Wednesday, December 30, 2015

日本と韓国が前進【A12面(社説)】

1228日に日本と韓国が慰安婦問題で合意したことを、30の社説で取り上げた。


今回の合意は、「安倍首相が軍による性行為の強要を認めたのか。」「日本が法的責任を認めたのか。」について、極めて曖昧である。WSJは、前者については「安倍氏がかつて疑問視していた歴史的事実を受け入れた。」として、回りくどい言い方だが、安倍首相が軍による性行為の強要を認めたと報じている様に読める。また、後者については「日本政府から女性たちに支払われる資金は公式な責任を示している。」として、日本政府が法的責任を認めたとしている様に読める。

***** 以下本文 *****

日本と韓国は28日、激しく対立していた問題の一つに決着をつけることで合意した。旧日本軍が第2次世界大戦中に、韓国人など数万人の女性を性奴隷として軍の慰安所に連行したとされる「慰安婦」問題だ。今回の合意により、2つの民主国家が今よりも協力的な関係に向かう道が開かれるはずだ。

 安倍晋三首相は共同記者発表の中で、「慰安婦としてあまたの苦痛を経験し、心身にわたり癒やしがたい傷を負われた全ての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを表明する」と述べた。日本政府は存命の元慰安婦46人を支援する資金として10億円を拠出し、韓国政府はそれが実施されることを前提に、この問題が「最終的かつ不可逆的に」解決されたとみなすことで合意した。
慰安婦問題、写真で振り返る

 慰安婦にまつわる恥ずべき歴史は、1990年代初めに複数の書籍が取り上げて注目されるまで、ほとんど忘れ去られていた。旧日本軍がかつて侵略・植民地化した国々で怒りが高まるなか、日本政府はこの問題について調査することに合意した。93年には河野洋平官房長官(当時)が、軍による性行為の強要を認めて謝罪する談話を発表している。

 だが、日本政府は、韓国その他の国と合意して存命の元慰安婦に賠償することはせず、戦時賠償請求権は条約で放棄されているとの見解を変えなかった。国際法の専門家は、一つの団体に賠償をすれば、より多くの要求を誘いかねないと警告した。そのため、日本政府は存命の元慰安婦を支援するために募金を使った基金を設立した。

 こうした融通が利かない日本政府の姿勢は失敗だった。それが民間の基金だったことから、韓国と中国で多くの人の怒りを呼び、問題は解決しなかった。河野談話は一方的かつ拘束力がなかったため、安倍氏など日本の一部政治家はこれを破棄するよう呼びかけ、引き続き強制的な行為だったことを否定した。

 今回の日韓合意でそうした問題は解決するはずだ。韓国は、安倍氏がかつて疑問視していた歴史的事実を受け入れたと満足できる。日本政府から女性たちに支払われる資金は公式な責任を示しており日本政府が賠償ではなく支援だと言い張ったとしてもそれは変わらない。 

 安倍氏は1年前、韓国との関係を改善し、戦後70年の談話で戦時中の残虐行為を謝罪する方針を示した。だが、韓国の朴槿恵大統領が安倍氏の歴史認識を理由に会談すら拒否したため、和解の見通しは遠のいていた。


 これは、日本と韓国が中国と北朝鮮に関して直面している安全保障面の課題を考えたときに特に重要だ。米国の国防費が各地域で拡大する脅威に追いつかないなか、同盟国は自国の能力を強化すると同時に、一段と緊密に協力しなくてはならない。慰安婦問題の解決で、それが今までよりも容易になるだろう。