Saturday, December 19, 2015

日本では企業ドラマが胸にぐっとくる【A10面(国際面)】


12月20日に最終回が放送された「下町ロケット」について、その前日の19日に国際面で取り上げた。

コンパクトな記事だが、ドラマのあらすじや、その素晴らしさがコンパクトにまとめられている。

***** 以下本文 *****
「佃航平はロケットエンジンの開発を夢見ている。彼が経営する従業員200人の会社は一流の技術を持っている。しかし、彼らは、帝国重工の横柄な重役、ケチな銀行マン、中小企業を見下すビジネス文化と戦わねばならない。」
「このドラマはフィクションだ。しかし、多くの日本人にとって、このドラマはあまりにもリアルだった。こうした日本人たちが、この勇敢な社長を描いたテレビドラマを大ヒットに結び付けた。安倍首相もこのドラマのファンだと述べ、最終回は最高視聴率を獲得することが期待されている。」
「このテレビドラマは、産業の基軸を、有名ブランド製品の中に組み込まれる精密部品の供給に置いている日本において、多くの共感を呼んだ。例えば、アップルのiPhoneは、日本の多くの無名企業からの部品供給に依存している。」
「『ドラマを見た時、私は感動して泣きました。』と大和合金の3代目社長である萩野源次郎氏は言う。同社は、銅合金から作られる板金やディスクを製造している。」
「萩野氏は、ドラマで描かれる社長よりも、ずっと成功している。日本最大の銀行である東京三菱UFJ銀行からお金を借り、ヤマハに部品を供給しているのだ。しかし、彼の父親である萩野茂雄氏は、このドラマは、彼の家族が、数年前にある大企業との間で起こしたトラブルを思い起こされるという。既にリタイアした彼によれば、その大企業は彼の会社から精密部品を購入し、その技術を横取りしようとした。」
「安倍首相は、彼が首相に就任してからの3年間の経済成長は、大企業に記録的な利益をもたらしたが、中小企業を十分に助けるには至っていないことを認めている。」
「このドラマは、日曜日のプライムタイムにTBSで放送されている。主人公が特許訴訟や医療品規制と戦う姿を描き、涙なくしては見られないメロドラマに仕立てあげられている。直木賞を受賞した池井戸潤氏のベストセラー小説をもとしたこのドラマは、佃氏が日本のロケット公社を辞めて、家業である佃製作所を引き継ぐところから始まる。この会社は、労働者層の多い下町に本社を置いているため、ドラマのタイトルは『下町ロケット』という。」
「ドラマの最初の方で、ライバル企業が特許侵害で佃を訴え、佃は銀行からお金を借りるのが難しくなる。そこに、帝国重工が登場する。同社は、佃の特許が必要となり、その購入を申し出る。帝国重工の幹部社員が佃の小さな工場を訪れ、要求をわめきたてる。しかし、佃は屈しない。彼は、佃製作所を、エンジンそのものを製造し、大企業に販売する会社にしたいのだと主張する。」
「佃が従業員に『我々は、会社の規模では負けるかもしれないが、技術ではけして負けない。』と言ったところで、ドラマの効果音が盛り上げる。そして、遂に帝国重工が屈する。」
「佃社長役の阿部寛の大声でのスピーチは、もう一人の演説者である安倍の関心を引いた。そう、安倍首相である。」
「安倍首相は、12月14日の講演で、この番組で描かれる佃製作所について『ものづくり大国日本をひっぱっていく日本の中小企業そのものであります。』と述べた。」
「TBSの川鍋昌彦氏は、この番組の夢を追いかけるというテーマが成功の秘訣だと語る。彼によれば、日曜日の夜にこのドラマを見て、月曜日から働く英気を養ったという、視聴者からのメッセージがTBSに寄せられている。」
「このドラマはフィクションだが、三菱重工が、日本や世界中の何百という中小企業の支援によって成功させた三菱リージョナルジェットの初飛行の様な、最近の明るい出来事を思い起こされる。」
「精密部品会社の萩野茂雄氏は、この番組は、家族経営企業の良い面を描いてくれていると言う。『利益は重要だ。しかし、もっと重要なのは、自分たちがお客様や従業員に貢献していると感じられることだ。』」