Saturday, June 14, 2014

日本の税金引下げ【A12面(社説)】


安倍首相が、法人税減税の方針を明確にしたことが、社説で取り上げられている。米政府は日本から学ぶべきだとして、この方針を支持している。
(ウォールストリート日本版に同じ記事が掲載されたので、一部補足させて頂いた上で、そのまま借用させて頂いた。)

「日本でまた税制をめぐる議論が盛り上がりをみせている。今度はいいニュースが飛び出しそうだ。 安倍晋三首相は法人税の実効税率の引き下げを断行するようだ。首相は税率を5年以内に30%未満へ引き下げることを示唆しただけで、今までのところ具体的な税率は示していない。実効税率が20〜25%に引き下げられれば欧州の多くの国と同水準になる。先進国の中で最も高い法人税は米国の35%。日本の現行の法人税率は、この米国に次ぐ水準だ。」
「日本経済団体連合会(経団連)など財界は日本の競争力を回復させるため、政府は何をおいても法人税の大幅引き下げを行うべきと主張している。それも一理ある。今週、1-3月の日本の国内総生産(GDP)が上方修正され、設備投資も改善するなど前向きな兆候が表れてはいるが、日本の景気回復は脆弱なままだ。首相は先日、企業統治の改革を行うことを発表したが、経済団体がこれを黙認する代価として法人税の税率引き下げを求めるとすれば、双方にとって有意義だ。」
 最大の障害は官僚だ。財務官僚は引き下げに反対で、税率を下げるなら、失われる税収を埋め合わせるための措置を同時に実施しなければならないと主張している。麻生太郎財務相は先週、法人税の引き下げによって経済成長が促され、課税可能な活動が創造されて税収が増えると想定すべきではないと述べた。」
「安倍氏は法人税をめぐる議論をきっかけに、幅広い税制改革を提案する可能性がある。控除などを縮小して法人税の引き下げによる税収減を補うためだ。ただ、これには政治的に注意が必要だ。控除など優遇措置の多くは中小企業向けだが、法人税の引き下げで最も得をするのは大企業だからである。首相は設備投資減税や研究開発費減税の拡大などの措置を発表しており、税制の歪みの責任の一端は安倍氏にある。」
「それでも、法人税の実効税率の引き下げ、課税ベースの拡大、租税特別措置の縮小は日本経済全体にとってはプラスだろう。租税特別措置は、特定の投資(特に温暖化防止関係の投資)を優遇したり、他のことには高い税金を課したりするので、企業の決断を歪めてしまう。消費税の10%を超える税率への引き上げなど税収を確保するためのその他の案のほうが経済にもたらす悪影響は大きいといえよう。」

「通常国会は間もなく会期末を迎えるため、税制の議論は冬まで続くだろう。今喜ぶべきは、法人税の引き下げと、引き下げにより経済が活性化するというコンセンサスが形成されたことである。左派、右派を問わず、高い法人税は政治的にプラスだと考える議員があまりにも多い米国の議会はこの点を日本から学ぶべきだ。」