Thursday, March 7, 2019

こんまり流の片付け、中古品店はときめかず【A1面】

「人生がときめく片づけの魔法」の著者、近藤麻理恵さんのネットフリックス(Netflix)オリジナル番組「Tidying Up With Marie Kondo」が原因で、欧米の中古品店に大量のがらくたが持ち込まれて大問題になっているというユーモラスな記事が7日の1面に掲載された。


 【要約】WSJ1面下の「各国の面白い文化を紹介するコラム」(毎日掲載)で取り上げられたこの記事、近藤さんの片付けメソッドに忠実な消費者が、家のがらくたを中古品店に持込み、中古品店が大混乱に陥っている様子を、ヒューストン、シドニー、ロンドンなどの事例を交えて、面白おかしくレポートしている、

***** 以下本文【記事全文の和訳】
どんより曇ったある日、アン・カーティスさんはステーションワゴンの後部座席にがらくたを積み込んだ。末娘の大学進学をきっかけに家を片づけたいカーティスさんは「コンドウに夢中」だと語る。「こんまり」として知られる片づけのカリスマ、近藤麻理恵氏のことだ。「ロフトや物置、ガレージを整理したくてたまらない」
何年も使っていないゲームやくたびれたハンドバッグ、靴、装飾品、寝具などを積み、ロンドン郊外のギルフォードのリサイクルショップに行くと、汗にまみれ、いらいらした様子の年配の男性が現れた。
「もらって頂きたいもの物をお持ちしました。」と彼女は微笑みならが言った。その男性は目をくるくるとさせながら、「みんなそう言って来るんだ。」と言った。
近藤麻理恵は中古品店にとってはときめく魔法ではないようだ。
1月にネットフリックスで「タイディングアップ・ウィズ・マリエ・コンドウ(邦題は『KonMari人生がときめく片づけの魔法~』)」が開始されて以来、中古品店は寄付で溢れ返っている。問題は、汚くて擦り切れた洋服、みにくいガラクタ、販売出来ない器具などが大量に持ち込まれることだ。
「寄付は我々のビジネスには無くてはならないもので、大歓迎です。」とヒューストンにあるグッドウィルの上級地域営業マネジャーのデーヴィッドブラッドンさんは言う。「しかし、そういった寄付品は良い状態であって欲しいし、ましてや家族新聞に書けない類のものでは困ります。」と彼は言う。
世界中の人々が「こんまり」メソッドを使って、片付けをしている。「こんまり」こと近藤麻理恵氏は「人生がときめく片づけの魔法」を出版した日本の片づけの専門家だ。出版社によれば、2014に出版されたこの本とその続編は、世界中で1千万部を売り上げた近藤氏はときめきを感じる物だけを持つことを人々に勧めている。
個人レベルでは、心をこめてガレージを片付けたり、Tシャツをたたんだりすれば、爽快感を感じることが出来るという。世界中で片付けがブームになる中、寄付センターは本当の意味で誰も欲しがらないもので埋め尽くされている。
とても使い物ならない廃品を寄付下さる方々がいらっしゃるんです。」とオーストラリアの慈善団体ヴィニーズのマネジャーであるジャッキドロプリックさんは言う。「我々のところは、人がゴミを捨てるための場所ではありません。」
シドニーの中心地にあるヴィニーズの倉庫で働くボランティアは、週に265,000ポンドもの古着を取り扱っている。ヴィニーズによれば、シドニーでの1月の寄付は前年の同月に比べ35%も増えた。こうした状況を作り出しだ原因は、近藤氏のネットフリックスでのデビューにある。
「家の中を全て一回で片付けなければならないと、みんなあせっている。」と郊外のグレイステインにある支部を管轄するレングペイングさんは言う。米国では通常冬の間は中古品の取引は減少する(春の片付けの時期に再び回復するが。)のだが、中古品店の中には、物が溢れかえってしまい、寄付の受付を取りやめているところもある。
米国とカナダで中古品店を運営するグッドウィルインダストリーズインターナショナルは、1月の寄付は、ワシントンで32%以上、ヒューストンで22%以上、ヴァージニア州ローノークで20%上、ミシガン州グランドラピッドで16%増えている。
最初は、この店は、政府閉鎖によって休暇を与えられた労働者が暇をもてあまして片付けをしているからだろうと考えていた。しかし、寄付は減っていかなかった。「これらの寄付の多くは、近藤麻理恵氏の影響だと考えている。」とブラッドンさんは言う。
「正直なところ、ちょっと多すぎます。」とヒューストンのグッドウィルストアのラダトリオンハーヴェイ氏は言う。彼はスタッフのモラルを維持するために、月間優秀従業員賞などを含め、特別表彰を行ったりしている。もうずいぶんと長い間、従業員に感謝し続けていると彼は言う。
ヒューストンの高級住宅街リバーオークスにある彼の支店では、以前ある男性がガールフレンドの靴を持ち込んだことがある。箱に入ったままのグッチたプラダで、1,000ドル近くの価値があるものだ。(そのボーイフレンドによれば、ガールフレンドは新しい靴の買い物に行くために待っているとのこと。)
全ての物が明らかに売れるものとは限らないが、やってみるまで分からないものだ。最近、男の人が近藤氏の片付けメソッドに魅せられてマネキンを持ち込んできた。スタッフが引き受けて良いものかどうか思案していると、別の人がやってきて19.99ドルで買って行った。
ヒューストンのグッドウィルの広報マネジャーのテリーパリスさんによれば、彼女の勤務初日に、刀、短剣、ライフルなどが入った55ガロンのドラム缶が持ち込まれた。彼女は、自分も何か持ち込めないかと考えた。「もう必要のない大弓なんかどうかしら。」
中古品店によれば、販売出来ない洋服は、ぼろ布としてリサイクルされることが多いようだ。その他のものは、埋め立てに使われたり、バイオハザードとして破壊されたりする。
「全てのごみが、それにキスをして、それまでのサービスに有難うを言えば、消え去るというものではない。」と政府機関であるサステイナビリティーヴィクトリアのCEO代行であるステファンジエルシュは言う。(近藤氏は、何かを捨てる時には、それに感謝をしてから捨てるべきだと説く。
彼女は、近藤氏の6つのルールに7番目のルールを付け加えることを提案している。それは「もったいない」(ものを無駄にすること申し訳なく思うことを表現する日本語)だ。
近藤麻理恵のフォロワーの中には、リサイクルについて賢くなった物もいる。ロンドン南部に住む33才のアリソンスパイサーは、8回から成る番組を2晩でまとめて見てしまった。「はまっちゃたんです。」

でも、中古品店に迷惑をかけないために、彼女は寄付を小分けにしている。洋服を5つの袋、ガラクタや子供の本屋おもちゃを2つの箱に分けて、2つのお店に別々の日に運び込むのだ。「反応はまずまずといったところですが、今までのところ、寄付を突っ返されたというところはありません。」と彼女はいう。