Saturday, April 27, 2019

日本のトランプ大統領への贈り物【A12面(社説)】

426日に行われた日米首脳会談について、WSJは翌27日の社説で取り上げた。


 【要約】まず、今回の会談で日米関係の重要性が再確認出来たとしている。その上で、今後の日本との貿易交渉の進め方として、トランプ大統領は、日本車に対して25%の関税をかけるという強硬姿勢を軟化させ、その見返りに米国の農民にとって有利な貿易条件を日本から引き出すべきだと主張。米国の農民はTPPや日欧貿易協定の締結によって、大きな不利を被っていて、その事態改善が必要との立場。

***** 以下本文【WSJ記事全文和訳】*****
トランプ大統領は、金曜日に日本の安倍首相をホワイトハウスに招いて、貿易や防衛について議論した。9月に会談して以降、お互いを必要としてきたが、今回の会談でそのことが、より明確となった。貿易問題では、トランプ大統領は自動車輸入を問題視しており、このままではお互いに有利がディールが期待できない。トランプ大統領がこうした点を克服出来るかどうかが争点だ。
米国の農民たちは、トランプ大統領がTPPから離脱したことにより、経済的な機会を失った。11ヶ国でのディールが12月に施行されて以来、米国の市場シェアは他の国々に奪われてきた。日本が牛肉への関税を38.5%から26.6%へと引下げると、カナダとニュージーランドからの輸入は、それぞれ、345%133%と跳ね上がった。もし、こうした輸入急増がセーフガードの関税のトリガーとなったら、米国産ビーフへの関税は50%となるが、TPP10ヶ国の関税26.6%のままだ。
カリフォルニアワインの醸造業者も日本市場では壊滅的だ。ナパヴァレーの輸出業者は15%の関税を払っている。一方でオーストラリアのワインへの関税は、5.6%まで下がった。欧州のワインメーカーに至っては、2月に施行された日本とEUとの条約により、関税無しで日本市場へのアクセスが可能だ。この条約では、欧州の科学製品、乳製品、制約業などの、米国と激しい競争を繰り広げている分野でも、欧州が有利になる。
「米国の麦、牛肉、豚肉、乳製品、ワイン、ジャガイモ、果物、野菜などの輸出業者は、日本での市場シェアの壊滅的打撃に直面している。日本での有利な販売条件が他に国々に奪われているからだ。」と今週、88の米国の食品企業と食品団体が、米国の通商部のライトハイザー通商代表に手紙を書いた。
TPPは農民にとっての援助となるだけではなく、サプライチェーンのスリム化により、製造業者も便益を得たであろうし、テクノロジー企業、製薬産業、ハリウッドの娯楽産業などもIP保護により便益を得たであろう。この条約は、経済分野での中国に対する対抗措置となるが、米国無しではその有効性は低い。
トランプ大統領は、日本との2ヶ国間条約の締結を模索している。彼にとって幸運なのは、日本の対中国輸出が不振なので、日本が米国に対する反対姿勢を緩和させていることだ。安倍首相は、北朝鮮に関してもトランプ大統領の支援が欲しい。日本の経済関係の官僚は、トランプ大統領が25%の関税を自動車にかけるという強硬姿勢を諦めれば、その見返りに米国の農民のために市場を開放することを示唆した。
これは、トランプ大統領にとっては、魅力的なディールだろう。いずれにしても、日本車の70%は米国で製造されているのだから。トランプ大統領がTPPに参加しないとしても、少なくとも日本との良い条件での貿易を受け入れられるのだ。