Thursday, June 2, 2016

消費増税の再延期、アベノミクス失速浮彫に【A14面(国際面)】

61日に発表された消費増税の再延期について、翌2日の国際面で速報した。


消費増税の延期は、アベノミクスの失敗を意味しており、成功する時期も分からないことを浮き彫りにしたとしている。アベノミクスの失敗によって、現状において、安倍首相が取れる選択肢は限られている。その意味では消費増税再延期の決断はやむを得ないとしながらも、今後取るべき政策については、まだ検討の余地があると言っている様に読める。
(WSJ日本語版にほぼ同様の記事が掲載されていましたので、一部下記に引用させて頂きました。)

***** 以下本文 *****

安倍晋三首相は就任時、日本経済の健全性回復と長きにわたるデフレからの脱却を約束した
安倍首相が1日表明した消費増税の延期は、この約束がまだ果たせておらず、いつ実現するかも分からないことを浮き彫りにした。増税延期は日本が抱える巨額債務の軽減を難しくするが、景気の低迷によって選択の余地がほとんどなくなったと首相は考えたようだ。
首相は日本が8%から10への消費増税を受け入れる用意ができるのは201910月になるとの見方を示した。従来は1510月の増税を予定していたが、今回の再延期前に一旦174月まで先送りにされていた。
参議院選挙を来月に控える中、安倍首相は日本がデフレに逆戻りするリスクがあり、危機を回避する必要があったと説明した。中国をはじめとする新興国の景気減速も一因として挙げ、年内に追加の景気刺激策を成立させる考えを示した。
こうしたリスクを振り払うために「アベノミクスのエンジンを最大限にふかす必要がある」と述べ、キャッチフレーズを用いて経済の活性化に向けた政策を表現した。
首相の発言はこのエンジンの失速を認めたようにも聞こえた。日本経済は今年1-3月期に拡大したが、過去3四半期のうち2半期で縮小している。政府が公表するコアインフレ率はマイナスに陥っており、日銀が異例のマイナス金利政策を導入したにもかかわらず、目標の2%にはほど遠い状態となっている。
民進党の岡田克也代表は、間違った政策のエンジンをふかしても真の経済成長は実現できないとし、アベノミクスを続ける限り同じことの繰り返しになるだけで、持続的な成長は達成できないと批判した。
安倍首相は金融緩和、財政支出による刺激、構造改革を組み合わせて経済成長を生み出そうとしている。
株価と企業利益は年初に一時落ち込んだものの、首相が就任した201212月の水準を依然として大幅に上回っている。だが大半の世帯はこの恩恵を受けておらず、個人消費は弱いままだ。消費税が144月に5%から8に引き上げられた影響が残っていることもその一因となっている。
安倍首相は1日の記者会見で雇用市場の改善と賃金上昇に触れ、アベノミクスが失敗したとの見方を否定した。だが首相は雇用市場の柔軟性促進や、人口と労働力の減少の緩和に向けた移民受け入れなど、さらに踏み込んだ経済改革は断行していない。
消費増税の再延期からは、日本経済がわずかな打撃にも耐えられないほど脆弱であることに加え、前回の増税による影響を踏まえて政治的反発を懸念する首相の姿が見て取れる。世論調査では消費増税の反対派が優勢となっていた。
増税は従来、20年までにプライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化、もしくは利払いを除く財政均衡を達成することを目的に導入が予定されていた。日本の債務残高は対国内総生産(GDP比で世界最大となっている。
格付け機関フィッチ・レーティングスは消費増税の再延期について、「財政再建に向けた政治的コミットメントの信頼性が損なわれるだろう」と指摘した。
大手格付け3社はいずれも、14年に消費増税が延期されてから1年の間に日本の格付けを引き下げている。一方、スタンダード・アンド・プアーズ(SP)は首相の判断により理解を示し、17年に増税を実施すれば経済成長に打撃となるため、どの選択肢も厳しいものだったと述べた。
だが、投資家は利回りの大半がマイナスでも国債を買い続けており、財政危機に陥る兆しは見られていない。メリルリンチ日本証券のチーフ金利ストラテジスト、大崎秀一氏は、日銀が年間80兆円の国債を買い入れているため「利回りの上昇トレンドを見込むのはほぼ不可能だ」と述べた。
本田悦朗内閣官房参与は、立案者の1人として同氏が関与したアベノミクスの「バージョンアップ」が必要な時期に来ているとの認識を示した。本田氏はウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)とのインタビューで、日銀が6月半ばの金融政策決定会合で資産買い入れの年間目標を100兆円に引き上げることも可能だと指摘した。
言い換えれば、これまでと同じ段階的な措置の強化が実施される見込みで、おそらく日本が危機に陥るのを阻止するには十分だが、アベノミクスが打ち出された当初に一部の海外投資家が描いた成長モデルを生み出すには至らないということだ。