東京電力が福島第一の廃炉に向けて悪戦苦闘する姿を描いた記事が、3月10日の国際面に掲載された。
汚染水除去、燃料デブリの除去の問題をはじめとして、廃炉に向けて東電が取組みべき課題について、紹介している。
***** 以下本文 *****
「放射能に汚染された瓦礫は片付けられた。流し込まれたコンクリートが有毒な塵を閉じ込めた。そして多くの労働者が必要としていた化学防護服は外科用マスクと変わった。」
「5年前巨大地震が津波を引き起こし、福島第一原発は水に浸かった。それにより、この4半世紀で最悪の原発事故が引き起こされた。原子力発電所の近くでは、多くの住人が未だに家に戻れないことに怒り、亡くなってしまった愛すべき人達のことを悲しんでいる。しかし、レーザーワイヤーのフェンスの中では、目に見える傷は無くなり、心地悪い静けさが戻ってきている。」
「『これでようやく普通の仕事場に戻れる。』と所長のオノアキラは言う。『ようやく下準備が終わり、次の仕事への準備が出来る。』」
「しかし、汚染除去の最も難しい部分はまだ始まってすらいない。この事故では、放射性の高い核燃料が金属容器から溶け出し、3つの原子炉の底に溜まっている。福島第一原発を運営する東京電力はこれらをどの様に除去するのかについての計画を示していないのだ。」
「東電はそれ以外にも、最も難しい問題に直面している。発電所の中に入ってくる水にどの様に対処するかだ。こうした水は放射性物質によって汚染されている。地下に作られた凍土の壁は、一日400トンの雨水や地下水が規制区域から住居に流れ出すのを防ぐことになっている。」
「東電は、福島第一の解体には200億ドルが必要で、期間20~30年かかるとみている。解体費用以外にも、避難民への支払いには500億ドル必要で、こうした費用を含む損害やクリーンアップ関連費用は1,000億ドル以上に上ると言われている。この事故に関係する法廷闘争も続いている。2月には3人の東電元幹部が業務上過失致死の疑いで起訴された。」
「東電は少し前進した。災害時には稼働していなかった4号炉では、1,500の使用済燃料棒を除去した。発電所の近くのサッカー練習場は、災害以来汚染物除去の指令センターとして使用されているが、2020年の東京オリンピックまでには復旧される見通しだ。」
「東電と他の会社は、未だに災害の後遺症と戦ってる。何人かの労働者が、知らないうちに、彼らの健康を危険に晒していたと言っているのだ。」
「スドウカズアキは災害直後に燃料くみ上げを手伝っていた。彼によれば、多くの東電の下請け業者の労働者が賃金を全額受け取っていない。彼と他の元労働者達は、未払いについて東電を訴えている。」
「東電は、スドウ氏の件についてのコメントを拒んでいる。東電は、下請け業者による支払い問題について、東電には法的責任はないとしている。しかし、仕事や安全の条件を改善し、労働者からより多くのフィードバックを得たいとしている。」
「今後の最大の問題は原子炉だ。誰も、溶け出した核破片が原子炉のどこにあるのか、それをどうやって除去するのか、誰も分からないのだ。人間が格納容器の中の作業には耐えられない。そのため、東電はコンピュータシミュレーションとビデオイメージによってガイドされるロボットを使用したいとしている。しかし、過去2回の試みは、いずれもロボットが瓦礫の上で転んでしまい断念した。」
「『瓦礫の特徴は、核燃料とコンクリートの反応のタイミングによる。』とフランスの代替エネルギーと原子力エネルギーに関する委員会のパスカルピルソは言う。『我々は、極めて多様性があり複雑な瓦礫について取り扱っているのです。』」
「東電と政府は、燃料デブリの除去の計画について合意し、10年以内に作業を開始したいとしている。しかし専門家は、放射性物質を扱う際の安全性を確かなものにするためには、より洗練されたロボット技術が必要にあるとしている。」