Thursday, September 22, 2016

日銀にとっての大きな一歩【A11面(国際面)】

日銀は921日に新政策を発表したが、WSJは翌22日の国際面で速報した。



新政策の目玉政策として、長期国債に対する金利目標設定を取り上げ、この政策に懐疑的な意見と好意的な意見をバランスよく掲載している。懐疑的な専門家は、多くの要因によって左右される長期金利のコントロールは不可能だとする一方、好意的な専門家には、バーナンキ元FRB総裁という大物が名を連ねている。速報とは思えない充実した内容で、WSJらしい。

***** 以下本文 *****
日銀はここ数十年みたこともない様な金融政策の採用に踏み切った。経済成長を再稼働させるための最新の提案において、10年物国債金利に目標を導入する。
日銀は過去20年間にわたって安定的なインフレをもたらすことも苦労してきたが、水曜日に、10年物国債金利をゼロで維持し、それを達成するために国債買付のペースを必要に応じて調整すると述べた。
日銀はこれまでに前例のない数々の政策を導入してきたが、今回はその最新のものになる。日銀は他の中央銀行同様に成長とインフレを起こすことに苦労してきた。過去3年半、黒田東彦総裁のもとで、日銀は大量の国債を買い付けることにより、経済に大量のキャッシュを送り込んできた。
インフレ率を2%に押し上げるために、日銀は今年の初めに、一部の市中銀行の金利にマイナス金利を導入した。これにより、借入コストを軽減させ、成長を促す。これまでのところ、インフレ目標は達成されていない。
日銀は、新しく導入した10年物国債金利に加えて、マイナス金利は維持し、将来的にはさらにマイナスの度合いを強めるかもしれないとした。
黒田氏の長い間維持してきた政策と決別するという決断は、多くの中央銀行が直面している苦境を象徴している。彼らは、国民にそこそこのインフレがもうすぐやってくると信じてもらうために取れるべき手段は殆ど残っていないと感じている。
10年物長期国債への目標設定は、日銀の100年の歴史の中で初めての試みであるが、巨大な国債市場の金利は市場の力によって決定され、役人が完全にコントロールすることは出来ないという、長年にわたる知恵への挑戦でもある。通常、中央銀行は短期国債の金利に対しより大きな支配力をもつと考えられてきた。世界中の多くの銀行が国債の目標金利を10年以下の国債について設定してきた。
日銀は殆どの銀行が向かったことのない方向へ向かっている。最もよく知られている例は、第二次世界大戦後の米国だ。FRB戦時国債の負担を軽減するために、金利を低く抑えようとした。
一つ心配がある。「原則として、彼らは無限の国債を買わされるかもしれない。」とシンガポールの調査会社であるキャピタルエコノミクスの日本担当エコノミストのマーセル・シーリアント氏は言う。
いつも通り、黒田氏は自信を見せた。金利カーブをコントロールすること、短期金利だけでなく長期金利にまで踏み込んでコントロールすることは、極めて実行可能だと、黒田氏は政策決定の後述べた。
黒田氏は、FRBの元総裁であるベン・バーナンキ氏からエンドースメントを得た。バーナンキ氏はブログで「新しいフレームワークはより持続可能と見られるだろう。」と述べた。そして、日銀は今後は国債買入れ額が80兆円を大きく下回っても、その利率目標を達成出来るだろうとも述べた。このコメントにより、中央銀行が購入する国債が枯渇してしまうのではないかという懸念は和らげられた。
発表後市場は動いた。株式市場は、主要銀行や保険会社の株式に引っ張られて、1.9%値上がりした10年物国債の金利は上昇し、マイナス0.02%となった。金利は、価格が下落した時に、上昇する。
日銀が様々な要因で変動する長期国債の金利をコントロール出来るか否かについては、懐疑的にならざるをえない。」とSMBC日興フレンド証券のチーフマーケットエコノミストであるイワシタマキ氏は言う。
バブル崩壊後の1990年代に日本はデフレに突入した。その後の財政支出と緩やかな金融緩和は失敗に終わった。そして日銀は異例の実験と見られることを開始した。最初は、ゼロ金利から始めたが、黒田総裁になって年間80兆円に達する大量の国債買付を始めた。黒田氏はこの新しい政策を緩和を確実に実行するための政策と呼んだ。日銀はまた、2%を達成するだけでなく、それを越えるインフレを目指すという誰もが思ってもいなかった発言をした。これは、米国のエコノミストからの更なる高い目標を設定して欲しいという要求への同意でもあった。
金利目標は、過去の政策に関する2つの懸念を回避する方法を提示した。日銀が購入する国債が枯渇するのではないかという懸念、そして、マイナス金利が日本の銀行や年金ファンド、生命保険会社などの業績に悪影響を与えるのではないかという懸念だ。
黒田氏は、過去の政策の副作用が政策変更の理由の一つであることを認めた。銀行はマイナス金利と大量の資産購入が長期金利を含めた全ての金利を押し下げることに反対してきた。彼らがローンから利益を得ることが出来なくなるからだ。
この新政策の一つの懸念は、日銀が完全にコントロール出来ない市場を安定化させるために日銀が大量を売り買いをせざるをえなくなることだ。
「悪魔は詳細に、そしてこの新政策の実行の中にある。」とブラックロックの日本における固定収入のチーフ投資ストラテジストのバンバ・ユエ氏は言う。