Saturday, June 17, 2017

ワームビア事件への疑問は、日本の拉致被害事件と重なる【A7面(国際面)】

北朝鮮に拘束されていた米国人ワームビアさん(22歳)が613日に解放されたが、WSJ17日の国際面で、日本人拉致事件を引き合いに出し、この事件について北朝鮮から誠意ある対応を期待するのは難しいとの記事を掲載した。(ワームビアさんが亡くなられたのは19日でこの記事掲載の後。)



ワームビアさんについては、北朝鮮から拷問を受けていたのではないかとか、人体実験の対象にされていたのではないかなどの憶測が飛んでいるが、この事件について、北朝鮮から明確な説明を得るのは、極めて難しいことを、日本の拉致事件での日本の経験を引用しながら、明らかにしている。「2004年に一部の日本人拉致被害者の死因の説明があったが、全く信用できないこと。」「2002年に拉致被害者の一部が日本に戻されたが、この際には日本は数千億円のお金を北朝鮮に支払っていること。」などをあげ、何等かの見返り無しには、北朝鮮からの誠意ある説明は期待出来ないとしている。全く予想外の事件から、これまで米国であまり報道されてこなかった、日本人拉致事件が一躍脚光を浴びている。

***** 以下本文 *****
北朝鮮で収監中に脳に重大な傷を負っていた米国学生のオットー・ワームビアさん、彼の事件には大きな疑問点がある。昏睡状態を引き起こしたのは北朝鮮なのか?
米国の医者や親族は回答を求めているが、韓国に拉致された日本人の家族の経験を見る限り、北朝鮮から信頼できる説明を得ることは極めて難しそうだ。
ワームビアさんの父親は、木曜日の記者会見で、ボツリヌス菌に感染し、睡眠薬を服用し後に、意識不明におちいったとする、北朝鮮の説明は信用できないと語った。
米国で22歳のワームビアさんを診察した医者もボツリヌス菌を示す証拠は見当たらないと述べた。
ワームビアさんの父親同様、北朝鮮に拉致された日本人の家族たちは、日本政府と共に、拉致被害者がどうなったのか北朝鮮に説明する様に求めている。
1970年~1980年代に、北朝鮮は10人以上の日本人を拉致した。その多くは、朝鮮人工作員によって、海岸で拉致され、船で連れ去られた。
拉致当時13歳だった横田めぐみさんもその一人だ。1977年に日本の北部で拉致された時、彼女は家から学校へ向かう途中だった。
2004年になって、北朝鮮は日本政府に対し、横田さんは1994年に自殺を図ったと説明し、彼女の遺骨と称されるものを返還した。
DNA試験により、この遺骨は他人のものだと分かっている。
北朝鮮は、他の拉致被害者7名も死亡したと伝えた。そのうち2は、車が殆ど走っていない北朝鮮で、交通事故にあったとの説明。また、2名は、20才台にもかかわらず、心臓麻痺で死亡したとの説明だった。
北朝鮮は、6名の遺体は、雨で流されてしまったと説明した。
「北朝鮮は、全く信用することの出来ない国です。」と、横田めぐみさんの母親である横田早紀江さんはインタビューに答えて述べた。
「我々は、ワームビアさんがこんなに早く母国に戻れることが出来たことを嬉しく思います。私たちの場合、既に長い時が経過してしまいました。」と彼女は語った。
ワームビアさんの損傷が何故出来たのかが説明されるかどうかは不明だ。医者によれば、ワームビアさんは、脳細胞にかなりの損傷があり、「無反応覚醒症候群」の状態にあるとのことだ。
ここ数年北朝鮮に拉致された西側の人間が、身体への虐待を訴えるケースが殆ど無かったので、ワームビアさんが何故重傷を負ったのかには疑問が残る。
抑留者は通常肉体労働をさせられるのだが、唯一、米国宣教師のロバート・パクさんだけが、2009年に北朝鮮によって収監され、拷問を受けたことが公表された。
米国政府は、ワームビアさんについての最新の説明に加えて、何故1年以上にもわたって昏睡状態にあったのかの説明を、北朝鮮に強く求めるだろう。
歴史が示している様に、北朝鮮は、政治的もしくは経済的な便益を、見返りとして求めるだろう。
日本は、2002年以来、北朝鮮と数回の会談を実施し、拉致被害者に何が起きたのか全面的に明らかにする様に求めてきた

200210月に、5名の日本人被害者が日本に返還された。その寸前に日本は北朝鮮に対し数10億ドルの援助を行った。表向きは、1945年まで数10年にわたって、北朝鮮を占領したことに対する謝罪ということだが.