Friday, October 21, 2016

長時間労働による自殺が働き過ぎの日本を揺り動かしている【A7面(国際面)】

電通の新入社員だった高橋まつりさんの過労自殺問題に関連し、2013年に当時30歳で病死した同社本社の男性社員についても、三田労働基準監督署が長時間労働が原因の過労死と認め、労災認定していたことが1020日に判明したが、WSJはこのニュースを翌21日の国際面で速報した。



この事件により、電通が刑事告訴される可能性があること、電通が対策(残業時間の上限を70時間/月から65時間/月に変更)を講じたことを伝えた上で、日本には「過労死」という特別な言葉があり、過労死は、年功序列を背景にした(時には基本的人権を無視した)日本の特殊な職場環境(残業しなければならないという無言の圧力)に原因があるとしている。また、安倍首相がこうした環境を変えることを、優先政策課題にしていることにも触れている。

***** 以下本文 *****
日本最大規模の会社での長時間労働による2つの死が、日本が長時間労働文化から抜け出そうとする戦いについての懸念を再燃させいる。
木曜日に、政府関係者は、2013年に起きた広告会社である電通30歳の従業員の死は、長時間労働によるものであると認定した。この発表は、労働捜査官が2015年の24歳の女性従業員の自殺に関係する証拠を求めて電通の事務所を捜索した数日後に行われた。
労基署の関係者は、両方のケースとも過労死(働き過ぎによる死を意味する日本特有の言葉)であり、もし違法な労働慣行が広く行われているのであれば、検察を通して電通を刑事責任で告訴することが出来ると述べた。最も極端なケースでは、検察がその後、訴訟にするかどうか決定する。
「働き過ぎによって命を落とすということは、起きてはならないことだ。」と日本の厚生労働省の塩崎泰久大臣は今週述べた。彼は電通の労働慣行について全国レベルでの調査を行う様に求めた
日本最大の広告会社である電通は、死亡は認めたが、それ以上のコメントは拒否した。スポークスマンは、会社は、残業管理が不十分であったことは認識しており、労働条件の改善に動き出すと述べた。電通は、残業時間の上限を月70時間から月65時間へ減らすと述べた。
電通の社長である石井直氏は今週、従業員に対し、刑事訴追の可能性を認め、「恥ずかしいばかりだ。」と述べた。
日本は何十年にもわたって会社の事務所に蔓延する極端な労働倫理と戦ってきた。
今月の政府の過労死についての白書によれば、日本企業の23%くが月に80時間以上残業している従業員がいると報告した。また、同白書によれば、昨年日本では24,000件の自殺があったが、そのうち2,159件は職場問題に関係する自殺だった。
過労死で愛する人を失った家族の弁護をしてきた弁護士のタマキカズナリさんによれば、日本の企業は多くの場合年功序列の上下関係のもとで運営されており、会社への忠誠を重視する。こうした企業文化が、従業員は長時間働かねばならないという強いプレッシャーを感じる環境を作り出している。
「労働環境と労働時間について、日本は人権についての基本的な認識に欠けている。」と彼は言う。
24歳の高橋まつりさんは、非常に権威のある大学である東京大学を卒業し、20154月に電通に入社した。彼女は昨年のクリスマスの日に会社の寮から飛び降り自殺を図った。自殺する前の数ヶ月、彼女は、労働時間や上司による嫌がらせについての悲痛な訴えを、ソーシャルメディアに掲載していた。
高橋さんの母の弁護士によれば、自殺の直前の1ヶ月の彼女の残業時間は100時間を超えていた。
30歳の電通職員については、詳細は分かっていない。
安倍首相は、長時間労働を含む労働システム改革は、優先課題だと述べた。彼の目標の1つは、子供のいる女性や、長時間労働ができない家庭の事情を抱える男女の労働者にとって、働きやすい環境を作ることだと述べた。