29日に日銀が発表したゼロ金利政策について、翌30日の社説で取り上げた。
日本が遂にゼロ金利政策の導入に踏み切った。これにより、欧州、日本という経済先進2地域の両方が、ゼロ金利政策と量的金融緩和の両方を実施したことになるが、両地域とも期待された効果が出ていない。その理由は、両地域とも硬直化した労働市場などの規制緩和が進んでいないからだとしている。黒田総裁にこれ以上打つ手は無く、安倍首相が安保よりも規制緩和を優先させない限り、日本は時間切れになると手厳しい。
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「日銀の黒田総裁は、金曜日にまたもや驚きをもたらした。銀行の準備金にマイナス0.1%の金利を課すことを発表したのだ。その日の終わりまでに、円はドルに対して1.75%下落し、日経株価は2.8%上昇し、最近の傾向は反転した。」
「しかし、マイナス金利は量的緩和よりも実態経済に効果があるのだろうか?12月のデータによれば、日本は殆ど成長していない。工業生産は11月に比べて1.4%減少、消費者支出も前年比4.4%の下落だった。インフレ率は0.2%で、黒田氏は目標としている2%に2017年よりも前に達成出来ないと認めざるをえなかった。」
「日銀による国債の購入は、日銀のバランスシートを拡大させ、その規模はGDP比で2013年の35%から75%に達した。米国連邦準備銀行のバランスシートはGDP比25%だ。しかし、日本の銀行の貸出残高の伸びは、現在年間2.2%で、予算を大きく下回る。企業には約2兆ドルの現金が積みあがっており、実質賃金は減少傾向にある。」
「経済学者であるリーチャードカッツ氏は指摘する。先進国の輸出高に占める日本の割合は、円の価値が30%も下落したにもかかわらず、2005年~2007年の8%から2015年~2017年には6.5%に縮小した。低成長の世界において、通貨の価値低下は、自国の国民を貧乏にし、資本逃避を誘発するリスクがある。」
「低金利は銀行と企業にもっと大きなリスクをとる様に促すいちかばちかの動きにみえる。しかし、日銀にとっても国債を買うのをより困難にする。なぜなら、銀行が国債を保有するからだ。黒田氏は準備金への金利をさらに下げることを示唆しており、それへのヘッジのためだ。日銀が購入する国債は既に不足している。黒田氏の新しいバズーガは市場の興味を便宜的にシフトさせただけだ。」
「マイナス金利が量的緩和よりもより効果的だという証拠はあまりない。欧州中央銀行は2つの対策を逆の順番で行ったが結果は同じだった。2014年6月、欧州中央銀行のマリオドラギ総裁は銀行準備金への金利をマイナス0.1%まで引き下げた。7ヶ月後にマイナス金利があまり効果が無いことがわかると、彼はソブリン債の買取りを開始した。いまやユーロ圏はリセッションに向かっている。彼は更なる金利低下と国債の買取りを約束している。」
「日本と欧州において新しい形での金融政策への挑戦が失敗に終わっていることは、資源をより生産的に使用させるための大きな改革が必要な社会においては、いくら中央銀行が金融政策を実施しても経済は成長しないことを示している。『糸を押すことは難しい。』という比喩は未だに当たっている。企業が有望な投資先を見つけられない場合、いくら資本が安くても資本の創出は止まったままだ。」
「韓国との違いは驚くほどだ。1990年代後半のアジア通貨危機の時、韓国はその経済を開放し、より大きな競争に晒した。いまや韓国企業は日本の同業他社と比べてより早いペースで成長している。韓国のパク・クネ大統領は規制だらけの労働法の改正を推し進めている。一方で、日本の安倍晋三首相は安保法案の成立を優先させ労働法案の成立を遅らせた。」
「安倍氏は規制緩和を含めた市場寄りの公約を打ち出して選挙戦を戦った。しかし、この3年間財政支出を拡大させているだけで、選挙公約の実施はためらっている。黒田氏にはこれ以上市場を驚かせるネタがなくなってきているが、安倍氏にとっては改革に真剣に取り組むための時間が無くなってきている。」