Friday, October 5, 2018

ミャンマーは地域の連携強化へ動く【A18面(国際面)】

ミャンマーのアウンサンスーチー女史が5日から日本を訪問しているが、WSJはこのニュースを来日当日の5日の国際面で速報した。


ロヒンギャ問題に対する西側諸国からの風当たりが強くなる中、ミャンマーは日本に急接近している。外交に確固たる信念がなく、どちらかというと日和見主義的な日本は、ロヒンギャ問題に目をつぶって、ミャンマーへの経済支援を行い、同地域での覇権強化を狙っていると言っているように読める。

***** 以下本文 *****
ロヒンギャ問題についての西側諸国との関係悪化により、ミャンマーは、日本やインドといった地域の大国へ急接近している。そこには、中国の影響へ対抗したいとの考えもある。
イスラム教少数民族ロヒンギャへの軍事攻撃について、西側諸国は、アウンサンスーチー氏の文民政府を激しく非難しているが、日本とインドは両国ともそうした非難を避けてきた。こうした軍事攻撃によって、推定で1万人が死亡し、70万人がバングラディッシュの難民キャンプに避難した。
ミャンマーの外交筋によれば、金曜日にスーチー氏は、日本へ向かい、日本の投資と外交支援の拡大を求める。彼女は、安倍首相や開発援助関係者と会談する予定だ。
ミャンマーの外務省は、ロヒンギャ問題について理解を示しているとミャンマーが考えている国々との関係は改善しているとしていて、例として日本、インド、中国をあげた。
「日本はラカイン問題を公正な目で見ている。」と外務省高官のソーハン氏は述べる。ラカインはロヒンギャが住んでいる州の名称だ。「日本はミャンマーを政治、経済の両面で支えてきた。」
国連の調査官が作成して、先月公表された444ページのレポートは、ミャンマー軍がロヒンギャの村での組織的な大量虐殺にかかわったとする証拠を示し、ミャンマー軍のリーダーたちは大量虐殺の罪で、処刑されるべきだとしている。
そうした粛清以来、西側諸国からの投資は枯渇し、ミャンマーの政治家やビジネスマンの間では、このままでは、中国の衛星国に成り下がってしまうという恐怖感が生まれた。
こうした中、日本が同国にとって重要なパートナーとして浮上してきた。先月、国連人権委員会で、ミャンマーの人権侵害に関する情報を集めて保存するための国際機関設立に向けての投票が行われたが、日本はこれを棄権した。
日本は、ミャンマーの重要なインフラプロジェクトに融資を行うことを発表した。例えば、ヤンゴンとマンダレイという2つの主要都市を結ぶ鉄道建設プロジェクトに対して、今年、5億ドルの低金利ローンを行うことをコミットした。また、日本はミャンマー政府と共同で運営している経済特区を拡張する計画だ。この特区は、日本の製造業のハブとなって投資を呼び込んでいる。ミャンマー財務省によれば、日本は2014年以来、この地域に44,100万ドルを投資した。
「日本は、中国の影響を真剣に分析しており、こうした対応は当然の結果だ。」とワシントンの国立戦争博物館のザッチャリー・アブザ教授は言う。「日本は、自由民主主義国家だが、外交方針はあまり重視をしてこなかった。安倍首相は、いざという時には冷徹に振る舞う現実主義者だ。」
先月のワシントンポストへの寄稿の中で、日本の河野外務大臣は、国際社会は、ミャンマーのロヒンギャ問題解決への取組みを、批判するのではなく、「辛抱強く支援」すべきだと述べた。外務省の報道官は、「ただミャンマーを批判するだけでは、難民の帰還は実現しない。」と言う。
同様に、インドもラカイン州からの難民の流出に懸念を示していて、ライカイン州を開発するための支援を打ち出した。
同時に、インドはミャンマー政府の支援を表明した。インドは、今年、粛清から数ヶ月後に、ミャンマーと初めて合同海軍演習を実施した。
インドは、ロヒンギャは国家の安全保障にとって脅威になるというミャンマーの見方を支持している。木曜日にインドはロヒンギャのグループをミャンマーに国外追放した。