2日午後に第4次安倍内閣が発足したが、WSJは翌日の国際面で、このニュースを「女性が一人しか登用されなかったこと」にフォーカスして報道した。
今回、安倍首相が選んだ入閣者は、片山さつき氏を除けば、全員男性、しかも殆どが60才以上で、派閥のボスが推薦した人ばかりだということを指摘。その上で、「派閥のボスも全員男性だ。」との痛烈な皮肉を交え、日本がいかに男性中心の社会であるかを浮き彫りにしている。安倍首相自身が「女性の輝く社会」を目指して、6年前に自民党復権に導いたにも関わらず、様々な言い訳をして女性を登用しないのはおかしいとの思いが行間に読み取れる。安倍首相が本気なら、民間から優秀な女性を登用することも出来るし、女性大臣を養成する仕組みを作ることも出来るはずだというコメントも紹介している。
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安倍首相は、女性が輝く社会を作りたいと言ってきたが、火曜日の大臣指名では1名の女性しか登用しなかった。
2012年に首相に座についてから、安倍首相は19-20人程度の大臣のうち、5名の女性を入閣させたこともある。
20人の大臣で構成される内閣の中で、唯一の女性大臣となったのは、59才の片山さつき氏だ。彼女は、女性活躍大臣などを担当する。
記者会見で、この低い女性大臣の数について聞かれて、安倍首相は「日本は女性活躍の社会がスタートしたばかりで、これからどんどん入閣する人材は育ってくる。」と答えた。
彼は「元財務官僚の片山氏は、政策通であるだけでなく、フットワークも軽く、超人的なガッツの持ち主でもある。2人分も3人分もある持ち前の存在感で、女性活躍の旗を高く掲げてもらいたい。」とも発言した。
安倍首相は、しばしば女性の躍進は経済成長にとって重要だと言ってきたが、日本では、女性は、政界やビジネス界の上層部ではまだまだ稀な存在だ。
早稲田大学教授で元議員の中林美恵子氏によれば、安倍首相は、彼の内閣を、忠誠心の強いベテランンで固めようとした。安倍首相にとって、9月の自民党党首選挙に続く数年が、最後の内閣となるからだ。
「(忠誠心が強くベテランという)この基準を満たす女性はそれ程多くない。」と中林氏は言う。「安倍氏はその人のイデオロギーと安倍氏に対して忠誠かどうかを、非常に注意深く検討した。」
片山氏は保守派で、「憲法を改正して日本の軍隊を合法化しよう」という安倍首相の思いを支持している。
片山氏の他に初入閣を果たしたのは、殆どが60才以上の男性で、安倍首相を支持する派閥のボスたちによって推薦された人たちばかりだ。派閥のボスたち自身が全て男性だ。
安倍氏の前内閣にいた2人の女性は、両方とも今回の組閣で職を失った。
そのうちの一人で、元総務大臣の野田聖子氏は、安倍氏が女性の躍進を約束したことが、6年前の自民党の復権につながったと述べた。「女性大臣の数は減少し続けています。私はとても心配しています。」と彼女はのべた。
女性大臣候補のプールは小さい。衆議院では、女性議員の数が10%に過ぎず、列国議会同盟によれば、これは193の国のうち161位にあたる。
米国では、議員の20%が女性だ。
「もし、女性大臣を増やしたいなら、政府は民間から登用することも出来る。」と住友三井ファイナンシャルグループのシンクタンクである日本総研の小島明子氏は言う。「しかし、もし、内部から女性を登用しようとするなら、大臣ポストにつけるような女性議員を育成するためのスポンサーシステムを整備する必要がある。」