武田薬品工業は28日にアイルランドの製薬会社シャイアーに対し 買収提示を検討していると発表したが、WSJは翌29日の1面で このニュースを速報した。
円高が進んだ現在は、 日本企業にとって海外企業買収のチャンスであること、 国内市場が縮小する中で、 武田も海外進出しなければ生き残れないこと、買収が成功すれば、 売上300億ドルを超える世界最大の製薬会社となることなどを、 詳細に伝えている。
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武田は水曜日にロンドン株式市場に上場しているシャイアーの買収 を検討していると発表した。シャイアー社は、注意欠陥・ 多動性障害(ADHD) の治療薬であるアデロールなどを作っている。買収が成功すれば8 00億ドルを超える規模のグローバル薬品会社が成立する。今年は M&Aが活発に行われているが、 その多くはヘルスケア分野で行われている。ヘルスケア企業が、 急速に変化する業界状況に対応しようとしているからだ。
武田は、国際的な存在感を高めるために、 ここ数年多くの小規模な買収を行ってきたが、 今回の買収は武田にとって最大のものとなる。武田は、1781年 に設立され、売上と時価増額で日本最大の薬品メーカーだが、 アナリストによれば、国内市場の成長鈍化傾向を補うために、 海外ビジネスを継続拡大する必要がある。
「もし、武田が何の手も打たなければ、 ただ単に死ぬのを待つだけだ。」 と東京の楽天証券のチーフストラテジストであるクボタ・ マサユキは言う。
水曜日に行われたこの発表の後、シャイアーの株価は14%上昇し 、株価総額は320億ポンド(450億ドル)となった。 武田の株価は、木曜日午前中の東京市場で、6%下落し、 株価総額は390億ドルとなった。
円の水準は、2016年11月以来の高値となっており、 日本企業によるグローバル企業買収への追い風となっている。1年 前に比べて、国内で稼いだ円を使えば、 ドル建てのものをより多く購入することが可能となる。
武田は、シャイアー買収について、 まだ初期段階であり検討段階であると述べた。しかし、 米国の製薬市場での地位を強化するとか、 製薬製品の品揃え強化するなど、6つの買収理由をあげ、 買収に対する意欲を見せた。
シャイアーグループの本社はアイルランドにある。米国事業は、 売上全体の2/3を占めており、 マサチューセッツ州のレキシントン郊外から行われている。
同社は、米国では、アデロールが有名だが、 フレミングオーンスコヴCEOのリーダーシップのもと急速に業務 を拡大しており、いまでは希少病薬の最大メーカーの1つになって いる。
声明の中で、シャイアーは武田の発表について言及したが、 まだ武田からの正式なアプローチは無いとしている。また、 そうしたオファーが行われるかどうかも分からないとしている。 武田は、英国の買収ルールで、4月25日までにシャイアーに対す るオファーを行うかどうか発表せねばならないとしている。
グラスコ・スミスクラインはノヴァーティスの株式の36.5%を 取得して、 コンシューマーヘルスケアの合弁企業を設立すると発表したが、 武田のこの発表はその翌日だった。
シャイアーはここ数年、常に買収交渉を行ってきた。2014年に は、イリノイのAbbVieが540億ドルでの買収を試みたが、 米国企業が登記上の本社を税率が低い国へ移動させることを禁ずる ことを目的とした税務ルールが導入されたため、中止となった。
この買収が成功すると、武田の年間売上は、300億ドルを超え、 世界最大の製薬会社となる。