2月にWSJに掲載された日本関係の記事は、1月に続いて5件と少なかった。
日本関係の記事の月掲載回数は、2014年が15件、2015年が9.2件と減少傾向にあり、2016年は今のところ5件。先月の繰り返しになるが、日本の国際社会におけるポジションの低下を象徴している様で寂しい。
テーマ別では、経済関係が3件、社会関係が2件、政治関係は0件だった。
政治関係の記事がゼロだったのは、このブログ開始以来初めてだ。政治関係記事の月平均掲載回数は、2014年が6.3件、2015年が3.3件だったが、2016年は今のところ0.5件(1月:1件、2月:0件)。今年に入っての減少が著しい。この2年間を振り返ると、2014年は衆議院選挙という大ニュースがあったし、2014年にはオバマ大統領が来日、2015にはオバマ大統領夫人が来日、安倍首相も訪米など、日米間での首脳の往来もあった。また、何と言っても、中国、韓国との関係が悪く、彼らとの衝突が起きるたびに大きな記事となっていた。今年はまだビッグイベントが無いことに加えて、安倍首相の努力によって、中国、韓国との国との関係が良くなったことも、政治関係記事の激減に関係しているのだろう。
掲載箇所では、1面が2件、国際面が3件だった。
今年は、1面掲載回数は増えている。1面への月平均掲載回数は、2014年が2.1回、2015年が1.3回、2016年は2.5回。2016年は突然のゼロ金利導入が世界経済に大きなインパクトをもたらし、既に5回(1月:3件、2月:2件)も1面で取り上げられている。
ところで、今月の5件の記事の見出しは以下の通りだ。
・日本ではアベノミクスが行き詰っている(2月11日)
・日本のバズーガは弾薬切れ(2月13日)
・日本の賃金はこれ以上伸びない(2月16日)
・日本のでは市職員への応募者を増やすためにゴリラを使ったマーケティングを試みる(2月24日)
・日本の人口は初めて減少へ(2月28日)
日銀頼みのアベノミクスが行き詰り、その日銀の政策も弾薬切れ。それに加えて、大企業はもちろん労働組合ですら賃上げに否定的で、更に人口も減少とアベノミクスを取り巻く環境は厳しい。それでも安倍政権の支持率は高く、名古屋市は育メンゴリラを使った雇用対策といったピリッとしない対策を講じたりと、最悪の環境にもかかわらす何か切迫感のない日本が浮彫になっている様な気がする。
ウォールストリートジャーナルは、米国に影響力をもつ多くのインテリ層に読まれていて、その世論形成に寄与しています。同誌に日本がどの様に取り上げられているかを観察することは、米国で日本についてのどの様な世論が形成されつつあるを知ることになるのではないでしょうか。このブログでは同誌に取り上げられた日本関係の記事を簡単に紹介しています。私は英語が専門ではないので、誤訳はご容赦。
Monday, February 29, 2016
Sunday, February 28, 2016
人口は初めて減少へ【A12面(国際面)】
国勢調査の結果、日本の人口が初めて減少したことを、2月28日の国際面で速報した。
事実を短い記事で伝えているが、経済紙らしくアベノミクスへの悪影響を懸念している。
***** 以下本文 *****
「日本の最新の国勢調査によれば、日本の人口は初めて減少に転じた。長期的な経済成長を促そうと努力する安倍首相にとって大きなチャレンジだ。」
「この正式調査によれば、日本の人口は10月1日現在で1億2,700万人で、2010年に比べて94万7千人、0.7%の減少となった。国勢調査は1920年に開始されたが、その頃の人口は5,600万人だった。人口は、第二次世界大戦中も含めて、減少したことはない。」
「国連は昨年、日本の人口は2100年までに8,300万人に減少すると予測した。」
Wednesday, February 24, 2016
応募者を増やすために日本の市はゴリラを使ったマーケティングを試みる【A1面】
名古屋市が市の職員の採用活動のために東山動物園の人気『育メン』ゴリラを活用しているという記事を1面に掲載した。
日本では少子高齢化により若者の採用が困難になりつつあり、若者の採用のためには奇抜なキャンペーンが必要となっていること。日本では最近『育メン』なるコンセプトが流行っていて政府も奨励しているが、東山動物園のゴリラのシャバニはハンサムなボス猿で子供の面倒見が良く、まさに『育メン』であること。各自治体は、その自治体のプロモーションのために奇抜なキャラクター(深谷市の「ふっかちゃん」と山東市の「たけのこまん」が紹介されている。)を採用することが多いこと。などを取り上げ、少子高齢化、女性の社会進出、東京一極集中などの深刻な問題に、日本らしいユニークな方法で立ち向かおうとする日本のドタバタ劇を面白おかしく報じている。こうした深刻な問題に真正面からその解決に立ち向かわない国民性への皮肉とも読める。
***** 以下本文 *****
「昨年、名古屋市役所に勤務するナカムラサトルとその同僚は大きくて毛深い(困難な)問題に直面した。」
「日本の労働者人口が縮小する中、この大都市ですら採用難に直面していて、市の仕事への応募者を増やすための手段を見つけなければならなかったのだ。」
「彼らの答は、市の中にあった。シャバニという19歳のゴリラだ。先月、彼は地元の動物園にいるが、そこで名古屋の正式なスポークスマンならぬスポークス猿に任命された。」
「彼は、今やポスターやビデオに登場し、人々に市の仕事に応募する様に呼びかけている。ナレーターは『名古屋に集まれ。』と言い、あたかも猿の主張であるかの様に『人間たちよ。もっと輝け。』と主張する。」
「ゴリラは単なるリクルートの手段ではない。彼は日本の有名人でもあり、日本政府が解決しようとしている問題を解決してくれる象徴でもあるのだ。」
「体重が420ポンドもあるこのボス猿のファン達は、彼のことをジョージクルーニーに例えて、『あまりにハンサムだ。』と言う。シャバニの飼育係であるシブタニヤスシによれば、シャバニは子供達と遊ぶのだ。これは普通のボス猿にはないことだ。日本政府は、女性の社会進出を促すために、父親が子育てに参加することが重要だと言っている。」
「『彼は完璧で、女性が求める男性の理想像だ。』と東京の武蔵大学のタナカトシユキ助教授(男らしさの研究専門)は言う。『彼は男らしさと優しさを併せ持つが、なかなか人間の男には真似が出来ない。』」
「シャバニは1996にオランダの動物園で生まれ、2007年に名古屋の東山動植物園へやってきた。最初の7年間は比較的静かな日々を送っていた。」
「ところが、彼の鋭い目つきの写真が、ネットで出回ると、シャバニは一気に有名人になってしまった。」
「『最近は、以前に比べて多くの若い女性がこの動物園を訪問されているのが分かります。』と動物園の広報官のイシカワタカユキさんは言う。『若い女性は通常動物園には来ないものですが。』」
「寄付と引き換えにもらえるシャバニのバッジはあっという間に品切れになった。イシカワさんによれば、コアラのバッジの3倍の人気だそうだ。『コアラは過去数年間にわたって、断トツの人気でした。』」
「シャバニの厚い胸やずっしりした肩が掲載された64ページの写真集は、その発行元によれば、既に第8版を印刷中だ。シャバニ関連グッヅには、他にも、ハンカチ、DVD、Tシャツ、トートバッグ、カレンダー等がある。」
「地元のデパートで行われたバレンタインデーのチョコレートフェアでは、シャバニのポスターも登場した。」
「42歳のカツイヒトミは、今月初めに動物園を訪れたが、『彼は本当にハンサムです。』と言う。『彼が上を向くとき、その目つきは本当に鋭くて、心臓がドキッとします。』」
「動物園によれば、シャバニは、3歳のキヨマサと2歳のアニーの父親だ。彼らが遊びたい時、シャバニは一緒に遊んであげたり、彼らを撫でてあげたりする。彼はゴリラ版『育メン』だとタナカ助教授は言う。『このゴリラは、強いだけでなく、グループのリーダーであり、子供達の面倒も良くみる。』」
「シャバニのこうした特徴は、名古屋市がその採用活動で求めている人材像、つまりリーダーシップと家族の価値を両立できる人に合致すると名古屋市採用部門トップのナカムラ氏は言う。」
「『私たちは、人々が市役所で働きたいと思ってくれる様にするために、何かをする必要がありました。』とナカムラ氏は言う。『私たちは、人々の注目を引く、インパクトのあるキャンペーンをする必要があったのです。』」
「日本の自治体は、その宣伝のために、変わったキャラクターを使用することで知られている。埼玉県の深谷市の『ふっかちゃん』はうさぎの様な生き物だが、その角は、深谷市特産のネギで出来ている。」
「和歌山県山東市のたけのこまんは、その特産品であるたけのこの拡販に携わっている。彼の頭は巨大なたけのこだ。」
「名古屋市は、シャバニ以外の有名人については、真剣に検討しなかった。採用部門の会議でシャバニが選ばれた後に、反対意見はありませんでしたとナカムラ氏は言う。」
「また、たまたまですが、2016年の干支が猿であったことからも、シャバニの選択がぴったりでしたと彼は言う。」
「市は動物園を保有しているので、シャバニの写真は支払をすることなく使用出来る。シャバニはこの役目のために、特に特別な報酬を受け取っていない」
「名古屋市はこのゴリラを使ったキャンペーンが成功したかどうかはまだ分からないと言う。市の仕事への応募者はまだ来ていない。」
「『シャバニはここへ来た時にはいたずらばかりしていましたが、今はすっかりボスになりました。』と毎日動物園を訪れる82歳のカトウトクオは言う。『でも、彼は他のゴリラと同じ容姿に見えます。』」
「彼によれば、シャバニは確かに面倒見が良い。『人々は彼がハンサムだと言うけど、私は個人的にはそうは思いません。』」
「実際のところ、この霊長類は、彼の檻の周りにあまり沢山の人が来ると、威圧感を感じる様だ。動物園は、大きな声を出すファンやパパラッチが来ることを警戒して、ビジターに敬意を払う様に促すポスターを掲示した。『シャバニとかハンサムなゴリラとが叫ばないで下さい。』」
「シブタニ氏によれば、シャバニはゴリラの中でも繊細な方で、音や動きに強く反応する。『多くの方に訪れて頂いて嬉しいのですが、シャバニはそうは思っていない様です。彼は、中に入ってしまうことが多くなり、沢山の人がいる時には隠れようとします。』」
「シャバニの飼育係からはコメントが得られなかった。」
Tuesday, February 16, 2016
日本の賃金はこれ以上伸びない【A12面(国際面)】
トヨタ労働組合の春闘でのベア要求が控えめだとする記事を国際面に掲載した。
アベノミクスの成功には、賃金増加→消費増加→企業利益増加→賃金増加というプラスのスパイラルが必要だが、過去最高益を計上したトヨタ自動車の労組は、春闘で昨年の半分のベアしか要求していない。これではアベノミクスは成功しないとして、トヨタ労組の控え目な要求に困惑している様に読める。
***** 以下本文 *****
「日本のアベノミクス政策の限界を見たければ、トヨタ自動車の例をみれば十分だ。」
「この自動車メーカーは昨年2兆1,700億円(190億ドル)の最高益を計上し、今年度も3年連続で最高益を更新しそうだ。しかし、トヨタの従業員を代表する労働組合は今週始まる春闘では基本給のベースアップ要求を0.8%に留める方針だ。月平均賃金を3千円(26ドル)増加させるに過ぎない。」
「連合は今年の基本給のベースアップの要求額を引き下げた。昨年は『最低でも2%』だったが、今年は『2%程度』とした。連合のスポークスマンによれば、この要求引下げは、原油価格の値下がりと弱いインフレを反映させたものだ。エネルギー価格を含めた日本のインフレ率はほぼ0%で推移している。」
「日銀の黒田総裁は、賃金の大幅増額が、利益が増加し、それが賃金増に結び付き、最終的に2%のインフレをもたらすという有効なサイクルを生み出すためのカギになるとする。黒田総裁は、過去3年間にわたり過去に例のない量的金融緩和を断行し、最近では銀行準備金に対するマイナス金利を導入したが、こうした政策の究極の目的は2%のインフレだ。トヨタの賃金は今後の動向を占うものだが、これを見る限り、消費者支出の回復は起こりそうにない。」
「こうした控えめな賃金要求は、安倍首相の成長プログラムであり経済刺激政策でもあるアベノミクスへの期待を萎えさせるものだ。月曜日の政府発表によれば、前四半期に日本経済は1.4%縮小した。過去7四半期の中で、実に4四半期で経済は縮小している。その主な原因は個人消費が弱いことにある。」
「株価の下落と円高は、これまでの経済再生への努力を水の泡にしてしまう危険がある。円安と株価上昇が、企業の収益を引上げ、経営者や消費者の景気判断を好転させるための、重要な要素として働いてきたからだ。」
「前四半期に、個人消費は年率3.3%と急激な落ちを示した。2014年4月に実施された消費税の5%から8%への上昇が、いまだに個人消費に重くのしかかっている。消費税増税以来、耐久商品の消費は過去7四半期中、6四半期で減少している。」
「最近の金融市場の混乱が、個人消費に悪影響を及ぼしているという兆候もみられる。企業は先月、株式市場の不振が売上に悪影響を及ぼしていると発表した。政府による家計調査によれば、日本の上位20%を占める富裕層は昨年支出をカットした。」
「ビジネス界には、最近の市場の混乱をものともしないリーダーもいる。日産の副社長であるタガワジョウジ氏は先週、通貨に変動があったとしても、日産は年間の利益目標を達成出来るだろうと自信を示した。」
「『我々は、金融市場の個々の動きには影響されません。我々の役目はアベノミクスと日銀の政策をサポートすることにあります。』と彼は言う。」
「前四半期に、輸出は予想を上回る3.4%もの大きな下落を記録した。中国におけるスマートホン需要が低調だったのと、米国のエネルギー生産者の設備需要が低調だったのが響いた。」
「大和総研のクマガイミツマル氏は、これまでの数年は中央銀行が金融による刺激策をとってきたが、最近の動きを見ていると、世界経済の成長のためには、もっと財政政策をとるべき時が来たと思うと述べた。」
「『グローバル経済をサポートするための財政政策が、5月に日本で開催されるサミットを目指して、先進7ヶ国と中国にとっての最も重要な課題となるだろう。』と彼は述べた。」
「財政による刺激策は、アベノミクスの3本の矢の内の一つだった。しかし、月曜日に発表されたデータによれば、2013年に支出が大幅に増えた後、昨年も2014年も国民は経済成長に重きを置くようになった。」
「日本経済には明るい兆しもある。日本経済研究センターがエコノミストを対象に行った調査では、今年の4月に始まる会計年度では、1.3%の成長が予測されている。」
「第4四半期に企業投資は5.7%伸びた。これは2四半期連続での成長だ。」
「12月に発表された日銀短観によれば、3月に終わる会計年度では、企業投資は8%の伸びとなる見通しだ。これは、昨年度の5%に比べて伸びている。」
「しかし、日本経済は消費者中心の経済で、賃金上昇は必須だ。昨年の日本人の賃金は、インフレ補正後で、0.9%下落した。企業は、賃上げに慎重になっているのだ。」
***** 以下本文 *****
「日本のアベノミクス政策の限界を見たければ、トヨタ自動車の例をみれば十分だ。」
「この自動車メーカーは昨年2兆1,700億円(190億ドル)の最高益を計上し、今年度も3年連続で最高益を更新しそうだ。しかし、トヨタの従業員を代表する労働組合は今週始まる春闘では基本給のベースアップ要求を0.8%に留める方針だ。月平均賃金を3千円(26ドル)増加させるに過ぎない。」
「連合は今年の基本給のベースアップの要求額を引き下げた。昨年は『最低でも2%』だったが、今年は『2%程度』とした。連合のスポークスマンによれば、この要求引下げは、原油価格の値下がりと弱いインフレを反映させたものだ。エネルギー価格を含めた日本のインフレ率はほぼ0%で推移している。」
「日銀の黒田総裁は、賃金の大幅増額が、利益が増加し、それが賃金増に結び付き、最終的に2%のインフレをもたらすという有効なサイクルを生み出すためのカギになるとする。黒田総裁は、過去3年間にわたり過去に例のない量的金融緩和を断行し、最近では銀行準備金に対するマイナス金利を導入したが、こうした政策の究極の目的は2%のインフレだ。トヨタの賃金は今後の動向を占うものだが、これを見る限り、消費者支出の回復は起こりそうにない。」
「こうした控えめな賃金要求は、安倍首相の成長プログラムであり経済刺激政策でもあるアベノミクスへの期待を萎えさせるものだ。月曜日の政府発表によれば、前四半期に日本経済は1.4%縮小した。過去7四半期の中で、実に4四半期で経済は縮小している。その主な原因は個人消費が弱いことにある。」
「株価の下落と円高は、これまでの経済再生への努力を水の泡にしてしまう危険がある。円安と株価上昇が、企業の収益を引上げ、経営者や消費者の景気判断を好転させるための、重要な要素として働いてきたからだ。」
「前四半期に、個人消費は年率3.3%と急激な落ちを示した。2014年4月に実施された消費税の5%から8%への上昇が、いまだに個人消費に重くのしかかっている。消費税増税以来、耐久商品の消費は過去7四半期中、6四半期で減少している。」
「最近の金融市場の混乱が、個人消費に悪影響を及ぼしているという兆候もみられる。企業は先月、株式市場の不振が売上に悪影響を及ぼしていると発表した。政府による家計調査によれば、日本の上位20%を占める富裕層は昨年支出をカットした。」
「ビジネス界には、最近の市場の混乱をものともしないリーダーもいる。日産の副社長であるタガワジョウジ氏は先週、通貨に変動があったとしても、日産は年間の利益目標を達成出来るだろうと自信を示した。」
「『我々は、金融市場の個々の動きには影響されません。我々の役目はアベノミクスと日銀の政策をサポートすることにあります。』と彼は言う。」
「前四半期に、輸出は予想を上回る3.4%もの大きな下落を記録した。中国におけるスマートホン需要が低調だったのと、米国のエネルギー生産者の設備需要が低調だったのが響いた。」
「大和総研のクマガイミツマル氏は、これまでの数年は中央銀行が金融による刺激策をとってきたが、最近の動きを見ていると、世界経済の成長のためには、もっと財政政策をとるべき時が来たと思うと述べた。」
「『グローバル経済をサポートするための財政政策が、5月に日本で開催されるサミットを目指して、先進7ヶ国と中国にとっての最も重要な課題となるだろう。』と彼は述べた。」
「財政による刺激策は、アベノミクスの3本の矢の内の一つだった。しかし、月曜日に発表されたデータによれば、2013年に支出が大幅に増えた後、昨年も2014年も国民は経済成長に重きを置くようになった。」
「日本経済には明るい兆しもある。日本経済研究センターがエコノミストを対象に行った調査では、今年の4月に始まる会計年度では、1.3%の成長が予測されている。」
「第4四半期に企業投資は5.7%伸びた。これは2四半期連続での成長だ。」
「12月に発表された日銀短観によれば、3月に終わる会計年度では、企業投資は8%の伸びとなる見通しだ。これは、昨年度の5%に比べて伸びている。」
「しかし、日本経済は消費者中心の経済で、賃金上昇は必須だ。昨年の日本人の賃金は、インフレ補正後で、0.9%下落した。企業は、賃上げに慎重になっているのだ。」
Saturday, February 13, 2016
日本のバズーガは弾薬切れ【A1面】
日銀黒田総裁が万策尽きたとする記事が、1面に掲載された。
黒田氏はデフレの原因を国民の心理的冷え込みにあるとし、サプライズにより心理的にインフレ誘導を図ることを重視してきた。その意味で彼は銀行員というより心理学者だと言う。大蔵省後、アジア開発銀行総裁を務めたが、そこでの経験と、英語の巧さ、国際金融業界での人脈が、こうした彼の大胆なやり方を後押ししているとした上で、そうしたやり方が限界にきていると言っている様に読める。
***** 以下本文 *****
「安倍首相との東京での会談の後の黒田総裁。黒田氏の経済再生のための動きは頓挫しているが、彼は日本の中央銀行はまだ新しいやり方を作り出すことが出来ると語った。」
「黒田総裁は以前は市場をびっくりさせていた。いまや彼は他の中央銀行員の様に取るべき手段を取りつくしてしまった様に見える。」
「黒田氏は2013年3月に日銀総裁に就任し、日本を10年以上にわたり賃金と価格の負の連鎖で苦しめてきたデフレから跳躍させるためにあらゆる手段を取ると誓った。彼は、次から次へとバズーガを放った。それはまるで市場を彼の前に跪かせることが出来る様に見えた。株式は上昇し、円は沈み込み、安倍首相の経済成長プログラムであるアベノミクスの重要な成果をあげた。」
「しかし、日銀が2週間前に導入した預金者に手数料を課すマイナス金利政策、これはうまくいかなかった。この政策は日銀が過去3年間にやってきたことが失敗だったことを印象づけるだけだった。日本経済は不振のままで、黒田氏が設定した2%のデフレ目標は現実から程遠く、金融政策やアベノミクスの運命について懐疑的な見方が広がっている。」
「グローバル市場は動揺しており、それは彼の計画がうまくいっていないことを示している。日経平均株価は金曜日に4.8%下落、1週間で11%下落したが,、これは2008年10月以来最悪だ。円は15ヶ月ぶりにドルに対して高騰したが、これは日本経済にとっては悪いサインだ。」
「黒田総裁にとっては不吉な進展だ。彼は日本の長期にわたるデフレとの戦いを、経済的な病気というより、心理的な不調だと見ている。彼の日銀総裁としての仕事は、中央銀行員であると同時に、心理学者でもある。彼の仕事は自信を植え付けることなのだ。最初から多くの人々が彼は不可能なことをやろうとしていると言ってきた。デフレから逃げることが難しいのは非常に難しいし、何年にもわたる政策の失敗によりデフレはすっかり日本に根付いてしまっている。」
「昨年の夏、彼はその仕事を表すのにおとぎ話を持ち出した。」
「『私は皆さんがピーターパンのお話しをご存知だと思います。そこでは、人は飛べないと思った瞬間に、一生飛べなくなるのですと言っています。』と6月に黒田氏は語った。『そうなのです。我々が必要なのは必ず出来ると信じる態度です。』」
「金曜日に議会での質問に答えて、黒田氏はマイナス金利が株式市場下落の原因だとする主張を打ち消した。マイナス金利は、より広い範囲で金利低下をもたらし、安くお金を借りることが出来るようになる。」
「彼は、グローバル市場の不安定さを指摘し、マイナス金利は予想通りの効果を生んでいる。国債金利が短期、長期共に下がっていると述べた。」
「黒田氏はまた中央銀行が弾切れだとする考えを繰り返し否定した。政策に限界は無いと言う。」
「『もし現在の現在のやり方が目標達成に十分でないと判断されたら、我々がやるべきことは新しいやり方を作り出すことであり、達成を諦めることではない。』と彼は述べた。」
「彼の経歴をみると、最新の金融政策を実施するための準備が出来ていた様にみえる。1967年に東京大学法学部卒業後、大蔵省に入省し、36年間で国際金融局長まで上り詰めた。」
「彼は長い間日銀を批判し続けた。80年代後半金融緩和政策でバブルを招いたことや、その後あまりに急激に金融引締め政策をとったことも、彼の批判の対象だった。」
「財務省で、彼は2000年代の終わりに市場介入による円安誘導をみてきた。そこでは14兆円(1,245億ドル)支出し、海外からの批判にさらされた。」
「彼は、2003年に大蔵省を退省し、マニラにあるアジア開発銀行の総裁に2年後に就任した。この経験と、英語の巧さ、海外の金融界の大物達との交流により、彼は、安倍首相が重要な役割という、日本の大胆な政策を世界に説明するという役割を担う準備が出来たのだ。」
「彼はウォールストリートジャーナルに、十分に大胆でないことをするよりは、大胆なことをして後で調整していく方が良いということを学んだと語った。」
「『大胆な論理をもたねばならないのです。大胆ではなく、常に正しい論理は役に立たないのです。』と彼は言った。」
「円安に誘導しようという彼の努力の初期に、黒田氏は金融市場とうまく会話が出来るという評判を勝ち取った。しかし、日銀総裁として、彼は投資家を驚かせることに重きを置いた。2013年4月に最初の景気刺激策を導入した時、投資家たちはそのスケールの大きさに驚いた。2014年の2回目の導入時にもみんな驚いた。」
「同様に、黒田氏は日銀がマイナス金利を導入することを、繰り返し否定してきた。導入を発表するその瞬間まで。」
「『もし市場がゆっくりした政策変更を許容すなら、市場の反応もゆっくりしたものになるでしょう。』と黒田氏は自信を持って語った。」
黒田氏はデフレの原因を国民の心理的冷え込みにあるとし、サプライズにより心理的にインフレ誘導を図ることを重視してきた。その意味で彼は銀行員というより心理学者だと言う。大蔵省後、アジア開発銀行総裁を務めたが、そこでの経験と、英語の巧さ、国際金融業界での人脈が、こうした彼の大胆なやり方を後押ししているとした上で、そうしたやり方が限界にきていると言っている様に読める。
***** 以下本文 *****
「安倍首相との東京での会談の後の黒田総裁。黒田氏の経済再生のための動きは頓挫しているが、彼は日本の中央銀行はまだ新しいやり方を作り出すことが出来ると語った。」
「黒田総裁は以前は市場をびっくりさせていた。いまや彼は他の中央銀行員の様に取るべき手段を取りつくしてしまった様に見える。」
「黒田氏は2013年3月に日銀総裁に就任し、日本を10年以上にわたり賃金と価格の負の連鎖で苦しめてきたデフレから跳躍させるためにあらゆる手段を取ると誓った。彼は、次から次へとバズーガを放った。それはまるで市場を彼の前に跪かせることが出来る様に見えた。株式は上昇し、円は沈み込み、安倍首相の経済成長プログラムであるアベノミクスの重要な成果をあげた。」
「しかし、日銀が2週間前に導入した預金者に手数料を課すマイナス金利政策、これはうまくいかなかった。この政策は日銀が過去3年間にやってきたことが失敗だったことを印象づけるだけだった。日本経済は不振のままで、黒田氏が設定した2%のデフレ目標は現実から程遠く、金融政策やアベノミクスの運命について懐疑的な見方が広がっている。」
「グローバル市場は動揺しており、それは彼の計画がうまくいっていないことを示している。日経平均株価は金曜日に4.8%下落、1週間で11%下落したが,、これは2008年10月以来最悪だ。円は15ヶ月ぶりにドルに対して高騰したが、これは日本経済にとっては悪いサインだ。」
「黒田総裁にとっては不吉な進展だ。彼は日本の長期にわたるデフレとの戦いを、経済的な病気というより、心理的な不調だと見ている。彼の日銀総裁としての仕事は、中央銀行員であると同時に、心理学者でもある。彼の仕事は自信を植え付けることなのだ。最初から多くの人々が彼は不可能なことをやろうとしていると言ってきた。デフレから逃げることが難しいのは非常に難しいし、何年にもわたる政策の失敗によりデフレはすっかり日本に根付いてしまっている。」
「昨年の夏、彼はその仕事を表すのにおとぎ話を持ち出した。」
「『私は皆さんがピーターパンのお話しをご存知だと思います。そこでは、人は飛べないと思った瞬間に、一生飛べなくなるのですと言っています。』と6月に黒田氏は語った。『そうなのです。我々が必要なのは必ず出来ると信じる態度です。』」
「金曜日に議会での質問に答えて、黒田氏はマイナス金利が株式市場下落の原因だとする主張を打ち消した。マイナス金利は、より広い範囲で金利低下をもたらし、安くお金を借りることが出来るようになる。」
「彼は、グローバル市場の不安定さを指摘し、マイナス金利は予想通りの効果を生んでいる。国債金利が短期、長期共に下がっていると述べた。」
「黒田氏はまた中央銀行が弾切れだとする考えを繰り返し否定した。政策に限界は無いと言う。」
「『もし現在の現在のやり方が目標達成に十分でないと判断されたら、我々がやるべきことは新しいやり方を作り出すことであり、達成を諦めることではない。』と彼は述べた。」
「彼の経歴をみると、最新の金融政策を実施するための準備が出来ていた様にみえる。1967年に東京大学法学部卒業後、大蔵省に入省し、36年間で国際金融局長まで上り詰めた。」
「彼は長い間日銀を批判し続けた。80年代後半金融緩和政策でバブルを招いたことや、その後あまりに急激に金融引締め政策をとったことも、彼の批判の対象だった。」
「財務省で、彼は2000年代の終わりに市場介入による円安誘導をみてきた。そこでは14兆円(1,245億ドル)支出し、海外からの批判にさらされた。」
「彼は、2003年に大蔵省を退省し、マニラにあるアジア開発銀行の総裁に2年後に就任した。この経験と、英語の巧さ、海外の金融界の大物達との交流により、彼は、安倍首相が重要な役割という、日本の大胆な政策を世界に説明するという役割を担う準備が出来たのだ。」
「彼はウォールストリートジャーナルに、十分に大胆でないことをするよりは、大胆なことをして後で調整していく方が良いということを学んだと語った。」
「『大胆な論理をもたねばならないのです。大胆ではなく、常に正しい論理は役に立たないのです。』と彼は言った。」
「円安に誘導しようという彼の努力の初期に、黒田氏は金融市場とうまく会話が出来るという評判を勝ち取った。しかし、日銀総裁として、彼は投資家を驚かせることに重きを置いた。2013年4月に最初の景気刺激策を導入した時、投資家たちはそのスケールの大きさに驚いた。2014年の2回目の導入時にもみんな驚いた。」
「同様に、黒田氏は日銀がマイナス金利を導入することを、繰り返し否定してきた。導入を発表するその瞬間まで。」
「『もし市場がゆっくりした政策変更を許容すなら、市場の反応もゆっくりしたものになるでしょう。』と黒田氏は自信を持って語った。」
Thursday, February 11, 2016
日本ではアベノミクスが行き詰っている【A14面(国際面)】
アベノミクスが行き詰っているという記事が、国際面に掲載された。
アベノミクスは3本の矢のうち、第2の矢と第3の矢は失速し、結果として全てを第1矢つまり日銀の黒田総裁に依存した。しかし、日銀は金融緩和政策はとれても、消費者や企業にお金を無理やり使わせることが出来ない。外的・内的要因により、消費者や企業にお金を使わせることが出来ず、アベノミクスはうまくいっていない。そして、日銀は最後の手段としてゼロ金利を導入したというのアベノミクスの現状だとしている。アベノミクスがうまくいっていなくても、安倍政権の支持率は高く、企業幹部もアベノミクスを賞賛し続ける日本を奇妙な国と言っている様に読める。
(WSJ日本版にほぼ同一記事が掲載されていたので、引用させて頂きました。)
***** 以下本文 *****
安倍晋三首相による経済再生計画の中核にあったのは、中央銀行の積極的な取り組みが数十年にわたる不況にあえぐ日本へのショック療法になり得る、という賭けだった。だが、マイナス金利導入という最も斬新な措置を講じた後も、日本銀行は持続的な景気拡大をもたらすに至っておらず、「アベノミクス」の行き詰まりが示唆されている。
経済の低迷を背景に、10日の日経平均株価は前日比2.31%下落し、日銀が2014年10月に追加緩和策を打ち出して以降の上昇分がほぼ帳消しとなった。一方、円はここ1年余りの最高値付近で取引され、日銀の意図とは逆に安全逃避の動きが際立った。
今回の日銀主導の取り組みは、程度の差はあれ、金融政策だけでなく社会全体のリスク志向を後押しするという意味でも中銀に依存している他の主要国への教訓となっている。それは、人々の心理を変えるのは金利を変更するほどたやすくはない、ということだ。
第一生命経済研究所の首席エコノミスト、熊野英生氏は、「アベノミクスはもう一度原点に立ち戻る必要がある」とし、「現在のマーケットの悪化を止めることはできない。ではセカンドベストとして何ができるのか」を考える時だとの見方を示した。
安倍首相が就任した12年12月、株式・不動産バブルの崩壊から20年以上が経過した日本は、精彩を欠きつつも安定期に入っていた。経済は低成長で高齢化が急速に進んでいたが、少なくとも都市部では衰退の兆候などほとんど目につかず、社会は依然として安全だった。
だが、安倍首相はそれでは不十分だとの認識を示した。金融緩和と財政出動、構造改革の「3本の矢」で経済再生を図り、物価・賃金を再度押し上げると公約した。
3本のうち即効性が期待できるのは第一の矢だけだ。第二の矢である財政出動は財務省の圧力を受け間もなく減少した。第三の矢に盛り込まれた女性の雇用推進などの構造改革は、短期的効果を意図したものではなく、また、首相は外国人労働者への門戸開放といったより積極的な措置を真剣に検討することもなかった。
このため全ての期待は、首相自らが指名した日銀の黒田東彦総裁の肩にかかることとなった。黒田総裁は大量の資金供給によって円安を誘導し、企業収益の大幅拡大に貢献した。今月の講演では「追加緩和の手段に限りはない」とし、2%の物価上昇目標を達成する意気込みを示した。
ただ、黒田総裁が企業に対し、収益を賃上げや新技術への投資に回すよう強いることなどできない。また、円安でアジアからの観光客は増えたが、総裁が国内の消費者を小売店に向かわせ、より多くの物を買わせることができるわけでもない。
だが15年終盤になっても、日本の「アニマル・スピリット」が眠ったままである兆候が多く見られた。その一因は政府の矛盾した政策だ。安倍首相は14年4月、コスト増が著しい社会保障の財源確保という名目で消費税率引き上げを実施した。だが、これで個人消費が冷え込み、倹約ムードが広がった。
物価上昇率はゼロ近辺にとどまっているが、黒田総裁はこれを2%に到達させる時期のめどを何度となく先送りした。企業は内部留保に走っている。こうした状況は、バブル後の負の遺産の中で日本が90年代に経験した「借金のトラウマの深刻さ」を示すものだと、野村総合研究所の主席研究員、リチャード・クー氏は指摘する。
そしてここ数週間は、中国経済の成長減速、欧州銀行をめぐる懸念に加え、資源に乏しい日本には利益となる一方で世界経済を不安定化させた原油相場の急落など、海外発の逆風が吹き荒れた。
景気の勢いを維持するため、黒田総裁は1月29日、前週は検討すらしていないと言っていた最後の手段に出た。日銀は、市中銀行が日銀に預け入れる資金の一部にマイナス金利を適用すると発表した。これは、利息を払う代わりに実質的な手数料を課すことになる。
当初は目論見通り、株式が上昇し、円が下落した。だが両市場ともほどなく反転し、元の水準よりも日銀の目標から一層離れてしまう結果となった。
安倍首相と黒田総裁は、計画が根本的に軌道を外れたわけではないと考えている。黒田総裁は今月の講演で、国内経済が「緩やかな回復を続けて」いるとした一方、企業収益の水準が高く労働市場が引き締まっている割に、賃金や設備投資など支出面への波及が「やや弱い」ことを認めた。
安倍首相は国会で10日、黒田総裁への信任そして景気回復に対する確信を引き続き持っているとし、アベノミクスが終焉段階にあるとみるのは間違いだとの見解を示した。
消費者物価指数(CPI)の総合指数の上昇率はゼロに近いが、黒田総裁は、食品とエネルギーを除いたCPIが約1%の上昇を見せているとしている。さらに、デフレに逆戻りするリスクはなく、エネルギー価格さえ安定すれば所期の目標から数年遅れではあるがインフレ率は2%に到達すると主張している。
国内企業のトップも市場の混乱を冷静に受け止めている。サッポロホールディングスの上條努社長は、アベノミクス以降の「日本経済が非常に順調な成長軌道になっているというのが一つの評価ではないかと思っている」とした上で、ここ数日の市場動向は「わけがわからない」と話した。
ソフトバンクの孫正義最高経営責任者(CEO)はマイナス金利の導入で景気がいずれ上向くと見ており、「(金利は)ソフトバンクにとっては良い話」だと話した。また、市場の動向が業績にもたらす直接的な影響はあまりないとした。
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