Friday, February 27, 2015

日本の「ウーマノミクス」にかけるギャンブル【A11面(国際面)】

安倍首相の目玉政策である女性の積極的活用に関する記事が国際面に掲載された。



この記事は、次の様な書き出しで始まる。
「安倍晋三首相の最近の日本を揺り動かす計画は、女性労働者の数を増やし、長い間続いてきた男女間のアンバランスを修正するという、壮大な目標だ。しかし、ウーマノミクスのための数値的目標の設定は、より大きな経済目標の達成を困難にするという問題を内在している。」
「日本はもっと女性労働者を増やすべきだということに疑問を差し挟む人はいない。OECDによれば、日本の女性の42.5%が高等教育を受けており、世界でも最も教育水準が高い。それにもかかわらず、日本の女性で仕事をもっているのはわずか67.5%にすぎない。これはパートタイムを含めた数値だ。2010年のゴールドマンサックスのレポートによれば、もし日本の女性の就業率が、男性と同じ80%にまで上がれば、日本の経済生産高は15%伸びるとしている。」

長い記事なので、しばらく要約する。

日本は人口減少問題を抱えており、この問題への対応はその意味でも重要だ。日本の人口は2004年に減少し始め、その後、年々減少し、ついに昨年は26万8千人と過去最大の減少を記録した。それでも、日本国民の間に緊迫化が感じられない。
日本の人口は1億2,700万人から、2060年には8,700万人にまでに減少し、人口の40%以上が65歳以上の高齢者となる。
こうした状況は、日本を未知の領域へと追いやっている。この状況が続けば、一人の労働者が一人以上の退職者を支えねばならず、企業は労働者を採用することが非常に難しくなる。東京のコンビニエンスストアに行けば分かるが、そこで働いている人々の名札には既に外国人の名前が書いてあるのだ。

女性労働者の増加は、人口減少による労働者不足問題をある程度は緩和するかもしれない。しかし、出産率を増加させようという取組みには逆行するのではないか。また、安倍首相は子育て支援や女性起業家支援を打ち出している。こうした計画は評価できるが、一方で女性問題に偏重しすぎというリスクもある。

安倍首相は数値目標を設けている。2020年までに25~45歳までの女性労働者を5%増やし、企業幹部の30%を女性とするというのだ。大企業にこうした数値目標を達成するための目標を立案・公開させるための法律まで作ろうとしている。
こうしたトップダウンアプローチは、非現実的な目標を生み出すばかりでなく、そもそも規制緩和を進めるという安倍首相の目標とも矛盾している。しかもこうした数値は、本来の目的である、企業効率の上昇や競争力強化に対しては直接の効果は無い。

もちろん、起業家精神は尊重されるべきだが、女性の起業家精神だけ尊重するのはおかしい。税金や規制緩和にしても同様だ。また、若者の雇用対策や、移民の受け入れ問題等、他にも議論すべき問題は山積みだ。

「25~44歳の女性にフォーカスするということは、子育て時期の女性をターゲットにするということだ。これでは、人口減少問題への取り組みに逆行してしまう。子育て時期を過ぎた女性にフォーカスした方が良いのではないか。」
「安倍氏は日本の労働市場の男女格差に取り組んでおり、それは大いに評価出来る。しかし、彼は、ゆがんだ採用パターンだけでなく、社会に深く根差した男性優位の問題と取り組んでいるのだ。こうした日本人の態度を改めるためには、より多くの雇用機会を創出し、日本人に能力のある人材の確保の必要性を理解してもらうことが、政府が数値目標を設けることよりも重要なのではないか。」

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安倍首相の男女格差解消の取り組みを大いに評価する一方で、この取組みに内在するリスクとそうしたリスクへの処方箋が提示されていて面白い。
特に、25~45歳の女性労働者を増やすのは出生率低下を招くので45歳以上の女性労働者を増やすことにも取り組むべきだとか、日本人に「能力のある労働者を雇用する。」という発想をもってもらいたい(現在は、終身雇用制度の影響もあり、能力が無くても企業が育てるという意識が強い。)という提案は面白い。
私の職場も、50歳以上の男性正社員と、30、40歳代の女性派遣社員が大半を占め、台湾出身の3ヶ国語話せる女性が大活躍という、今の日本の縮図の様な職場だ。こうした職場を活性化させるためには、従来と異なった考え方が必要だと痛切に思う。