マウスの幹細胞から大量の卵子を実験室の培養だけで作り、 この卵子を受精させてマウスを誕生させることに成功した、 と九州大学や京都大学などの研究グループが17日付の英科学誌ネ イチャーに発表したが、WSJは翌18日の国際面でこのニュース を速報した。
既に、幹細胞から精子を作る技術は確立しているが、 今回は卵子の生成に成功。 その人工卵子を使ってマウスを生成する過程を詳細に説明した上で 、哺乳類への適用には数年、人間への適用には10年程度かかると している。この記事を読む限り、精子と卵子を両方とも人工的に生成し、 それを使った人間を生成することが10年ほど後には可能になりそ うだ。 理論上は人間の大量生産などというのが可能になるのだろうか。 こうした分野の研究で日本が先頭を走っていることを誇りに思うと 同時に、倫理面での議論を活発化させる必要性も感じる。
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日本の科学者が幹細胞からマウスの卵子を生成する過程をすべて実 験室で行うことに成功した。 人間の不妊問題の基礎研究に新たな道を開く業績だ。
「卵子が生成される全過程をマスターすることは、 生殖生物学と再生医学にとって重要な成果だ。」 と月曜日にオンラインで公開されたネーチャーの研究の中に科学者 は記述した。彼らによれば、 技術的には卵母細胞と呼ばれる研究所で生成された卵子は、 健康な子孫を生成した。
「我々はこのことに大変に興奮している。」 と日本の福岡にある九州大学の幹細胞生物学者であり、 この研究のリーダーである林克彦氏は述べた。「 我々は卵子をいくつでも培養できるようになった。 そしてより簡単に出来る様になった。」
この発見は、 再生に関する基礎生物学の更なる発展を反映している。 これまでは、幹細胞を卵子に変換させるための唯一の方法は、 発育の初期段階の幹細胞を母親の子宮に移植することだった。子宮 では、自然物質が発育のプロセスを引き継ぎ、完了させる。
理論的には、この新しいテクニックは、いつの日か、 これまで体外受精に成功しなかった女性や、 子供の時に癌にかかり卵子を生成する能力を失った女性にとって、 最後の拠り所をなるかもしれない。現在は、 マウスで機能するだけだが。
また、最近行われた他の実験では、 科学者たちはマウスの幹細胞を機能する精子に変換できるかを研究 している。2011年には京都大学のサイトウ・ ミノリをリーダとする分子生物学者たちが、 幹細胞を利用して発育初期段階の精子を生成したと発表した。 今年初めに、中国広州市の科学者たちは、CELL STEM CELL誌に、皿の上で、 発達の初期段階にある精子を生成する方法を発見したと述べた。
しかし、研究者たちによれば、 こうしたテクニックを人の細胞で機能させるのは難しく、 異常なものが生成されるリスクは極めて高い。
新しい卵子の研究では、林博士と彼の同僚は、2つの異なった幹細 胞から始めた。ひとつは、胎芽から取られたもので、 あらゆる種類のマウスの組織になる能力を持っている。 もうひとつは人工多能性幹細胞と呼ばれるもので、 より柔軟性のある胎児の様な状態に変換出来る様に、 大人の細胞を再プログラム化したものだ。
科学者たちによれば、 かれらはタンパク質と成長因子を混ぜたものを使って、 両方の幹細胞に刺激を与え、 卵子の前身である始原生殖細胞を生成した。そして、 科学者たちは、 研究所の皿の上の卵巣細胞をサポートするベッドの上でこれらの細 胞を育成した。様々なホルモンや化学物質を使用し、 約3週間後に、これらの細胞は卵子となった。
これらの卵子を自然のマウスの精子と受精し、 研究所の卵子は胎児となり、養母に移植され妊娠し、 オスとメスの子供が誕生したと科学者は発表した。しかしながら、 成功率は通常の卵子によるものに比べればごくわずかにすぎない。
この業績が哺乳類に適用されるまでにはまだ何年もかかるだろう。 そして、研究室内だけで、 幹細胞から人間の卵子を作れるようになるまでには、10年もしく はそれ以上かかるだろう。