日本政府が、100歳を迎えた国民に贈呈する盃を銀製から合金製に変更しようとしているという記事が、一面下のコラムに掲載された。
長寿国日本では、毎年30,000人もの国民が100歳を迎えていて、2050年には約680,000人もの国民が100歳以上になるのだそうだ。現在、100歳の誕生日を迎える国民には銀の盃が贈られているのだが、こうなると予算の関係で、合金製に変更する必要があるとのこと。
***** 以下本文 *****
この記事は、次のような書き出しで始まる。
「アイカワトモタロウさんは、第一次世界大戦が始まった月に生まれ、昨年100歳を迎えた。その後すぐに、安倍晋三首相から、記念行事でお酒を飲むための、銀で出来た浅くて小さい盃が、お祝いの手紙と共に送られてきた。」
「100歳の記念に杯を贈るのは、日本では50年以上続いている伝統だ。盃には祝福と長寿を意味する『寿』という文字が刻まれている。」
「しかし、国の財政状況の悪化を受けて、来年100歳を迎える人は、合金の盃をもらうことになるかもしれない。」
長い記事なので暫く要約する。
日本政府は100歳のお祝いの品を銀の盃から、トロフィーなどに使われている銅やニッケルや錫の合金製に変更するかもしれない。
政府が100歳の記念に銀の盃を送り始めたのは1963年だが、その時アイカワさんは49歳で、100歳以上の人は153人しかいなかった。いまや、毎年約30,000人もの人が100歳を迎えており、2050年には100歳以上の日本人は約680,000人に達すると予測される。日本の国債が膨んでいることもあり、このプログラムは見直しを迫られている。
大学教授や会計士など5名で構成される厚生労働省の諮問機関は、このプログラムを取り上げ、2名が完全廃止を、3名が抜本的な見直しを提案した。この提案を受けて、厚生労働省はこのプログラムの維持にかかる2億7千万円の予算を半減することを決定した。当初は、盃のサイズを小さくすることも検討されたが、盃の直径は3.5インチしかなく、厚生労働省は合金を使う案に傾いている。銀の盃のコストは約7,000円だが、合金だとその半分だ。
老人福祉団体などからは、銀の盃を維持すべきだという意見が出る一方、お年寄りからは、盃にかけるお金を福祉に回して欲しいという意見が出ている。アイカワさんは、101歳を迎えたが、盃は若い世代への負担となるので不要だと考えている。
そう言うアイカワさんも、既に十分な負担をしている。第二次世界大戦後シベリアに抑留され、帰国後は道路清掃でなんとか生計を立て、2度の癌の宣告も乗り越えてきた。シベリアで友人の死体を埋めたことに比べればその後の苦労はなんでもないと言う。東京で、孫娘とひ孫に囲まれて暮らしている。
日本人の平均寿命を引き上げているのはアイカワさんの様な人達だ。日本人女性の平均寿命は87歳で世界1位だし、男性も80.5歳で香港、アイスランドに続いて3位だ。今年4月に117歳で亡くなったオオカワミサコさんは世界最年長だっだし、現在の最年長の男性は112歳のコイデヤスタロウさんだ。日本人の長寿の秘訣は米、魚、野菜、豆などを中心とした食事と、運動だ。
この記事は次の様なコメントで締めくくられている。
「73歳のヒラノシゲルさんは、所属するゲートボールクラブでは若造だ。オフィスワーカーとして仕事をし、既に引退しているヒラノさんは、後27年生きたらもらえる盃は合金で良いと言う。『私は100歳を迎える人をお祝いすることには賛成ですが、一方で政府の予算が不足していることも理解できます。』」
「アイカワさんは次の様な提案をしている。『多分、政府は100歳の人達にお祝いの品を贈るのではなく、110歳の人達に贈ることを考えるべきでしょう。』」