Wednesday, November 30, 2016

***** 11月のまとめ *****

11月にWSJに掲載された日本関係の記事は5件。1月~10月までの1月当りの平均が9.2件だったので、平均を大きく下回った。5件という掲載回数は、1,2月と同数で、今年最低。


テーマ別では、政治関係が2件、経済関係が1件、社会関係が2だった。

政治関係では、「11月2日に安倍首相がミャンマーのスーチー国家顧問と会談したこと」「11月8日のトランプ氏の大統領選挙勝利を受けて、安倍首相が10日にトランプ氏へ電話しこと」の2件を取り上げている。安倍首相は(うまくいっているかどうかは別にして)世界中を飛び回って積極的に首脳外交を展開しており、17日にはニューヨークでトランプ次期大統領とも会談した。WSJがこのニュースを取り上げなかったのは残念。なお、WSJは、11月22日にトランプ氏の外交政策に関する記事を掲載した。その記事には安倍首相とトランプ次期大統領が握手をする記事を大きく掲載しているが、記事の中には日本に関する記述は無い。(この記事を上記に貼りつけました。)

経済関係では、「11月1日に日銀が現状の政策維持の決定をしたこと」を取り上げた。安倍首相と並んで、(その政策がうまくいっているかどうかは別にして)、WSJが注目しているのが、黒田日銀総裁だ。WSJは日、その動向に常に着目し継続して報道している。

社会関係では、「11月22日の福島沖地震」を速報。また、11月30日には「日本では高齢者が人手不足をおぎなっている。」という興味深い記事を掲載した。WSJは経済紙ではあるが、自然災害については、必ず速報している。また、日本の高齢化が社会に与える影響についても注目しており、様々な観点からの記事が頻繁に掲載されている。

掲載箇所では、5件すべてが国際面への掲載だった。

高齢者が日本の人手不足を補う【A8面(国際面)】

日本では高齢者が人手不足を補っているという興味深い記事が11月30日の国際面に掲載された。


日本は急速な高齢化により、労働人口が減少し、深刻な労働者不足に陥っている。政府は移民受け入れを拒み、若者は魅力のない仕事に就かないので、魅力のない仕事を担うのは高齢者だ。高齢者が魅力のない仕事に就かざるをえなくなるひとつの理由は、60歳を境に大企業の待遇が悪くなり、大企業で魅力ある仕事に就いてきた多くの労働者が、60歳を超えると自ら会社の外に飛び出し、中小企業に転出する選択をせざるを得ないからだとしている。大企業では、60代前半の給与は50代後半の給与に比べ1/3低いそうだ。この結果、中小企業には能力のある高齢者が集まるが、そのノウハウを引き継ぐ若者がいないという問題が起きているとしている。

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高齢化社会で人手不足が起きた時に何が起きるか理解するためには、アベタカシさんについて考えてみよう。77歳の元マッサージ師のアベさんは、妻が病気になったので、家の近くで仕事を探していた。彼は、駐車場で交通整理の仕事に就いた。
「年齢制限がなかったのです。」とアベさんは言う。「健康であれば、誰でも働けるのです。」
その仕事は、どんな天気でも、アベさんに交通整理のため立っていることを要求きつい仕事だ。つい最近までは、そうした仕事は若者の仕事だった。しかし、人手不足を補うために雇用主は高齢者に目を向ける様になっている。
日本では経済が停滞していると言われているが、東京では多くの求人広告を見かける。失業率は3%まで低下し、政府は火曜日に失業者の数が1995年以降初めて2百万にを下回ったと発表した。
政府統計によれば、100人の求人に対して、140の仕事がある。この水準はこの25年で最大だ。
もし、今四半世紀の経済がエコノミストの予測通りに成長すれば、6年後には過去最長の経済成長となる。
成長はいまだに低調で、今年は1%以下になりそうだ。しかし、そんな低成長でも人手不足を発生させるには十分だ。日本は出生率の低下により、1990年代以降労働者人口が減少し続けているからだ。
政府は、労働者人口の下落を補うための大規模な移民政策を認めていない。人手不足に悩む企業が増えるに従って、65歳以上で仕事に就いている人の数は過去5年で33%増えた。
こうした統計は安倍首相にとっては喜ばしいものだ。彼は、女性や高齢者が労働に就くことによる景気高揚を狙っている。特に高齢者は全人口の25%を占めるに至っている。
人手不足により、若者は仕事のえり好みをする様になっている。一方で、高齢者があまり魅力的でない仕事を選ばされている。
「我々の最大の問題は、十分な人がいないことです。我々の産業は人を惹きつける魅力がありません。」とジャパンパトロール警備保障の中田文彦社長は言う。同社は、大規模な工事現場に警備スタッフを派遣している。「この産業で働く若者は将来に夢を描くことが出来ません。」
トラック産業や建設業界の幹部も同様に65歳以上の労働者の比率が高まっているという。若者は、仕事がきつく、賃金や福利厚生が比較的低水準なこれらの産業を避ける傾向にある。
多くの高齢者がこうしたきつい仕事につかざるを得なくなるのは、60歳を超えると大企業では彼らの役割が無くなってしまうからだ。法律では、企業は65歳まで雇用を保証することを要求されているが、同じ賃金や同じ仕事を保障する必要はない。
独立行政法人労働政策研究・研修機構が昨年5,000人の60歳代を対象に行った調査によれば、、退職年齢に達した後も働き続ける場合、1/3の人が責任範囲が変更になったと回答した。また、80%の人が賃金が減少したと回答した。
求人会社であるリクルートの研究部門であるリクルートワークス研究所によれば、1,000人以上の企業では、60代前半の人の年収は、50代後半の人の年収より1/3少ない。
ハシモトヒデオさんが60歳になった時、彼が研究者として働いてきた食品関係の大企業は、彼に後4年間働いてもよいが、責任範囲や賃金は大幅に縮小するというオファーを出した。彼はそのオファーを蹴って、横浜の排水処理会社である日之出産業株式会社でパートタイムの顧問として働いている。
「私の現在の仕事は、以前やっていた仕事と完全に関係している訳ではありませんが、私のスキルを使うことは出来ます。」と彼は言う。「とても楽しいです。」
日之出産業のディレクターであるフジタカオリ氏によれば、高齢者を採用することにより、彼女の会社の様な小規模な会社が大企業の人材を惹きつけることが出来る。一方で、彼女は、ハシモト氏のノウハウを引き継ぐ若者を見つけることに苦労している。
「我々は、高齢者と若年層のバランスを求めている。」と彼女は言う。「しかし、小さな会社で働く若者を見つけるのは大変だ。」

Tuesday, November 22, 2016

強い地震が日本沖で津波を引き起こす【A9面(国際面)】

1122日に発生した福島沖地震について、同日の国際面で速報した。




この地震が2011311日の東日本大震災と同じ地域で発生したと報じている。

***** 以下本文 *****

マグニチュード6.9の地震が、福島原発の沖合で発生し、日本の太平洋沖に津波を発生させた。福島原発は2011年の破壊的な地震で壊滅的な被害を受けた。
気象庁によれば、火曜日に発生したこの地震は20113月の地震の余震で、交通網や工場の操業に影響を与えた。しかし、公共放送であるNHKは、地震発生後何時間にもわたって、大きな被害や負傷者について報道しなかった。全ての津波警報は解除された。

地震は日本時間の午前6時少し前に発生した。NHKは仙台港に5フィートの津波が発生し、他の地域でもより低い津波が発生したと伝えた。

Friday, November 11, 2016

アジアの同盟国は米国との関係維持のために前進【A8面(国際面)】

118日の次期大統領選に勝利したトランプ氏に、安倍首相は10日に電話で祝辞を述べたが、WSJは翌11日の国際面でこのニュースを速報した。



アジアの同盟国である豪州、日本、韓国の首脳は、(選挙期間中にはトランプ氏を批判していたのにもかかわらず)トランプ氏が大統領候補になるとすぐに電話で祝辞を述べ、なかでも安倍首相は17日にトランプ氏との面会の約束を取り付けたとしている。また、トランプ氏は、(選挙期間中には日本、韓国とこれまでの様な蜜月関係の維持は難しいことを示唆していたが)大統領候補になるとすぐに日本、韓国との関係維持をコミットしたとしている。

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ドナルドトランプが勝利し、アジアの地政学的な風景がひっくり返る心配があるが、アジアの同盟諸国は米国との安全保障上の同盟を維持する方向だ。
トランプ氏は選挙運動中に、アジアの同盟諸国と長い間築いてきた安全保障上の取り決めを変更する意思があることを表明したにもかかわらず、オーストラリア、日本、韓国の首脳は木曜日にトランプ氏に電話連絡し、大統領候補に選ばれたことを祝福し、米国との関係を強固なものにした。
関係者によれば、トランプ氏は木曜日の電話では、これまでの関係を変更する可能性について言及しなかった。日本の安倍首相は、今週ニューヨークでトランプ氏と会う予定をセットしたが、トランプ大統領候補が、54,000人の米国兵が駐留する日本へのコミットメントを確認したと述べた。
安倍首相は、トランプ氏に対し、米日同盟は地域の安全と安定の重要な拠り所だと述べた。
朴槿恵大統領の官邸は、トランプ氏が28,500人の米国兵が駐留する韓国に対してもコミットメントを約束したと述べた。
中国の力が増している同地域ではトランプ氏の大統領就任に対する心配が大きい。米国は、第二次世界大戦後、アジア太平洋地域の安定と成長が維持されることを助けてきた。オバマ大統領のアジア重視は、アメリカの同地域での役割を強化し、中国に対抗することを意図していた。
トランプ氏の孤立主義的な発言と、選挙運動中に日本や韓国に要求した米国の防衛体制へのより多くの金銭負担と、核兵器開発は、地域の警戒心をあおり、同盟の耐久性についての疑問を増幅させた。

Thursday, November 3, 2016

日本は数10億ドルをミャンマーに約束【A11面(国際面)】

 安倍晋三首相は2日、ミャンマーのアウン・サン・スー・チー国家顧問と会談し、8,000億円規模の経済支援を表明したが、WSJは翌3日の国際面でこのニュースを取り上げた。



8,000億円にのぼる日本の支援の中には、少数民族の支援目的にものが400億円含まれていること。」に言及した上で、「スーチー氏は、日本訪問の前に、既に中国、インド、米国、英国等に訪問済であること。」「安倍首相が日本主導で開発を進めているティワラ経済特別区の開発加速に言及したこと。」など、日本のメディアではあまり触れられていない点へも言及しているのがユニーク。

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日本の安倍首相は、ミャンマーの実質的なリーダーであるアウンサンスーチー氏と会談し、民主的に選ばれた政府を支援するために、官民合わせて8,000億円(77億ドル)の援助を約束した。
この数値には、民間企業による投資、政府による供与、政府関連機関によるローン等が含まれている。また、少数民族の生活水準の向上を支援し、何十年も続いている民族紛争を解決するために400億円支援する
水曜日に安倍首相と共に姿を現した71歳のスーチー氏は「平和の構築と国の発展は不可分のものだ。」と述べた。
元反体制派のスーチー氏の訪問は、彼女が率いる国民民主連盟が今年3月に権力の座についてから初めてだが、中国、インド、米国、英国など地域の地政学上重要な国々への訪問に続くものだ。全ての国々が、ミャンマーの開国により、これらの国々の企業に5,100万人の人口を有する同国で機会が与えられることを望んでいる。
安倍首相は、ティラワ経済特別区の開発を加速させると述べた。同特別区は、日本が主導してヤンゴン郊外に開発している5,900エーカーの工業団地で、これまでに15ヶ国から78の企業を誘致している。

Wednesday, November 2, 2016

日銀は現状維持【A8面(国際面)】

日銀は111日、金融政策決定会合で、金融政策の現状維持を決定したが、WSJは翌12日の国際面でこのニュースを取り上げた。



「短期の政策金利を▲0.1%、長期金利である10年物国債金利をゼロ%程度に操作する金融調節を維持すること」「インフレ2%達成時期が更に先延ばしされ2018年度になり黒田総裁任期中の達成が困難になったこと」などを伝えている。黒田氏のサプライズ戦術も消費者の悲観的なマインドを変えることが出来ず、そのことが日銀の金融政策の失敗の主要要因だと言っているように読める。

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日銀はアベノミクスにおける主役の座を放り投げた。当面の間は。
日銀は、9月にツールを再装備したが、その後インフレ予測を大幅に下方修正したにもかかわらず、火曜日にその政策を変更しないことを決定した。2%のインフレ目標へ向けた勢いを維持するという目標の達成時期が不明確になっており、日銀は今後の数ヶ月も主役を演じることはないだろう。
金融政策決定会合において、日銀は長期金利である10年物国債金利をゼロ%程度に操作する金融調節を維持することとした。また、短期の政策金利を▲0.1%もそのままにすることとした。
日銀は、2%のインフレ率達成時期が更に遠のいたことを認めた。2%達成の新しい目標時期は、2017年会計年度ではなく、20193月に終わる2018年会計年度頃となった。
黒田総裁は、価格が落ち込み続ける負のサイクル、つまりデフレを必ず克服してみせるという安倍首相の政策を先頭に立って引っ張ってきたが、今回の動きは彼の任期が終わりに近づいていることを示している。
黒田氏の、金融バズーガにより銀行に巨額のキャッシュをどんどん注入するというサプライズ戦術は、世界中の市場で投資家を驚かせ、欧州中央銀行の様な他の主要銀行でもデフレと戦うための指針となってきた。
しかし、その戦術と不釣り合いに、成果は限定的なものに止まり、かつては自信満々だった銀行家も、いまでは謙虚になってしまった。黒田氏は、2年連続で、2%のインフレ目標が達成できず、その後、よりゆっくりとした、現実的なやり方へとそのアプローチを変更した。
「確かにデフレマインドを駆逐するのは簡単ではない。」と1週間にわたる政策決定会合の後の記者会見で黒田氏は述べた。その際、彼は、悲観的なマインド、価格下落、低成長の間のネガティブループについて言及し、これらが日本の停滞の原因だと述べた。
彼は、2年というタイムフレーム内に達成出来なかったのは、残念だと述べた。
彼は、将来のアクションの必要性について、銀行の新しい予測が実現出来るかではなく、日本のインフレが2%に向けてモメンタム(勢い)を維持できるかどうかで決定すると述べた。日銀は、9月に国債買入れよりも長期国債の利回りを中心とした政策に転換したが、その際にモメンタム(勢い)という新しいコンセプトを使い始めた。
黒田氏率いる日銀は、銀行セクターのキャッシュの量をほぼ3倍の400兆円(約3.8兆ドル)に増やし、マイナス金利を導入した。
しかし、日本の消費者はどんどん節約する様になってきており、最近の9月のインフレ指数は7ヶ月連続でマイナスとなった。