ウォールストリートジャーナルは、米国に影響力をもつ多くのインテリ層に読まれていて、その世論形成に寄与しています。同誌に日本がどの様に取り上げられているかを観察することは、米国で日本についてのどの様な世論が形成されつつあるを知ることになるのではないでしょうか。このブログでは同誌に取り上げられた日本関係の記事を簡単に紹介しています。私は英語が専門ではないので、誤訳はご容赦。
Wednesday, February 24, 2016
応募者を増やすために日本の市はゴリラを使ったマーケティングを試みる【A1面】
名古屋市が市の職員の採用活動のために東山動物園の人気『育メン』ゴリラを活用しているという記事を1面に掲載した。
日本では少子高齢化により若者の採用が困難になりつつあり、若者の採用のためには奇抜なキャンペーンが必要となっていること。日本では最近『育メン』なるコンセプトが流行っていて政府も奨励しているが、東山動物園のゴリラのシャバニはハンサムなボス猿で子供の面倒見が良く、まさに『育メン』であること。各自治体は、その自治体のプロモーションのために奇抜なキャラクター(深谷市の「ふっかちゃん」と山東市の「たけのこまん」が紹介されている。)を採用することが多いこと。などを取り上げ、少子高齢化、女性の社会進出、東京一極集中などの深刻な問題に、日本らしいユニークな方法で立ち向かおうとする日本のドタバタ劇を面白おかしく報じている。こうした深刻な問題に真正面からその解決に立ち向かわない国民性への皮肉とも読める。
***** 以下本文 *****
「昨年、名古屋市役所に勤務するナカムラサトルとその同僚は大きくて毛深い(困難な)問題に直面した。」
「日本の労働者人口が縮小する中、この大都市ですら採用難に直面していて、市の仕事への応募者を増やすための手段を見つけなければならなかったのだ。」
「彼らの答は、市の中にあった。シャバニという19歳のゴリラだ。先月、彼は地元の動物園にいるが、そこで名古屋の正式なスポークスマンならぬスポークス猿に任命された。」
「彼は、今やポスターやビデオに登場し、人々に市の仕事に応募する様に呼びかけている。ナレーターは『名古屋に集まれ。』と言い、あたかも猿の主張であるかの様に『人間たちよ。もっと輝け。』と主張する。」
「ゴリラは単なるリクルートの手段ではない。彼は日本の有名人でもあり、日本政府が解決しようとしている問題を解決してくれる象徴でもあるのだ。」
「体重が420ポンドもあるこのボス猿のファン達は、彼のことをジョージクルーニーに例えて、『あまりにハンサムだ。』と言う。シャバニの飼育係であるシブタニヤスシによれば、シャバニは子供達と遊ぶのだ。これは普通のボス猿にはないことだ。日本政府は、女性の社会進出を促すために、父親が子育てに参加することが重要だと言っている。」
「『彼は完璧で、女性が求める男性の理想像だ。』と東京の武蔵大学のタナカトシユキ助教授(男らしさの研究専門)は言う。『彼は男らしさと優しさを併せ持つが、なかなか人間の男には真似が出来ない。』」
「シャバニは1996にオランダの動物園で生まれ、2007年に名古屋の東山動植物園へやってきた。最初の7年間は比較的静かな日々を送っていた。」
「ところが、彼の鋭い目つきの写真が、ネットで出回ると、シャバニは一気に有名人になってしまった。」
「『最近は、以前に比べて多くの若い女性がこの動物園を訪問されているのが分かります。』と動物園の広報官のイシカワタカユキさんは言う。『若い女性は通常動物園には来ないものですが。』」
「寄付と引き換えにもらえるシャバニのバッジはあっという間に品切れになった。イシカワさんによれば、コアラのバッジの3倍の人気だそうだ。『コアラは過去数年間にわたって、断トツの人気でした。』」
「シャバニの厚い胸やずっしりした肩が掲載された64ページの写真集は、その発行元によれば、既に第8版を印刷中だ。シャバニ関連グッヅには、他にも、ハンカチ、DVD、Tシャツ、トートバッグ、カレンダー等がある。」
「地元のデパートで行われたバレンタインデーのチョコレートフェアでは、シャバニのポスターも登場した。」
「42歳のカツイヒトミは、今月初めに動物園を訪れたが、『彼は本当にハンサムです。』と言う。『彼が上を向くとき、その目つきは本当に鋭くて、心臓がドキッとします。』」
「動物園によれば、シャバニは、3歳のキヨマサと2歳のアニーの父親だ。彼らが遊びたい時、シャバニは一緒に遊んであげたり、彼らを撫でてあげたりする。彼はゴリラ版『育メン』だとタナカ助教授は言う。『このゴリラは、強いだけでなく、グループのリーダーであり、子供達の面倒も良くみる。』」
「シャバニのこうした特徴は、名古屋市がその採用活動で求めている人材像、つまりリーダーシップと家族の価値を両立できる人に合致すると名古屋市採用部門トップのナカムラ氏は言う。」
「『私たちは、人々が市役所で働きたいと思ってくれる様にするために、何かをする必要がありました。』とナカムラ氏は言う。『私たちは、人々の注目を引く、インパクトのあるキャンペーンをする必要があったのです。』」
「日本の自治体は、その宣伝のために、変わったキャラクターを使用することで知られている。埼玉県の深谷市の『ふっかちゃん』はうさぎの様な生き物だが、その角は、深谷市特産のネギで出来ている。」
「和歌山県山東市のたけのこまんは、その特産品であるたけのこの拡販に携わっている。彼の頭は巨大なたけのこだ。」
「名古屋市は、シャバニ以外の有名人については、真剣に検討しなかった。採用部門の会議でシャバニが選ばれた後に、反対意見はありませんでしたとナカムラ氏は言う。」
「また、たまたまですが、2016年の干支が猿であったことからも、シャバニの選択がぴったりでしたと彼は言う。」
「市は動物園を保有しているので、シャバニの写真は支払をすることなく使用出来る。シャバニはこの役目のために、特に特別な報酬を受け取っていない」
「名古屋市はこのゴリラを使ったキャンペーンが成功したかどうかはまだ分からないと言う。市の仕事への応募者はまだ来ていない。」
「『シャバニはここへ来た時にはいたずらばかりしていましたが、今はすっかりボスになりました。』と毎日動物園を訪れる82歳のカトウトクオは言う。『でも、彼は他のゴリラと同じ容姿に見えます。』」
「彼によれば、シャバニは確かに面倒見が良い。『人々は彼がハンサムだと言うけど、私は個人的にはそうは思いません。』」
「実際のところ、この霊長類は、彼の檻の周りにあまり沢山の人が来ると、威圧感を感じる様だ。動物園は、大きな声を出すファンやパパラッチが来ることを警戒して、ビジターに敬意を払う様に促すポスターを掲示した。『シャバニとかハンサムなゴリラとが叫ばないで下さい。』」
「シブタニ氏によれば、シャバニはゴリラの中でも繊細な方で、音や動きに強く反応する。『多くの方に訪れて頂いて嬉しいのですが、シャバニはそうは思っていない様です。彼は、中に入ってしまうことが多くなり、沢山の人がいる時には隠れようとします。』」
「シャバニの飼育係からはコメントが得られなかった。」