Friday, March 29, 2019

日産の反ゴーンの策略の背後にフランス支配への恐れが【A1面】

2018年初頭のフランス政府とゴーン氏の裏取引」、「20186月の検察と日産の司法取引」を軸に、ゴーン事件の核心に迫る記事が、329日の1面に掲載された。


【記事要約】
2018年初頭に、ゴーン氏がフランス政府と裏取引。ルノーの大株主であるフランス政府はゴーン氏にルノーCEOの地位を約束することの引き換えに、ゴーン氏にルノーと日産の完全合併を推進することを約束させた。日産は、フランス政府がルノー・日産の合併を推進していることを察知し、経産省や首相官邸に、フランス政府と交渉するように迫ったがあまりうまくいかなかった。また、これまで合併反対派だったゴーン氏が、地位に目がくらんで、賛成派に寝返ったことも把握。たまたま、ゴーン氏による不正容疑の情報を入手した日産幹部が、20186月この情報を使って司法取引。「日産が、役に立たない『政府』の代わりに『検察』を利用してゴーンを失脚させ、フランス政府に抵抗している。」というのがこの事件の本質だと言っている様に読める。

***** 【記事全文和訳】*****
カルロスゴーンが逮捕され、収監され、ルノーと日産での肩書きを剥奪された後、日産・ルノー連合の幹部2名がアムステルダムで面会した。雰囲気を一新するために。
通常の取締役会の後に開催された夕食会は、ルノーと日産のトップにとって、お互いを知る絶好の機会だった。それはとても友好的な会だった。しかしその後、ついでの話という感じで、日産の西川CEOが爆弾を落としたのだ
2人の会話に詳しい人によれば、日産の幹部数人がゴーン氏にとって不利になる証拠を集め、ある一つの目的のためにそれらの証拠を検察に提出したはずだと西川氏は発言した。日産の幹部たちは、日産とルノーの完全合併の可能性を排除したかった。彼らはゴーン氏が合併を推進しているのではないかと恐れていた。日産の反抗分子たちは、日本の会社である彼らの会社が、フランスの支配下になることを恐れていたのだ。
131日の夕食会の会話の中でのこの驚きの告白は、アライアンス構築のために世界中を飛び回る自動車業界の巨人であ65歳のゴーん氏に対して、何故日産が突然半旗を翻したのかを説明するものだ。
ドキュメントや捜査に詳しい人によれば、2人の日産の幹部は、更なる合併への動きを停止し、ゴーン氏についての調査を開始し、長い間噂されていた疑惑を追及し、問題となっている金融犯罪についての証拠を見つけて検察に渡したのだ。彼らの最大の目的は、日産を守ることだった。日産は、文字通り、日本の産業を意味するのだ。こうした見方は、まさに世界中の国々が自国の主要企業を守りたいと考えていることを映し出している。
ドキュメントによれば、彼らは調査を20184月に開始した。その同じ月にルノー株の15%を持つフランス政府は、何故合併を推進したいかという理由を説明した。
「もし外国の企業が来て、過半数の株式を取得すれば、それは衝撃だろう。」と業界のシンクタンクであるオートモーティブリサーチのCEOあり、日産の元幹部であるカーラバロ氏は言う。「日本は誇り高い国家だ。」
ゴーン氏は容疑を否認しているが、108日間にわたって拘留された後、36日に9百万ドル近い保釈金を支払って、保釈された。検察は、ゴーン氏が2つの日本の法律に違反しているとして起訴した。一つは、企業の財務情報開示に関する法律、もう一つは、企業幹部がその地位を利用して私腹を肥やすことを禁止した法律だ。彼は、日産とルノーでの幹部としての肩書きを失っている。2ともに、彼を取締役からも排除する計画だ。
ゴーン氏の失脚を計画した日産の幹部が望んだ通り、合併の話し合いは振り出しに戻った。
ゴーン氏の弁護士である広中淳一郎氏は、こうした動きをゴーン氏の弁護に使いたいと考えていると語った。日産の幹部は、ビジネス戦略を巡る確執が理由で行動をとったのであり、それが刑事事件をゆがめてしまっていると彼は指摘する。
日産の報道官であるニコラス・マックスフィールドは、内部告発者の動機は必ずしも適切ではないとしながらも、日産の調査によれば、明らかに非倫理的な行動についての多くの証拠が見つかったと言う。「この一連の事件の唯一の原因は、ゴーン氏の主導による犯罪行為だ。」
ゴーン氏は、世界最大の自動車業界のアライアンスの指揮を執っていた。ルノー、日産、と3つめのアライアンスメンバーである三菱自動車3社を合わせた、昨年の乗用車販売台数は1,076万台で、これはライバルの誰よりも多い。彼は日産をうまく経営して成果を出し、それによって彼は日本ではビジネス界のスーパースターとなった。
彼の逮捕以来、ルノーの株価は9%以上下落し、日産の株価は上下しているものの8%以上下落した。
「日産は日本のチャンピョンだ。日本人にとって、簡単に失えるものではないのだ。」と2008年から2012年まで駐日フランス大使を務めたフィリップ・フォール氏は言う。

紛争の種
日産はルノーより多くの車を売っているが、アライアンス内での力関係では弱い。1999年に日産が苦境に陥った際にルノーが救済したため、その後はルノーは日産の株式の43.4%を保有している。一方、日産はルノーの議決権無しの株式を15%保有しているだけだ。
日産株からの配当や部品購入や設計での規模の利益が無ければ、ルノーは自力では生き残ることが出来ない。この点については、両社の関係者も合意している。
ルノー株の15%を保有しているフランス政府は、国内の自動車工場はフランス製造業の要だと考えている。同時に、ルノーの株式を保有し、ルノーへの支配力を維持することによって、その意思決定に大きな影響力を持つことになるとも考えている。
ルノーと日産の独立は微妙なバランスの上に保証されてきたが、昨年、ゴーン氏のルノーでの会長とCEOの契約が更新されことによって、その微妙なバランスが揺らいだ。ゴーン氏は、何年にもわたって、アライアンスを永久に続くものにせよというフランス政府からの圧力をうまくかわしてきた。しかし、いまや、ゴーン氏は、自身のリーダーシップ継続に対するフランス政府からの支援を確実にすることを選んだのだ。
ルノーに詳しい筋によれば、ゴーン氏はルノーのCEO職から降りようと考えていた。それは、20年近くにわたって彼が維持してきたアライアンスへのコントロールをある程度失うことになる。
「彼は、アライアンスの次のステップを実現するために、CEOに留まることを決意した。」と当時ゴーン氏と話をした人物は言う。
2018215日のルノーのニュースリリースによれば、ゴーン氏は、若干の給与カットを受け入れ、アライアンスが逆戻りしない様に決然とした態度をとることをコミットした。
ある日産の幹部は、ゴーン氏の態度はその頃から変化したと言う。「彼は、色々なことを強く要求する様になりました。合併についても、どの程度のスピードでそれを実現すべきかについて考えを持っていた様でした。そしてそのスピードの通りに進まないと非常にイライラしていました。」
フランス政府は、ルノーの取締役会に送り込んでいるマーティン・ヴィアルを通して、より直接的に関与するようになった。マレーシア生まれの日産のベテランで、日産CEO室長のハリ・ナダは423日にヴィアル氏と面会し、ナダ氏が歓迎しない合併に関して実現への強い要求を受けた。このことは、ナダ氏がゴーン氏との打合せ用に作成したレポートに示されている
ヴィアル氏は合併のメリットについてのドキュメントを送ってきたが、日産の株主からのコメントや考え方については何も考慮していないとナダ氏はゴーン氏に報告した。
ゴーン氏を知る人によれば、彼は10年以上両社のCEOを務め、両社の独立性の擁護者として認識されてきた。
ナダ氏はヴィアル氏に日産の要求を伝えた。日産の保有株の減少、ルノーが日産の支配を求めないという約束、フランス政府の撤退だ。
ナダ氏がゴーン氏に宛てたレポートによれば、ヴィアル氏はこの要求をあまりに犠牲が大きいとして拒否した。
同レポートによれば、ここで、日産の対政府関係責任者のカワグチヒロシが参戦した。彼は、経済産業省の役人と頻繁に連絡を取って、日産のサポートに回る様に要求した。
同省は、ナダ氏の要求を明文化したフランス政府との間の合意書のドラフトを作成した。要約すれば、フランス政府は日産の独立性を尊重せねばならず、いかなるコミュニケーションも日本政府を通して行わなければならないというものだ。
それは、日産の幹部から見てもあまりに過激な要求だった。カワグチ氏はゴーン氏に「ドラフトを通すのは無理だろう。」と語った。日産のCEOの西川氏は、日産は首相官邸に通産省をより確実にコントロールするように要求すべきだと語った。カワグチ氏は、さすがにそれは日産が出来る領域を超えていると思った。
日産は難しい立場にいた。フランス政府の介入を回避ために日本政府の助けを求めていた。しかし、日本政府にとってフランス政府をコントロールするのは難しかった。ゴーン氏はそれまで日産の独立性維持のために発言してきたが、それを維持してくれるのかどうかは不確かとなっていた。フランス政府とゴーン氏からの圧力によって、ゴーン氏のかつての盟友は、彼を終わりにするための計画者になっていった。
日産の調査に詳しい人によれば、ナダ氏はゴーン氏に何年も仕え、オランダのZi-A Capitalという日産の関係会社に関する奇妙な金融取引をみてきた。同社の開設に詳しい人によれば、その会社はスタートアップ企業へ投資する会社のはずだった。
その代わりに、その会社はゴーン氏がコントロールするオフショアの会社を通して、ゴーン氏の家を購入していた。ゴーン氏のスポークスマンは、その家は会社が保有していて、購入は適切なチャネルを通して行われたと言っている。
日産の内部調査により、ゴーン氏が行ったとされる不適切な行為が幾つも発覚した。その中には、日産が資金負担したベイルート、リオデジャネイロ、パリの家を彼が使用していたことも含まれる。ゴーン氏の家族は、それは日産の他の人からも認められていた役員の特典だったと述べた。
6月にはナダ氏は日本の検察と司法取引をした。それによって犯罪捜査は加速された。
ゴーン氏はこうした動きには全く気づかず、2つの会社の統合をさらに進めるという彼の計画を推進していた。

失脚
フランス政府は、ゴーン氏に、政府の要望をどの様に満たしていくかのロードマップを、615日までに示すように求めた。ルノーの株主総会までに計画を発表したいという考えだった。しかし、日産が抵抗を続けたために、期限守れなかった。
夏の間、西川氏は、日産を分割する計画を密かに作成していた。西川氏がゴーン氏に送った書類によれば、その計画は、本社機能をアライアンスに移し、実働部隊を日本に残すというものだ。その中で、西川氏は、これ以上待つよりも、20203月までに新しい枠組みを作った方が良いと書いていた。ゴーン氏が尋ねると、西川氏は、両社にとって受入れ可能なシナリオを作っていると答えた。
関係者によれば、秋までにゴーン氏は枠組みについて決定した。日産、ルノーと小さなパートナーである三菱自動車の上に、持株会社を作るというものだ。この案によれば、持株会社のそれぞれのユニットは、独立して機能することを約束されるが、一つの株式として取引される。
内部調査に詳しい日産社員によれば、検察がゴーン氏を刑事告訴するための十分な証拠を掴んだということを、、西川氏は10月初旬に部下のナダ氏やカワグチ氏から知った。
その後数週間にわたって、ナダ氏は検察がゴーン氏の飛行機が東京に着陸したらすぐに中に踏み込むためのアレンジをした。
一方、西川氏は、アライアンスの将来について話し合うためのゴーン氏との個人的な会談をモロッコで行った。その会議の結果について報告を受けた人によれば、彼らは1時間半にわたって話し合ったが、西川氏は捜査については触れなかった。それが2人が会った最後だった。
ゴーン氏が1119日に東京に着陸すると、検察官が踏み込んできた。ゴーン氏は最初は動揺したが、日産の政府関係役員であるカワグチ氏に電話をした。ゴーン氏の長い間の部下であるカワグチ氏が事態を打開してくれると信じて。ところカワグチ氏が、事態を打開する代わりに、弁護士を送ってきた。
彼に対する多くの容疑について有罪となれば、15年以下の禁固刑となる。彼の裁判は早ければ秋には始まる。