやりたくてしょうがなかった。図体が大きくて、速くて、とにかく特別」と話す。「大変だということは、最初から分かりきっていた」。
 しかしその大変さは想像以上だった。研究者たちが数匹の稚魚をつかんだ瞬間、そのもろい皮膚は崩れ始めた。稚魚を捕獲して傷つけずに生簀に移すには繊細で素早く外せる釣り針が必要で、その完成にだけでも4年の歳月がかかった。
 「地元の漁師たちには、マグロを飼うなんてことは出来っこない。先生たち、気が狂っているんではないかと言われた」と熊井教授は振り返る。
 2011年、東北地方太平洋沖地震が引き起こした津波が640キロ離れた海岸線を襲った後、近畿大学は2600匹の成魚のうち300匹以上を失った。津波のせいで潮の流れが急変して海水が濁ったことで、パニックに陥ったクロマグロがネットに衝突したのである。昨年は1つの台風で生簀の魚の大半を失った。今年の夏も台風が頻発し、産卵期が始まるのを待っていた研究者たちは緊張を強いられた。岡田氏は鋤を使って山盛りのサバを生簀に投げ入れながら「祈るのみということもある」と語った。
 捕獲された天然のクロマグロが近畿大学の研究用の生簀で卵を産むまでには10年近くもかかった。その後1983年から11年間、クロマグロは卵を産まなくなり、研究者たちには何が問題なのかも分からなかった。彼らは現在、それが1日のうちに起こる水温低下のせいだったと考えている。九州にある別の施設で産卵させることに成功してから、ようやくわかったことだ。
 1994年の夏、生簀で飼われていたクロマグロはやっと産卵を再開した。研究者たちはそれを喜び、2000匹近い稚魚を沖合にある生簀に入れた。ところが翌朝、そのほとんどが首の骨を折って死んでいた。数週間後に手がかりが見つかるまで、その原因は謎だった。
 研究所で一時的な停電が起き、その後に照明がついたとき、そこにいた稚魚の一部はパニックに陥って衝突死してしまった。熊井教授と同僚たちは、自動車、花火、雷などから急にまぶしい光が放たれると、魚はパニックに陥って互いに衝突したり、壁に突っ込んだりしてしまうということに気付いた。この問題の解決策は、照明を常時点灯させておくというものだった。
 熊井教授は50年近くにわたって大学の研究用生簀からほど近い、静かな入り江の岸に住んできた。「家族が魚なんです」と教授は言う。
そしてまた教授は「魚は口で抗議できないから死んで抗議する」と説明する。「われわれは魚に聞けと言うが、よく観察して、死ぬ前に感知しなければいけない」。
 2002年、ついに成功が訪れた。近畿大学の研究チームは飼育されていた親の卵から育ったクロマグロを産卵させることに世界で初めて成功した。生殖周期が完成したのだ。
 しかし、生存率は低いままだった。タイセイヨウサケの養殖は数十億ドル規模の事業にまで発展した一方で、マグロの養殖の商業的成功は長年のあいだ疑われてきた。
 近畿大学はそのプロジェクトの費用を、研究施設で育てたより一般的な魚を売った利益で賄ってきた。おかげで、他の学術・商業機関があきらめた後もマグロの養殖研究を続けることができた。
 その後、近畿大学はより豊富な資金力を持つスポンサーが必要になるが、2006年から2010年にかけてはそれを得る絶好のタイミングだった。寿司や美食家好みの高級魚に対する世界の旺盛な食欲はクロマグロの自然個体群を徐々に減らしていき、各国の政府はその乱獲を取り締まり始めていた。
 マグロ不足のリスクが最も大きかったのは、年間で4万トン、世界の漁獲量の80%を消費する日本だった。三菱商事や双日といった水産事業を広く展開している商社が近畿大学の研究者たちに接近をはじめた。
 トヨタ自動車の関連会社、豊田通商のある若い社員は初期の支援者の一人だ。マグロ養殖プロジェクトに関するドキュメンタリーを見たとき、福田泰三氏は名古屋にある同社の経理部に勤務していた。インスピレーションを受けた福田氏は社内の新規事業公募にマグロ養殖事業を提案し、採用されたのだった。
 現在39歳の福田氏は1億円の元手を携え、マグロの養殖研究の責任者である岡田氏を何度も訪ねた。研究チームが豊田通商との提携に合意したのは2009年だった。「30年間やってきた、彼らのあきらめない気持ちに感銘し、是非、一緒にやらせてくださいとドアを叩いた」と福田氏は振り返る。
 豊田通商は、大学の研究所で孵化した多くの仔魚が約4カ月間飼育されるより大きな施設の費用を受け持った。この中間育成という段階を生き延びた稚魚は商業的な養殖場に売られても大丈夫なくらい安定してくる。稚魚はそこで3年から4年育てられ、丸々と太った成魚となってから食用として売却される。
 福田氏は経理の職場を去り、マグロの仔魚を育てるのに理想的な温暖な気候に恵まれた長崎県の五島列島に移り住んだ。彼は生簀を設置するための漁業権を譲ってもらえるように地元の漁師たちを説得した。ダイビングのライセンスをとり、ボートの操縦も学んだ。
 しかし近畿大学の研究所からタンクに入れられ、トラックで運ばれてきた最初の仔魚の90%は死んでしまった。福田氏は次の輸送から船を使うことにした。冬の寒気が訪れると、さらに多くの魚が死んだ。福田氏は魚の体温を維持するための人工飼料を開発するために飼料会社に協力を依頼した。福田氏はバイヤーたちへの出荷の準備段階でも多くのマグロを失った。出荷用ボートに移すとき、マグロはからだを船体に強く打ちつけてしまった。マグロを出荷用ボートに移すために、滑らかな素材でできた巨大なじょうごが開発された。
 福田氏はトヨタ自動車の製造哲学である「改善」を引き合いに出し「もの作り商社で、できないものもできるようにする、改善の精神で知恵を出してやっていこうということ」だと語った。
 過去3年にわたり平均2万匹の稚魚を出荷してきた豊田通商だが、来年はその数が4万匹に増加すると見込んでいる。
 近畿大学の稚魚の飼育能力もだいたい4万匹で、両者を合わせると、日本のマグロ養殖業界における稚魚需要の20%近くを供給できることになり、自然個体群の減少緩和にもつながる。福田氏が5年前に提案したこのベンチャーは今年初めて「とんとん」になりそうだという。
 今日、近畿大学での卵から孵化した仔魚が成魚になるまで生き残る確率は100匹中1~2匹だが、数年前には数百匹に1匹という確率だった。これに対して、自然界で卵から孵化した仔魚が成魚になるまで生き残る確率はわずか3000万匹に1匹程度と推定されている。
 豊田通商以外の企業もマグロ事業を拡大している。三菱商事グループの東洋冷蔵は長崎県にマグロの養殖場を新設し、近畿大学が人工孵化させた稚魚を育てている。同社は今年、昨年の40トンから大幅増となる300トンの養殖マグロを出荷したいと考えている。
 近畿大学のベテラン研究者である熊井教授は「世界は空前の魚ブームで、今まで魚を食べなかった国までおいしい魚を求めている。養殖で自給率を高めるべきだ。これ以上、天然の資源に手をつけてはいけない」と主張する。
 日本では、養殖マグロに対する高級食料品店や寿司店からの需要が確実に高まっている。近畿大学も自ら東京と大阪で1軒ずつレストランを経営しており、2軒とも数カ月先まで予約が取れないほどの人気となっている。国内の主なマグロ養殖地の1つである長崎県が2013年に出荷した養殖クロマグロは3000トンに達し、その量は5年前の5倍近くにも増加している。
 それでも環境に対する懸念は消えていない。クロマグロを1キロ太らせるにはアジやサバなどの餌15キロが必要になる。そのため、近畿大学の研究チームや水産業者はマグロに適した人工飼料の開発をすすめている。そうした飼料の成分の30%を植物性タンパク質にすることができたが、その割合をさらに増やす試みは失敗に終わった。マグロの成長が鈍化してしまうのだ。
 養殖マグロは天然ものと同じくらいおいしいのだろうか、という疑問もある。脂身が珍重される日本市場においても、近畿大学の初期の養殖マグロには一部の顧客から脂っこ過ぎるという苦情が出た。近畿大学の研究者たちによると、この問題は飼料の配合を変えることで解決できたという。
 最大の問題はやはり、マグロ養殖場における稚魚の生存率の低さだ。
 近畿大学の岡田氏は完全養殖のクロマグロと天然ものとでは「見かけは変わりないが、性格が違う」と指摘する。岡田氏の説明によると、養殖魚は「デリケートで気難しく」、日によって好む飼料が変わるという。また急な危険を回避する能力に劣るため、致命的な衝突事故を起こしやすいという傾向がある。
 研究者たちは形態異常が大量発生する可能性についても心配している。というのも、すべてのクロマグロは2002年に生まれた完全養殖魚の子孫であり、遺伝系統が同じだからだ。研究者たちは遺伝子プールを多様化させるために、天然魚を持ち込んで養殖魚と交配させるという実験をしたが、まだ成功には至っていない。
 「人工の魚はちょっとおばかさんなのかなとみている」と岡田氏は言う。「ただ、自然の中では、何千万匹に1匹しか生き延びられないが、ここではわれわれの下手くそな手でも、100匹に1匹は育ってくれる。だから、ちょっとぶきっちょでも、仕方ないのかなと」。
この記事は、1面から始まり、10面を全て潰し、3つの写真とグラフと図を入れた力作である。ニューヨークの高級和食店「モリモト」が近大マグロを使っているのは有名だが、カリフォルニアでも高級店では、近大マグロを口にすることが出来る。そして、美味しい。

Tuesday, November 11, 2014

アジアの2大経済大国の首脳間の冷たい雰囲気。【A11面(国際面)】

10日に開催された日中首脳会談についての続報が、11日の国際面に掲載された。




この記事は次の様な書き出しで始まる。
「日中間の雪解けに向けた第一歩は、冷め切った雰囲気の握手で始まった。このことが、アジアの2大大国が直面する困難を物語っている。彼らは地域における毅然としたリーダーシップを取ろうとして、競い合っているのだ。」
「月曜日の会談は関係改善への期待を膨らませるものだった。過去2年間の東シナ海の諸島についての紛争に関心を向けるものだった。」

暫く要約する。

2国は、海洋での事故を避けるための危機管理システムを準備することで合意した。また、彼らは、時間をかけて2国間にある様々な問題を解決していくことでも合意した。
しかし、明らかに2国間の関係は緊迫している。会談は30分も続かなかったし、外交的社交辞令もなく、握手の時の表情も硬く、全く暖かい雰囲気は感じられなかった。
安倍首相が2国間の新しいビジョンの必要性を強調する度に、習主席は歴史問題の重要性を強調した。安倍首相は保守派で、日本が過去に行った戦争時の行為に対する謝罪について不快感を示していた。しかし、今回、安倍氏は過去の謝罪を維持するとした。
安倍首相は、中国、韓国という2大大国の首相との関係が弱いことを批判されており、習主席との会談を強く望んでいた。一方、中国は日本から依頼された会談を受け入れることにより、度量の大きさを見せ付けることができた。

この記事は、次の様なコメントで締めくくられている。
「しかし、温かみの欠如、特に習主席から彼のライバルへの温かみの欠如は、この2国間のダイナミックな関係の変化を物語っている。中国は経済成長が著しく、軍事面でも確固たる礎を築いている。一方の日本は、その影響力の低下に苦しんでいる。経済的な影響力さえ維持するのが大変だ。安倍首相の側近である加藤勝信によれば、安倍首相は、2国間が国民レベルでの相互理解の推進を図り、経済的な連携を強化し、東シナ海で協調し、東アジアの軍事的安定に貢献することを提案した。」
「安倍首相は、絶滅の危機が懸念され、日中間の友好関係を象徴するトキをテーマにした、中国のバレエについて言及した。加藤氏によれば、習主席は笑顔を見せたと言う。また、加藤氏によれば、馬蹄型の座席配置の中央に両首脳が座り、『紳士的な』雰囲気の中で行われた。」

安倍首相は朱鷺の話題を出したりして温かい雰囲気を出そうとしているのに、中国は乗ってこない。日本と中国の間には勢いの差があり、仕方がないと言うことか。

Monday, November 10, 2014

中国の習と日本の安倍が会う。【A14面(国際面)】

11月10日に実現した日中首脳会談を、時差を利用して、同日の国際面で速報した。



この記事は次の様な書き出しで始まる。
「中国の習近平主席と日本の安倍晋三首相は双方が2年前に権力の座について初めて顔を合わせて話し合いを行った。過去2年間冷え切っていて、未解決の問題で争ってきた関係に、雪解けムードを与える可能性がある。」
「安倍首相は会談後に記者団に対し『私は日本と中国はその関係改善のための第一歩を踏み出したと思う。相互に恩恵を受けられる戦略的関係という原則にに立ち戻るのです。』と述べた。」

暫く要約する。

APECの傍ら行われたこの打ち合わせは30分足らずだったが、その実現のために、両国の多くの役人たちが裏で多くの交渉を行った。この打合せは、その実現を長い間望んでいた安倍首相の外交的勝利と言えるだろう。「我々は、このAPECの機会を利用して、両国首脳が会話を開始することに、大きな努力をしてきました。」と安倍首相は述べた。「そうした努力が習主席との会談を実現させたのです。」新華社通信も、この会談が日本の要請に基づいて実現したものであることを認めた。

先週金曜日に両国が発表した合意文書は驚きであったが、この会談はそれに続くものだ。尖閣諸島を巡る紛争は、両国の経済関係を損ねるのではないかと懸念されてきた。安倍首相は両国はまた海洋での有事を避けるための緊急メカニズムの構築も行うと述べた。日中首脳の会談は2011年12月以来のことだ。

「外交官によれば、習主席は、米国のオバマ首相やロシアのプーチン大統領らが出席するこのイベントを利用して、中国がこの地域において、卓越した存在であることを示したかった。」
「習主席、安倍首相は共に、前任者達よりも、力のあるリーダーだとみなされた。」

今回の会談に関しては、安倍首相を手放しで絶賛している。目標に向かって、強いリーダーシップを発揮して、それを実現していくリーダーがアメリカ人は好きなのだろう。

日銀のインフレについての決定の裏で。【A14面(国際面)】

10月31日の日銀の追加金融緩和策についての続報が国際面に掲載された。

ウォールストリートジャーナル日本語版にほぼ同じ記事があったので、引用させて頂く。
「日本銀行が10月31日に開催した金融政策決定会合の主な目的は、政策変更ではなく景気見通し改定になるはずだった。」
「だが日銀の見解に詳しい関係者によれば、政策委員がそれぞれの見通しを提出するにつれ、憂慮すべきパターンが明らかになった。委員らは物価見通しを下方修正し、少なくとも1人は2015年度のインフレ率が1%未満に落ち込むとの見方を示した。」
「日本は日銀が脱却を誓ったデフレ環境に再び向かいつつあった。さらに悪いことに、日銀はそれを公に認めざるを得なくなる状況が迫っていた。」
「2%の物価目標達成に向けて順調だと何カ月も発言していた黒田東彦総裁は、会合直前に大胆な提案を行った。それは13年4月に開始したインフレ促進策を30%程度拡大するというものだ。黒田総裁は新たな景気見通しがこの巨額の流動性供給を反映し、より楽観的なものとなることを期待した。」
「日銀職員は正式な提案の作成に日付が変わるまで取り組んだ。31日午前9時に8階会議室で金融政策決定会合が始まったとき、黒田総裁の支持者は賛成多数になることを期待しつつ、日銀総裁として初めて提案を否決される可能性もあると神経をとがらせていた。関係者によれば、その後はこれほど迅速に大規模な措置を講じることに関して幅広く意見が交わされ、議論は時に熱を帯びた。」
「開始から3時間以上が経過したとき、職員が集計用紙を回付、政策委員それぞれが賛成または反対の欄に署名した。委員の票は4対4で分かれ、黒田総裁が賛成票を投じて結論が出た。その後、物価見通しがやや引き上げられた新しい景気見通しが承認され、黒田総裁は2時間後の記者会見で、自身の物価目標がまだ達成可能だとするもっともらしい理由を述べることができた。」
「今回の措置を関係者への取材に基づき分析すると、黒田総裁の戦略の新たな面が見えてくる。総裁は断固として予防措置を講じる決意で、国民のインフレ期待や、追加措置に関する市場の期待が後退する前に動こうと心がけている。」
「この点は後手に回ることの多かった歴代総裁と対照的だ。」
「31日の決定はサプライズ要素もあり、日本株を8%近く押し上げたほか、海外市場でも株高を導いた。追加刺激はまた、賃金をめぐる大企業の労使交渉が12月に始まることをにらんで決まった面もある。賃金はインフレの『好循環』が経済成長を促進するという黒田総裁のビジョンの中心をなす。好循環とは、労働者が物価上昇を予想して賃上げを要求し、企業側もコスト上昇をカバーするだけの値上げが可能だと確信して賃上げに応じる、というものだ。黒田総裁は31日の記者会見で、デフレ脱却に向けた取り組みが重大な局面を迎えたとの認識を示した。」
「10月6~7日の政策決定会合の議事要旨によると、このときは追加緩和の議論すらされなかった。」
「それでもインフレ率低下の兆候はあった。」
「関係者によると、景気見通しと政策が日銀内部で本格的に議論されはじめたのは29日だ。政策委員会は15年度の公式物価見通しを直近では7月に公表していた。その時点での予想中央値は1.9%で、黒田総裁の掲げる2%に近かった。今回、各委員から新たな見通しが提出されるにつれ、中央値は1.5%近くに低下する公算が大きくなった。」
「これは黒田総裁にとって、追加刺激策が必要との認識を強める要因になった。」
「追加策の議論を始めるにあたり、黒田総裁を支持する向きは総裁自身と副総裁2人の計3人の賛成を確信すると同時に、少なくとも2人の懐疑派の同意は得られないこともほぼ確実だと考えていた。」
「残る4人が2対2で分かれ、黒田総裁は過半数の賛成を得るに至った。」
日銀の緩和策決定については、当日一面トップで速報した後、社説を含めて2回続報を掲載しており、今回が3回目の続報。この件に関するWSJの並々ならぬ関心の高さを感じる。この政策そのものについては、若干懐疑的な報道をしているが、黒田総裁のリスクを取る前向きな姿勢については大きく評価している様に読める。


 

Saturday, November 8, 2014

日本は原子炉再開への大きなハードルを取り除く【A6面(国際面)】

九州電力・川内原発の再稼働をめぐり、鹿児島県議会と鹿児島県の伊藤祐一郎知事が、同意を決めたニュースが、国際面に掲載された。

この記事は次の様な書出しで始まる。


この記事は次の様な書出しで始まる。
「金曜日に日本で原子力発電所を再稼動させるための最後のハードルが取り外された。日本の南部の県で、原発再稼動への許可が与えられたのだ。これは、安倍首相の勝利だ。」
「鹿児島県のこの決断は、九州電力が2つの原子炉の運転再開のための道を開いた。現在、日本の48の原子炉全てが稼動停止になっているが、これらの2つの原子炉は2103年9月に48の原子炉の最後として停止した。安倍内閣は原発が経済成長のために不可欠だと主張している。日本は天然ガスや石炭を輸入に頼っているからだ。」

暫く要約する。

世論は原発再稼動に2対1の割合で反対しているため、安倍首相は、この件について表向きは何の反応も示していない。日本は2011年3月の福島第一原発のメルトダウン以来、安全基準を強化したが、薩摩川内原発は10月にこうした基準をクリアした。そして、金曜日に県議会がお墨付きを与えた。県議会での発言は、反対派の怒号で聞き取れなかった。最近実施された世論調査では、60%の国民が再稼動に反対している。

この記事は次の様なコメントで締めくくられている。
「他の電力会社は九州電力に従って、来年に原子炉を再稼動させたいと考えている。しかしながら、多くの日本の原子炉は、大変に古いか、地震に襲われる可能性の高い場所に建設されている。日本がいつ原子力発電から多くの電力を得るのかは不明確だ。」
「原子力発電所の停止は発電所のある市の経済に打撃を与え、輸入原料の価格高騰により日本の電力価格は20%上昇した。」

WSJは、原発問題賛成派だと思う。同紙のこの問題への関心は高い。