「テスラの今日の成功の裏には、トヨタの急発進問題に乗じて、カリフォルニア州の政治家達がトヨタに圧力をかけ、テスラに有利な条件を無理に承諾させたという裏取引があった。」とする記事が専門家意見欄に掲載された。
この記事は次の様な書き出しではじまる。
「2010年に起きたトヨタの急発進問題は裁かれることのないアメリカの不正直さの大きな象徴だ。政府調査団が証明した通り、電子プログラムにバグは無かった。そして、語られることのなかった真実の中の一つにテスラに関連する問題があった。」
「『私はそれをやらなければ、誰がほかの人が実行するだろう。』というのが、エロン・マスク氏のテーマソングだ。彼は、納税者からの補助金によって彼の帝国を築き上げた。過去2週間をみても、電池とソーラーパネルのビジネスに関連して、ネバダ州とニューヨーク州から20億ドルを受け取った。そして極め付けは、連邦政府、州政府からの電気自動車ビジネスに関する補助金だ。私の知る限り、最近だけみても、12月に新たな税額控除により、3,470万ドルの補助金がビル・ロッキャー州財務官から贈られた。」
長い記事なので暫く要約する。
歴史を振り返れば、2007年にテスラはニューメキシコ州に工場を作ることでほぼ合意しかかっていたが、ビル・ロッキャー州財務官カリフォルニア州財務官からの提案により、カリフォルニア州に寝返った。問題は、カリフォルニア州のどこに工場を置くかだ。
2009年8月27日、トヨタはカリフォルニア州フリーモント市のNUMMIと呼ばれるGMとの合弁工場を閉鎖しないで欲しいという州の政治家からの申し出を断った。そして、偶然にもその翌日にサンディエゴでレクサスが急発進問題を起こし4人が死亡する。この事件は、ディーラーによる不適切なマットの敷設によるものだとすぐに分かるのだが、ワックスマン州上院議員は電子プログラムのバグによるものと主張し続ける。そして、ビル・ロッキャーやワックスマンをはじめとするカリフォルニア州の政治家は、これに乗じて、トヨタに対しNUMMI工場を閉鎖しない様に圧力をかける。
トヨタは急発進問題によるイメージ低下によって蒙る損害に比べれば、政治的取引にかかる費用は安いものだと判断した様だ。数週間後、トヨタはテスラにNUMMI工場を破格の値段で売却。更にテスラに1億6千万ドル投資すること、そしてトヨタの電気自動車用部品を購入ことを合資した。こうした合意が、その数週間後に行われたテスラのIPOを成功させたのは言うまでもない。
この記事は次の様なコメントで締めくくられている。
「モラルの問題はもちろんのこと、テスラの様な一部の企業を優遇するために、納税者や雇用者を犠牲にするのは、カリフォルニアが抱える問題の解決策にはならない。Mommie Dearest的な愛は、ファウスト的な危険を孕んでいる。優遇された企業は、トヨタがそうであった様に、儲からない工場を維持しなければならないという圧力を感じる様になる。こうした状況は、政治家は自らの成功として誇ることが出来るが、結局は他の多くの企業がカリフォルニア州から逃げていく結果となる。」
「ところで、トヨタバッシングの最右翼はテッド・ルー州上院議員だ。彼は、トヨタはリンカーン大統領暗殺者であるジョン・ワイルズに例えた。ワックスマンは来月の選挙後に引退を控えているが、ルー氏はその後テスラを援護する新たな議員になるだろう。」
WSJは、トヨタの急発進問題は、カリフォルニア州の政治家による事実歪曲によって引き起こされたとして、トヨタに同情的な見方を示してきた。この記事では、一歩踏み込んで、そうしたカリフォルニア州の政治家の暗躍が、テスラを利したことを報じている。但し、こうした動きは、長期的にはカリフォルニア州からのビジネスの流出を招くことになるとして、政治家を牽制している。