Tuesday, November 3, 2015

日本はこの緑の旅行ブームに行き着くのに地衣類以上にかかる【A1面】

日本で苔がブームになっているという記事が1面に掲載された。


星野リゾートが企画した苔ガールステイが大好評、東大教授で苔マニアの樋口氏が北八ヶ岳で開催する苔ツアーも売り切れ状態、そして音楽業界で活躍した和田氏が始めた苔玉ビジネスが大ヒット。苔玉はニューヨークでも発売され、和田氏はレディー・ガガに苔のブラジャーを着て歌う様に薦めたそうだ。経済紙のくせに、こうしたバカバカしい記事を1面に掲載することがWSJのすごいところだ。

***** 以下本文 *****

この記事は次の様な書き出しで始まる。
「日本アルプスを登るハイカーの列の中で、アマノ・マヤさんはしゃがみこんで、拡大鏡を取り出し、森の地面を夢中で覗き込んだ。」
「『可愛い!』そう言った彼女は、苔の塊を手で撫で始めた。」
「それは、イワダレゴケだった。良くある種類の苔ではあるが、30歳の教師であるアマノさんにとっては嬉しい発見だった。彼女は、24人のファンと共に、苔鑑賞ツアーに初めて参加したのだ。彼らは、標高7000フィートの山道で花の無い植物を観察するだけでなく、時には長靴を履いて沼をかき分け、顕微鏡でコケを覗き込み、コケの講義を聴く。」
「苔が成長するのを観察するのは、東京大学教授の樋口正信の様な人々にとって、とても楽しいことだ。彼は、ツアーを開催し、苔に関する講義を行う。彼は、苔を愛でるのは、日本精神の一部だと言う。」

暫く要約する。
苔が、日本の旅行者の間で注目を集めている。星野リゾートは3年前に苔ガールステイを発売した。このパッケージは20代から40代の女性に人気で、当初は夏だけ発売していたが、今は通年発売している。日本蘚苔類学会の会員も増えている。
日本人の苔への愛着は歴史に根差している。森には1,800種類もの苔があるし、寺は苔の絨毯で飾られている。日本の国歌は、天皇の統治が永遠に続くことを「苔のむすまで。」と歌っている。
元音楽業界エグゼクティブの和田徳之さんは、苔玉作りのワークショップを開催し、好評を得ている。彼は、苔関連ビジネスを6年前に始めたが、今や売上は12万ドルにもなる。苔玉は、ブルックリンのガーデニングショップでも販売されている。和田さんはレディガガに、パフォーマンス中に苔で出来たブラジャーを着る様に薦めたが、返答が無かった。
樋口教授は、苔と地衣の違いについて教えている。日本では、、苔も地衣もコケと呼ばれることが多いので、その違いについてあまり知られていない。樋口教授が苔ツアーを行う北八ヶ岳には485種類もの苔が生息している。彼が開催した最初のツアーでは近所の別荘の住人しか参加しなかったのが、昨年は6回のツアーに250人もの参加者があった。「苔観察はオタクっぽいので、なかかな公に話せないが、ここには苔愛好家ばかりが集まるので話がはずむ。」と樋口教授は言う。

この記事は次の様なコメントで締めくくられている。
「苔関連のイベントは、屋久島の様な場所でも、出現している。屋久島の苔は、人気アニメ映画『もののけ姫』で使われた。」
「樋口教授は苔ブームに困惑している。ブームは、苔の性格とは正反対だからだ。彼は『私は口コミによる、静かな拡大を望んでいる。』と言う。」