Tuesday, June 19, 2018

貿易戦争が日本と中国を接近させる【A7面(国際面)】

日中が急速に接近してきているとする記事が19日の経済面に掲載された。



日本から中国に大量に輸出される電子部品を使って、中国がiPhoneなどの最先端製品を作って米国に輸出する。トランプ大統領は、これらの中国製品に関税をかける。こうしたトランプ大統領の措置は、中国だけでなく、日本にも影響を与える。従って、トランプ大統領の政策には、日中ともに批判的だ。しかも、中国経済は減速しており、経済面での日本の協力は、中国にとって不可欠だ。こうした状況により、今まで、険悪な関係にあった日中関係が急速に改善してきているとしている。トランプ大統領の「米国第一」主義が、これまでの親米国の態度に変化を及ぼし、世界のパワーバランスに影響(米国にとって悪い影響)をもたらしているとして、警鐘をならしている様に読める。


***** 以下本文 *****
トランプ大統領の中国に対する貿易分野でのタフな対応は、安倍首相に中国と合意することを与えることになった。
安倍首相は、中国とは長年に渡り領土や安全保障分野での紛争を続けてきたが、今や関係修復を模索している。これは、戦後の自由貿易体制を維持するために、日本が同盟国を必要としていることを反映している。これはまた、トランプ大統領の「米国第一」政策が、いかに世界における国家間の関係を変質させているかを示す良い例だ。トランプ大統領は、輸入が米国を脅かしており、それを減少させる必要があるとしている。
「私は、日中関係を新たな段階へ引き上げたいのです。」と安倍首相は、今月の記者会見で述べた。中国の李克強首相は、5月に日本を訪問したが、この訪問についても、「劇的な改善への重要な第一歩だ。」と述べた。
ここ数ヶ月は、日中両サイド共に、これまで行われてきた非難の応酬を避けている。これまで、日本は、軍備を使って地域の安定を脅かそうとしているとして中国を非難してきた。一方、中国は、安倍首相が軍隊を再強化することにより、歴史からの教訓を無視しているとして、日本を非難してきた。
李首相は、訪日中に、日本が輸出大国として中国と補完関係にあると述べた。こうした補完関係は、米国の様な第3国に対する強い競争力になるとも述べた。彼は、これまで2国間の関係を引き裂いてきた歴史問題については、殆ど触れなかった。日本は、1930年代の侵略により、中国の多くの部分を占領した。そして、日本に未来志向の関係構築を目指して欲しいと繰り返し述べた。
日本は、昨年度、中国に約1,370億ドルの商品を輸出した。その多くが半導体などのハイテック電子部品だ。それらの電子部品は、中国の「工場で、米国向けのiPhoneどを作るのに使われる。
従って、トランプ大統領が、ハイテク製品にフォーカスして、中国製品に500億ドルの関税をかけると、日本も最終的には打撃を受けるのだ。
記者会見で、日本は、自由貿易の守護神として、米国よりも中国の方が優れているとみているかと問われ、安倍首相は、国家間の関係をその様に単純に見るのは間違っていると述べた。「日本と米国は、強い絆で結ばれた同盟国だ。」と彼は述べた。
しかし、中国と日本は、米国の貿易政策について、多くの共通のフラストレーションを抱えている。日本の役人たちは、ハイテク分野でグローバル企業を生み出すために補助金を出すなどの中国のビジネス慣行を変更すべきだとするトランプ大統領の主張には賛成だ。しかし、彼らはまた、中国に対するいかなる対応もWTOのルールに従うべきだとしている。
中国側の幹部は、日本の働きかけに対応することにメリットを感じている。米国の動きによってもたらされた不安を抱く各国は、中国の習近平主席に、中国を日本同様、自由貿易を擁護する信頼できる大国だとみなすかもしれない。これは、中国の周近平主席にとってチャンスだ。
11月の広く知られているスピーチで、習主席は「我々は、多国間主義を擁護し、より緊密な関係を構築する。」と述べた。
それに加えて、中国自身の経済も減速している。このため、中国は、投資や製造に関する先端技術などを求めて、より日本に接近している。習主席と安倍首相は、5月に初めて電話で会談し、関係を改善するのに絶好の機会だという点で一致した。