日銀が12月18日に発表した政策の微修正パッケージについて週明け21日の社説で取り上げた。
日銀のここ数年の政策が、インフレ脱却に結びつかなかったことに、失望感を表明すると共に、金融緩和だけで日本経済の再生を図るのは困難と指摘している。規制緩和や税制改革なしに、日本経済の成長は無く、安倍首相にそれを迫るコメントで締めくくられている。(WSJ日本語版に同じ記事が掲載されていたので、以下に引用させて頂きました。)
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日本銀行は18日、量的・質的金融緩和の下での資産買い入れについて、ETF(上場投資信託)の新規枠設定、長期国債買い入れの平均残存期間の長期化、適格担保の拡大といった変更を発表した。
しかし黒田東彦総裁が、こうした新たな措置で日銀にはインフレ目標を達成できるだけの力があると市場を安心させようと考えていたのであれば、それが間違いであることに直ちに気付かされただろう。この発表を受けて、国内株式相場は下落し、為替相場は円高に振れた。
今回の出来事は、日銀の信頼性に関わる問題を浮き彫りにしている。黒田総裁は2013年3月の就任時に、日銀にはデフレを止める力はあるがそれを行使してこなかったのだと主張した。昨年には、自分が生きている間は物価上昇率が再び1%を割ることはないとの見通しを示した。ところが、その数カ月後に物価上昇率は1%を割った。日銀が事実上全ての新発国債を含む年間約80兆円もの資産買い入れを行っているにもかかわらずだ。
これは日銀のバランスシートが、第3弾まで続いた米連邦準備制度理事会(FRB)の量的緩和のどれよりも速いペースで拡大していることを意味している。このままでは、日銀が数年以内に2%のインフレ目標を達成できる確率はゼロに近い。12月の日銀全国企業短期経済観測調査(短観)の「企業の物価見通し」は1年後の予想が1%と、前回9月調査の1.2%から低下した。
物価目標を達成できずにいる黒田総裁には、資産買い入れをさらに拡大するよう求める圧力がかかっている。だが、黒田総裁と安倍政権は、資産買い入れを拡大しても効果はなく、それを実施することさえ難しいことに気付いているようだ。円相場をさらに押し下げることができたとしても、米国や中国など貿易相手国との緊張が高まるだろう。
今回の新たな措置により、企業の意思決定に政治が介入することへの懸念も高まっている。日銀は「設備・人材投資に積極的に取り組んでいる」企業の株式を対象とするETFを買い入れる方針を示した。政府は経済界に対して投資拡大と賃上げを強く迫っている。
日銀は、当初は企業の利益率やガバナンス(統治)の高い企業を対象としたJPX日経インデックス400に連動するETFを買い入れ対象とする方針なので、政策に混乱を来しているように見える。政府の政治目標を後押しするために日銀の力を使うことは、資源の配分を誤るリスクもある。そうなれば成長を損なう。日銀の独立性を脅かし得る先例ともなるだろう。
日本の潜在成長率が低いため、国内企業は借り入れや投資に消極的だ。日銀の推計では、潜在成長率は0.5%にとどまる。安倍晋三首相が競争力強化に向けた規制緩和や税制改革にまたも失敗すれば、金融政策にできることはあまりない。
黒田総裁による今回の微調整に失望感が広がった結果、日本経済の命運は日銀ではなく安倍首相が握っていることに、あらためて気付かされた。