Saturday, July 18, 2015

日本の平和的な自衛【A10面(社説)】

7月16日に衆議院を通過した安保関連法案について、18日の社説でとりあげた。

WSJは、この法案を「日本が民主主義守るためにより一層の責任を担うことを可能にし、東アジア地域の安定をもたらす。」として評価する一方、この法案に反対する日本国民を「臆病(skittish)」だと言っている。安倍首相が「この法案により自衛隊がどの様な活動を認められる様になるか」を具体的に説明しないため、野党がこの法案に「戦争法案」のレッテルを貼り、それが国民の不安を煽り、国民を臆病にさせているとしている。
こうした野党の反安倍の宣伝文句は、中国によって反安倍のプロパガンダとして利用されるという皮肉な結果を招いているとして、野党の思慮を欠いた対応を暗に批判。その一方で、野党第一党である民主党は、政権担当時に、安倍首相と同じ政策を部分的に推進しようとしていたとして、最終的にはこの法案への与野党間のコンセンサスが形成され、日本国民も法案の見識を受け入れるだろという、楽観的な見方を示している。
安倍首相が自衛隊の活動の詳細を説明出来ない理由を「米国の軍事予算削減により、日本はフィリピンや韓国等、米国以外の同盟国と連携する必要が出てきたが、外交上の理由でそれらを詳しく説明するのは軽率だから。」としている。日本では、想定している同盟国を米国、豪州としており、フィリピンや韓国というのは少し意外な感じがした。
(ウォールストリートジャーナル日本語版にほぼ同内容の記事が掲載されていたので、同記事に一部修正を加えて下記に引用させて頂きました。)
***** 以下本文 *****
安倍晋三首相は16日、日本に集団的自衛権の行使を可能にする法案の成立に一歩近づいた。日本は米国の安全保障の傘の下で70年間過ごしてきたが、この法案によって、自国や同盟国が脅威にさらされた場合に一緒に戦えるようになる。同時に地域の安定を促し、東アジアの民主主義を守ることもできる。
 安倍内閣は昨年7月、集団的自衛権の行使を可能にするため、戦後憲法の解釈変更を決めた。今年4月には米日両政府が防衛協力の枠組みを示す新たな「防衛協力のための指針」(ガイドライン)で合意した。そして今月16日、安全保障関連法案が衆議院で可決され、参議院に送られた。
 ここまでの道のりは平たんではなかった。日本人の大半は安保法案に反対している。朝日新聞の世論調査によると、安倍内閣の支持率は39%に急落、不支持率は42%となった。国会内で怒号が飛び交い、国会の外では大規模な抗議活動が行われた。参院で法案を通すためには、首相は平和主義的な傾向のある連立パートナーの助けが必要となる。ただ、連立与党は衆院で3分の2超の議席を持つため、参院で否決されたとしても覆すことができる。
 なぜ日本の国民はこれほどまでに臆病なのだろうか。安倍首相は、法案が自衛隊にどんな活動を認めるのかについて詳しい説明を拒んだからだ。このため野党に「戦争法案」とのレッテルを貼られることになった。安倍首相の口が重いのは外交上必要な面もある。法制変更の差し迫った理由は、中国の台頭と最近の攻撃的な行動、それに米軍事費の予算削減だ。このため日本はフィリピンや韓国といった米国の同盟諸国とより緊密に協力する必要が出てきた。だが、それを詳しく説明するのは軽率だろう。首相が集団自衛権行使の例として挙げた唯一のシナリオは、ペルシャ湾の封鎖を突破するための米軍との共同作戦だった。
 安倍首相はまた、戦時中の日本の侵略行為を美化してきた。このため批判勢力が首相を古い考えのナショナリストとして描くことはたやすい。中国の新華社通信は近年、日本に対して集中砲火を浴びせる際、皮肉にも日本の平和主義者たちの言葉を借りるようになった。
 今週は感情的な動きが目立ったが、安全保障面でより積極的な役割を支持する超党派のコンセンサスが生まれつつある。安保関連法案に反対している民主党は2012年以前に政権を担っていた当時、安倍首相と同じ政策を部分的に推進した。民主党政権で首相を務めた菅直人、野田佳彦の両氏は、政策立案における自衛隊の役割の正常化、軍需産業の改革、「動的防衛力」、地域へのより幅広い関与といった構想を支持した。
 このことから、安保関連法案が成立して法制変更の見識が受け入れられれば、安倍首相の支持率が高まることがうかがえる。集団的自衛権を行使することは、第2次世界大戦以降、平和と安定を推進してきた日本の素晴らしい経歴を汚しはしない。むしろ、民主主義と法に基づいた国際秩序を守るために日本がより大きな責任を負うという、新たな章を開くことができるのだ。