10月11日、2016年度第2次補正予算が参院本会議で可決、 成立したが、WSJはこのニュースを翌12日の国際面で速報した 。
3.3兆円規模の補正予算が成立したが、 本田悦郎氏ら安倍首相のブレインは、 日銀にお金をどんどん刷らせてもっと大規模な財政支出をすべきだ と安倍首相にプレッシャーをかけているという内容。 こうした財政支出拡大論を紹介した後、 財政規律を維持すべきだとする3人のエコノミストの発言や、 プライマリービジネスを達成したいという安倍首相自身の発言も併 せて掲載している。全体としては、 突出した財政支出はリスクがあることを強調している様に読める。
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日本の国会は火曜日に安倍首相の経済再生計画を軌道に乗せるため の追加財政支出策を可決した。しかし、 日本のリーダーは既により多くの対応を求める声に直面している。
安倍首相の筆頭アドバイザーや何人かのエコノミストは、 日銀は政府に対して無利子で無制限の資金投入をすべきで、 安倍首相はその機会を逃すべきではないと述べた。 そうした貸出額が増えていくことに反対する人々は、 経済刺激策の実施のために更に国債を発行することは、 日本は財政規律を失ったというメッセージを送ることになると言う 。
追加予算は3.3兆円(320億ドル)の追加支出を含んでいる。 この結果、2017年3月に終了する今年度の予算は100兆円に 達し、昨年度から2%近くの増加となる。
新規の支出は、低所得者への現金給付、イギリスのEU離脱の経済 へのインパクトを和らげる対策、 リニア新幹線建設費の一部負担等に使われる。
さらなる対策を求める声があがっているのは、 日銀が9月21日に、国債の買い入れ額を目標とするのではなく、 新たに10年物国債の利子をゼロにすることを目標にすることを決 定したことによる。
理論的には、この日銀の政策により、 政府は全く利子を払わずに好きなだけ10年国債を発行できること になる。なぜなら、日銀の政策は、 日銀に金利ゼロを維持するために必要となる国債を購入することを 強いるからだ。
技術的には、日銀は国債を、 直接政府から購入するのではなく市場から購入しなければならない のだが、実際の状況は、政府がその支払いを、 日銀が新たに発行したキャッシュで行うという、 マネタイゼーションに似ている。
「国債発行額を増加させるのは良いことだ。」 と日本のスイス大使で、 経済政策について安倍首相にアドバイスを行っている本田悦郎氏は 言う。「もし、日銀がそのすべてを買い取れば、 それは実質的にマネタイゼーションとなり、非常に強力だ。」
こうした議論は、金融政策の限界への対応として、 経済刺激策として財政政策を使おうというグローバルレベルでの議 論の一環だ。日銀による3年半にわたる積極的な金融緩和策にもか かわらず、日本の経済は低成長から抜け出すことが出来ず、 消費者物価が下落し続けている。ユーロ地域でも同じ様な状況だ。
1990年以降日本が継続的に財政支出を行った結果、 経済成長が実現出来なかったにもかかわらず、発行残高はGDPの 250%に達している。この率は世界中で最も悪い。
最も大きな障害は企業が賃金をあげることを嫌がってきたことだと 農林中金調査機関のチーフエコノミストであるミナミタケシ氏は言 う。安倍首相は、企業に対し、 労働者をもっと気前よく報いるように強力に要求した方がよいと彼 は言う。
大和証券の上級エコノミストのノグチマイコ氏は、 あまり財政支出を増やし過ぎると、 国民の日本経済の将来についての不安が増し、 逆効果になると言う。
「財政支出の一つの大きな特徴は、一旦増加の軌道に乗せると、 ブレーキを踏むことが非常に難しいことだ。」とノグチ氏は言う。
安倍首相のアドバイザーである本田氏は金融緩和の信奉者として知 られている。木曜日のインタビューで彼は、 自信を取り戻すためには財政支出と構造改革が必要だ強調した。 彼は、教育、子育て、貧困撲滅、テクノロジー、 職業訓練へのより多くの支出を求めた。
安倍首相は、日本の予算のプライマリーバランス、 つまり国債に頼らない状況を実現したいと述べた。 本田氏はそうした公約へのプライオリティーは低くすべきだとした 上で、「それは達成しなくても構わない。」と述べた。