Thursday, September 22, 2016

中央銀行の魔力は終わった【A18面(社説)】

921日に日銀、米連邦準備銀行(FRB)の双方が、新しい金融政策を発表したが、WSJは翌22日の社説で両中央銀行の政策について取り上げた。



両中央銀行の政策を見る限り、両銀行ともにどうしたら良いのか分からなくなっていることを示しており、リーマンショック以降続いてきた中央銀行に依存した景気対策には終止符を打ちべきだとしている。
FRBは利上げを見送った。同時に発表されたFRBの経済成長率予測が低く、これはFRB自身が金融政策の限界を認めているとしている。日銀は、新たに長期金利をゼロに誘導する新政策を打ち出した。更なるマイナス金利に踏み込まなかったことは、日銀自身がその政策の失敗を認めたに等しいとしている。いずれにしても、政治家は中央銀行に頼らない経済復興策を模索すべきだとして、日本に対してはサプライサイドの改革を、アメリカに対しては税制改革、規制緩和へのフォーカスを求めている。



***** 以下本文 *****
米連邦準備制度理事会(FRB)と日本銀行は21日、それぞれ金融政策に関する新たな声明を発表した。どうしたらいいか分からない、というのが共通のメッセージだ。日銀は過去の過ちを一掃しようとする一方、FRBは多くの反対意見が内部で上がるなか利上げを見送った。
 FRBが利上げを見送ったことは驚くべきことではない。大統領選が迫っているうえ、オバマ政権に任命されたラエル・ブレイナードFRB理事が先週、利上げ反対を表明していたからだ。連邦公開市場委員会(FOMC)は利上げの見通しをこれまで以上に強く示唆し、同時に多分12月までは利上げを待つことも示唆した。この決定にあたっては、2名のタカ派の委員が反対票を投じたが、反対者数は過去5年で最も多かった。
より驚くべきことは、将来の経済成長の見込みについてのFRB新しいコンセンサスだ。2019年までは1.8-2%を上回ることはなく、それ以降は長期にわたって年1.8%とした。理解して欲しい。中央銀行は、以前であれば不景気と定義されたいた成長率が予測されているにもかかわらず、12月にそしてそれ以降も金利を上げるかもしれない
現状の米国の政策を考えれば、この経済成長予測は正しいだろう。しかしそれは、金利政策の限界も示している。FRBの大勢派であるケインズ信奉者でさえ、今後とも経済を成長させることが出来るとは言えないでいる。過去数年間にわたって全く逆のことを言ってきたのに。
低い経済成長率は、FRB12月に金利を引き上げられるのかどうかについて疑問を投げかけている。ジャネットイェレン総裁が記者会見で、述べることができたのは、FRBが熟知しているフィリップ曲線の計算についてだけだった。つまり、労働市場が労働者不足に陥っているときには、失業率は低く、インフレ率は上昇する。FRBは、バランスシート上で満期となる国債をそれ以上保持しないと最初に発表すべきだった考える人々に我々は賛成する。ところが、イェレン率いるFRBは、最初に金利を上げることに合意してしまった様だ。うまく行きます様に。
日本銀行については、黒田晴彦総裁もまた、どの様に経済を再生させるかについて、困ってしまっているようだ。日本銀行の最も重大な決断は、国債の買い方を長期国債の金利を目標にすることに変更したことだ。典型的には、中央銀行は短期金利を目標にしてきた。しかし、金融危機以降、幾つかの銀行が国債の買い付けによって長期金利に影響を与えようとしてきた。日銀は、今回は10年ものの金利を直接のターゲットにしている。10年ものの金利は既に-0.3%に下落しているが、それをゼロで維持することを目標としている。
水曜日の政策は、より勾配のきつい金利カーブを確立することにある。これにより、短期の貯蓄を切り崩して長期貸し出しに回している銀行の利益を助けることになる。日本の銀行の株価は乱高下し、金融システムの安定性が弱まるという懸念から、他の株価にも悪影響を与えている。預金からの利息に生活を頼っている退職者たちも一安心することだろう。
しかしこの政策はまた、黒田氏が今年採用したマイナス金利政策が金融刺激策としては失敗したことについての暗黙の了解でもある。この政策は銀行のローンを儲からないものとし、消費者の自信を傷つけた。
幾つかの異なる満期のものについて金利を設定するのは、意図していない結果だ。より急勾配の金利カーブは、通常は更なる成長とインフレが期待されることを意味する。しかし、そうした期待のないままに人工的にカーブが作られた場合には、より長期の貯蓄を促し、デフレが悪化するだけだ。そして、日本の非効率的な銀行に自己満足的なリストラを行わせるだけだ。
インフレ期待を抱かせることへの一つの障害は、日銀の傷ついた信頼だ。3年前に黒田総裁は2という非現実的なインフレ目標を設定し、2年以内にそれを達成すると約束した。その目標は何回も先延ばしとなった。水曜日に黒田氏はそのタイムテーブルを諦め、日銀は出来るだけ早い時期にその目標を達成すると述べた。これは、黒田総裁が今回は本当に本当に真剣にそう考えているということを市場に示そうと試みた様に聞こえた。
こうしたすべてのことは、経済の救世主として中央銀行のバンカーに頼る時代に終止符を打つべきだということを意味している。2008年以降の政策についてのこれまでの論争がどうであったにしても、中央銀行のバンカーが約束した不況からの脱却は実現しなかったのだ。
再び繁栄を取り戻すためには、政治家は他の方法を求める必要がある。世界の自由民主主義国家が自信を取り戻し、多くの問題を解決していくためにはそうした繁栄が必要だ。日本の安倍晋三首相は、2012年に彼が公約したサプライサイドの改革を推し進める必要があるだろう。そして、次の米国大統領は税制改革と規制緩和にフォーカスした成長シナリオを描く必要があるだろう。中央銀行は魔法の力を失った。ただ、これまでそうした力を持っていたならの話だか。